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「カイラ？！　俺はお前のことを思って」

　ウェズリーの顔色がサッと変わった。ダルトンに向けていた怒りもなくなり、まさに顔色を失ったという感じだ。

　それにダルトンを気遣っているような発言をしていても、その根底にあるのは俺や俺を助けたダルトンへの敵意だった。それが面白いほどなくなっている。

「怪我人を安静にしておかないといけないのに。ほら、行くわよ」

　俺の心の叫び「エルフの女は獣耳じゃないと言ってくれ！」を知らないエルフたちは勝手に話を進めて、ダルトン以外のエルフたちは出て行った。

　残っているダルトンにエルフの女がカイラと呼ばれた女のように獣耳なのかどうか尋ねることにした。

「彼女は誰なんですか？」

「確かに僕はお前を助けたけど、だからと言って、なんでも許したわけじゃない。見殺しにできなかっただけだ」

　俺があの獣耳の女に興味を持ったと思ったダルトンの返事には棘があった。どうやら、ダルトンはあの獣耳の女に興味を持ってもらいたくないらしい。

　ダルトンはあの女のことが好きなんだろうか？

　あの女も俺の世話をしているダルトンの家に来るくらい親しい間柄だから、相手もダルトンに好意を持っているようだ。

　ウェズリーとの会話からして、ダルトンは彼を苦手としているみたいなので、助けに来たのだろう。

　まずは恩人の誤解をとかなければ。

　エルフの嫁が欲しいことは隠しておくとして、獣耳のことだけを聞くことにする。

「え？　いや、彼女に興味があるわけじゃくて、彼女の耳も獣耳でしたから」

「耳？　エルフの耳がそんなに珍しいのか？　僕がエルフだと言った時もそうだったが、一体どういうことだ？」

　俺の虚しい願いは命の恩人の一言で打ち砕かれた。

　エルフの耳が獣耳だなんて・・・そんな世界滅んでしまえ！