個室
ギルドの個室にカナを誘導した後、肩に担いでいたイオを室内に投げ込む伊織。
その後、扉を閉めてソファーに座る。
「そろそろおきたらどうですか?鎌月さん」
「気づいてたか」
「殴ったのは私ですよ、そこまで疎くはありませんよ
それでその人はどちらさまですか?」
伊織は笑顔で答える。
イオは立ち上がりカナの頭を撫で回す。
「ちょっ…!何すんのよ!」
カナはあからさまにいやそうな顔をする。
「こいつはカナだ」
「…何でもいいですが、ギルド前で痴話喧嘩はやめてもらえますか」
「痴話喧嘩じゃないわよ!」
カナは全力で声を張って否定する。
「まぁ、何でもいいんだが…その喋り方やめてくんねぇか、正直言って気持ち悪いぞ」
「しかし客人の目の前で…」
「ここには俺たちしかいねぇんだから大丈夫だろ、伊織さん」
沈黙が訪れ数秒がたった後、伊織は口の端を上げいたずらな笑みを向ける。
「かっかっか!そりゃそうだ!あとよぉ、前からマキナって呼べつってんだろ!」
「そうだったな、マキナ」
イオとマキナは二人そろって大笑いする。
しかし、カナだけはその顔を大きく歪ませている。
「どうしたカナ?変な顔して」
「その人…まさか」
カナは震える指をマキナに向け、
「戦術士ランクS、《地獄の獄炎》伊織マキナ!?」
「あっ?そうだが」
大声を出し、心底驚く。だが当の本人はまったく気にしていない。
「なななんで、そそそんなすごい人が…」
カナは震える声を抑えることができずに質問をする。
カナが驚く理由とはしては、ランクSの戦術士は最高ランクであり、その存在もそれほど多くはない。それでいてイオのランクが本当にCだったとしても、ランクSのマキナと接点なんてできるはずがない。ましてやここまでフレンドリーに会話できること自体がおかしいのだ。
そんな理由で驚いていたのだが、そこでマキナが口を開く。
「アタシはここでギルド長やってんだよ
すげぇ面倒くさいが…
そんでぇ、イオよ…今日はどうしたんだ?」
「そうだそうだ、俺のランク証明書ねぇか?
こいつに俺がランクCと言っても信じてくれなくてよぉ」
「なんだそんなことかよ、もっと面白い話持って来いよ」
「しかたねぇだろ、後こいつの戦術士登録もしといて」
「ちょっ!あんた!」
イオとマキナの会話に割り込むカナ。
イオを部屋の隅に連れて行く。
「いったいなんだよ…」
「あんたどうゆうことよ!何であの《地獄の獄炎》と親しげに話してんのよ!?}
「知り合いだよ知り合い、そこまで恐がんなくても平気だぞ」
かったるそうに答えるイオ。
「そもそもね!《地獄の獄炎》に雑務頼むって…」
「ちょっといいかい?」
「はいぃぃぃぃぃ!」
マキナの呼び声に全力で答えるカナ。
「これ、イオのランク証明書な」
「おー、あんがとよ」
イオが受け取りに行きそれをカナに渡す。
「あとそいつの登録も終わったぞ」
「助かるわーそうだ夕飯よかったら家で食うか?今日のお礼に」
「マジか!?お前の、飯はうまいからいくわ」
「了解、そんじゃ今日は帰るよ」
「あとでなー」
「おー、ほら行くぞ」
イオはその後、固まったカナを引きずってギルドを後にする。