朝食
翌日彼は目を覚ます。
体を起こそうと手を手を床につけようとする、が
むにゅ
「…っん」
右手に柔らかい感触が伝うと同時に艶のある声が耳に聞こえた。
彼は声が聞こえた方向に顔を向ける。
「…なんだ?このありきたりな展開…」
しかし、少女カナはその時に起きる事がなかった。
彼は気にする素振りも、恥ずかしがることもなく起き上がった。
「とりあえず朝飯の準備するか…」
台所に向かう前に、洗面所で顔を洗い朝食の準備を進める。
「今日の朝食は…」
黙々と朝食を作り、皿を用意して盛りつける。
盛り付けた料理をテーブルに並べる。
次に向かうは、カナのところへ向かう。
ドアを開けカナを見てみるがまだ眠りについている。
「おい、朝飯できたぞ
とっととおきろ」
彼はカナの体をゆすり、起こそうと試みる。
「ほらおきろって」
「…~んっ、も…あさ?」
「そうだ、朝飯はできてるぞ、その前に顔洗ってこい
これタオルな」
「んー…」
カナはまだまどろみの中から抜けきってないようだ。
「洗面所は風呂場の前だからな」
「んー…」
カナは危なげな足取りではあったが洗面所へ向かい顔を洗う。
しかしまだまどろみの中から出でこない。
次にテーブルに向かい朝食の前に座る。
「そんじゃ食うか」
「「いだたきます」」
ズズッ…
カナは味噌汁を啜りやっとのこと目を覚ます。
「この味噌汁おいしいわね、だしは何を使ってるの?」
「俺は赤味噌を使ってんな…まぁ口にあって何よりだ」
「味噌汁なんか久しぶりに飲むわね」
しばらく沈黙のまま食事が続く。
「……って、誰よあんた!?」
「誰って…昨日あんたを助けたもんだよ
昨日は眠すぎて挨拶するの忘れたが」
「あんたがそのまんま寝たんでしょうが!っていうかあなた昨日と別人みたいじゃない!」
ズズッ
彼は味噌汁を啜り落ち着く。
「お・ち・つ・くんじゃないわよ!殴るわよ!」
「人のこと言えないだろ、まずは落ち着け、落ち着いたら自己紹介してやる」
「なんで上から目線なのよ!意味わかんないわよ!」
「ほら、どうどう」
「…もういいわよ、疲れたわよ…」
彼は味噌汁を置き、カナに目線を向ける。
「まず、俺の名前はイオ、鎌月イオ、戦術士をやってる」
「戦術士…昨日の殺気のことを考えるとランクはAかS?」
「いんや、ランクはCだ」
「はっ?何の冗談よ」
「イヤイヤ本当だって、昨日は寝不足で不機嫌だったんだよ」
「不機嫌になっただけであの殺気の量は異常よ、それにあの殺気はいくつかの修羅場をこなした者のそれよ」
「そこまで評価してくれるとはありがたいね、だが事実は変わらない」
今度はカナがイオを見据える。今までの表情が嘘かのような冷たい視線と表情のない顔。
「茶番もいい加減にしてもらえないと私も我慢はできないわよ」
「そんなに信じられないか?なら教えてやるよ」
イオは立ち上がり玄関に手をかける。
「ちょっと!どこ行くのよ!?」
「俺の正体が知りたいんだろ、
なら教えてやるからついて来い」
その後にイオはカナに微笑みかけるのであった。