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図書迷宮  作者: 再遊
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 ラズリで働く司書は少ない。


 迷宮と呼ばれるだけあって果てしなく広い。故にさまざまな管理だけでも仕事の量は多い。けれど、本好きにはたまらない場所でもあるため司書希望者は多い。ラズリは国の管理になっているから仕事がなくなることもなく安定しているのもあるのかもしれないが。その場所がたとえ迷宮であり、迷い込んで出られなくなるという危険が伴うと分かっていても、ラズリで働きたいという司書は多い。


 それでも、ラズリで働く司書は少ない。


 ラズリは迷宮だからか、ラズリが気に入った司書にしか本を触らせないためである。もし選んだ司書以外の司書が本を触ろうとするとその手の中から消えてしまう。これは利用者でもたまに同じことがおきるが、起きる頻度は落ちる。しかし、司書という立場上触れなければ仕事にもならず、ラズリで働く事を諦める他なくなる。不思議なもので、利用者であるなら触れたりするのだから困りものだ。


 結果、ラズリで働く司書は少ない。


 それなのに、迷宮だからなのか夜に探すことによって見つかる本というものもあり、ラズリは朝も昼も夜も夜中もずっと開いている。

 さすがに夜や夜中の本探しは朝や昼より危険が倍増するため許可証がなければ利用はできないが、それでも開いているのだ。

 開けるには司書が必要となる。


 以上をもって、ラズリの司書はほぼ年中無休で働いている。


「ラズリで司書が8人って、記録が残っている時からさかのぼっても史上最少らしいわよ」

「そうだね」

「徹夜ばかりで肌荒れがひどくなってきたのよ」

「そうだね」

「ねぇ、ラズリってどういう基準で司書を選んでいるのかしら」

「さぁ」

「もう少し、基準をゆるめてくれないかしら」

「そう…だね」

「ちょっとティーチ司書、返事がおざなりよ」

「すみません。ミッチェ司書」


 口では文句を言いながらも手元では本の扱いを十分に注意し、それでも素早く作業をこなしているのはクロウディア・ミッチェ司書。

 ツリ目の美人で怒っていると誤解されやすいが中身は本を愛してやまない司書である。

 そんなクロウディアの手元に関心しながらチウィオも自分の仕事をこなしていた。

 昨日から徹夜というクロウディアだが、それはチウィオとて同じこと。返事だっておざなりにもなる。二人とも昨夜本を探しにきた人が問題を起こしたためにたたき起こされたのだ。今日は朝から当番だというのに。


「僕だって徹夜だよ」

「知っているわ」

「疲れてるのは一緒だよ」

「知っているわ。でも、眠いのよ。寝たいのよ。休みたいの。でも必死で起きてるの。付き合いなさい」

「…理不尽」


 クロウディアがこういった理不尽な事を言うのは今に始まった事ではないので、チウィオはため息ひとつで終わらせる。

 その目にカウンターへ向かってくる団体が映った。

 どこから見ても貴族のお嬢様とその護衛、そしてラズリへ来るのは初めてというのはありありと分かる少年。


「利用客がこちらに向かってきているよ。初めての人っぽいし、対応すれば眠気もおさまるんじゃないかな」

「あら、本当ね。じゃあ、私が対応するわね」

「うん、お願い」


 対応に向かったクロウディアの背を見送り、チウィオも作業の続きをはじめた。

ありがとうございました。

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