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やあ、スウェンだ。
今、俺はエルフの里にいる。
ジータたちと別れてたった1日で、森のどこにあるのかわからないエルフの里にいる俺。
エルフの里はエルフに招かれた人物しか見つけられないし、辿り着けない場所だ。エルフとの交易を求める商人たちにとって、エルフと直接交渉をできる機会自体、幸運に恵まれないとありつけない。
しかし、そこはイグザード商会マスターバイヤーであるこの俺。エルフの里に入るなど朝飯前。
流石、イグザード商会マスターバイヤーと呼ばれている男だと思ったろ?
サーセン。盛りました。
実際は行き倒れているところ(魔物に襲われて死にかかっていたわけで、空腹で倒れていたわけじゃない)を救けてもらい、治療の為にエルフの里に滞在させてもらっている。
どうやら俺が魔物に襲われた場所はエルフたちにとって目と鼻の先だったらしい。そんなところで見殺しにしたら寝覚めが悪いと、助けてくれたそうだ。
ヤッタネ。
商人にとって運も実力の内。
流石、俺。イグザード商会マスターバイヤー。
俺がいるエルフの家は摩訶不思議だ。床や壁が手首ほどもある太さの蔦でできている。蔦は伐採されたものではなく、生育されたままの状態なので、花や実が床や壁に付いていて看病をしてくれたエルフが収穫していた。
ドアはなく、間仕切りはカーテンだ。玄関のドアの代わりすらも撥水を魔法で加工したカーテンだ。
元々、エルフの里というのは結界が張られている為に天気は一定で、風も微風程度。暴風はないので、カーテンで充分なのだそうだ。
なんなんだよ、ここは?
これじゃ、もう、別世界じゃないかって感じだ。
エルフを嫁にしたい俺がエルフの里にいるのに、やけにテンションが低いのは何故かって?
・・・。
遠い目をしている俺をそっとしておいてくれないか?
俺は今、現実と向き合うことに努力を払わなければならない。
エルフの里は伝えられていた森に確かにあった。
あったんだが・・・
向こう側から間仕切りのカーテンが掻き分けられる。
「起きていて平気なのか、スウェン。いくら低級とはいえドラゴンとやりあったんだ、もう少し寝ていないと体がきついんじゃないか?」
そう言って、俺を気遣わしそうに見る若いエルフ(性別は男)の耳は長いが――獣耳だった・・・