3.
昨日はえらい目にあった。
母に揉みくちゃにされた。『も』が漢字なのは意図的だ。
母がテクニシャンで困る。何と言うか、元男として何かを失った。
何か軽く調教紛いの行為だったことは覚えているのだが、何をされたかはっきり覚えていない、ちょっと気持ち良かっ――――なんでもない。
そして自分の一人印象の『俺』は消え去り『私』になっており、ちょっと怖くなっている。
今日もいつもと変わらないように起きたが、寝癖を直すとか、色々と身嗜みを気を付けることを母さんに注意を食らった。
髪は、男の時より小顔になっているのか口元まであってウザいのではさみで切った。目の少し下ぐらい。
何年も視界に髪があると、割と少し暗く感じて邪魔なだけでどうにかやっていけたりする。ソースは私。
「ランジェリーショップ行くけど、どうにか不屈の精神で慣れてね」
「……昨日、なんかすごいことをさせられた気がして、なんだか恥ずかしさとかほとんどないんだけど。しいて言えば自分の裸体を見るのに少し抵抗があるだけで」
現在、親父殿運転の車で出かけている。
地元から少し離れたデパートだ。
「俺の侵入不可能の聖域に行く訳か……。昔は母さんを脱がせる服を選んだりしてたからな~」
「芳次さん、年頃の娘の前でそんなこと言わないでください!」
「親父殿のシナリオ担当したR-18のゲームとか、コミケ行って同人を買うために自分の子を並ばせる母さんがいるので今更って話なんだけど」
まぁ、ムフフなゲームはそこそこしてきた。
健全なD指定のギャルゲーとかあったりするが、とりあえず、そう言う下ネタ入れられても平気だ。
これって、年頃の女的にどうなんだろう。
「だ、だってその時はこんなナイスなタイミングで女の子に戻るとママ思ってなかったんだもの!」
「まぁ、手遅れだな。俺的にはナイスな年代の息子が居たからこそその意見を聴けたのが嬉しかったけどな」
ちなみに、初めてR-18の作品やったのが中二。
つまり、性について学びたくなる年頃である。ちょっとパソコンで履歴を消さないと気まずいレベルのモノを検索したくなる年頃だったんだ。
それからノッペリと攻略を開始。今日までで結構な作品数を熟したと思う。
受験生に一体何をさせているんだうちの親!
って話になるが、普通に友達と遊ぶとかなかったから勉強もちゃんとしてたし。問題はなかった。
「そう言えば、新作予定はどんな感じ?」
「学園モノでモテモテのキャラではなく、いじられキャラに視点をあてた作品だ」
「おー。フラゲが楽しみだ」
発売日前にゲームをプレイし始めることができると言う身内ならではの特典。
純粋なマニアに言わせたらそれは愚行なのだろうが、それより物語りが気になったりするので遠慮なくプレイするのが私流。
「はっはは、ナイスだ彗。まるでぶれないな」
「彗。pcノベルゲーム禁止!彗は私が純情な子に育てるの!」
「もう手遅れだよ母さん。それに私の娯楽を奪わないで。それだけは女に戻った事後悔するよ!」
「ぬぬぬ、分かった……耳年魔で初心なキャラも美味しいから良しかな」
……畜生!
なんで小声の部分が聞こえないんだ!
私は王道鈍感系主人公じゃないのに!
「お。ヒロイン一人、彗をモデルにしよう。性格面のみ、な」
「いっその事声優を彗が!」
「ナイスアイデア、彗よろしく!」
「だが断る!」
何と言うとんでもないことを言い出すんだうちの両親は!
いつものことだけどまるで慣れないよ!
「「残念」」
何だよ、なんか悪いことしちゃったみたいじゃんか。
そう思いながらも目的地へと進んでいった。
「これより、これかしら?」
「良く分かんない」
下着は母さんが独断と偏見で決たのですぐに終わった。
まあ、母曰く「もさい」白いシンプルなものも買ってもらった。
現在は服を選んでいる最中だ。
本当は親父殿も合流するはずだったにだが、母から何かを聞くと別方面へ移動していった。
おそらく、コスプレ系の服のはずだ。
服関係も母がすぐに選んでいた。
テンプレのごとく着替えさせられたわけであるが、疲れた。
はぁ、ラノベのTS系の人が苦労する意味がよくわかりました。
取りあえずジャージ、これは絶対にはずせない。
途中でATM見つけたのでお金を下してジャージを買った。
ふっ、普段有り余る小遣いは大抵、たまに見つけるラノベ位にしか使わないからそれなりにたまっているのだよ。……友達と出かけるとか基本的に今までなかったので。
それと当然靴のサイズも変わってくるので靴を……って、このサイズ確か中2の時と同じ足のサイズなんだけど。
そして、髪を切りに行こうと言われたが拒否。
ある程度、髪を縛るだけで視界はどうにかなるし、今日も母さんに髪を弄られたので割と普通におしゃれである。
オシャレがいまいち分からないが。
現在、さっき買った何か森ガールみたいな服装でいる。靴はスニーカーだけど。
……人生初スカート。なんか変な感じがします。
防御力が絶対80ぐらい下がってるよ。
「ねーねー、そこの中の良いね~ちゃんたち~。ちょっと俺らとお茶しな~い」
そして、デパートの休憩所付近でナンパされる。
……ナンパ!?
「楽しいぜぇ、退屈させないからさ~」
わー、実際こういう人いるんだ……もうちょっと頭使わないと落ちないと思いますよ、女性は。
ギャルゲーのヒロインもこんな短時間に攻略されるようなキャラじゃないんだからさ。
「母さん、親父殿呼ぶよ」
ナンパ野郎が『母親!?』とか『人妻……そそるな』とか呟いて混乱しているうちに連絡を入れる。
携帯で親父殿に電話を入れる。
「もしもし、一階のコーヒーチェーン店まで至急来て。ナンパにされてるからたすk「良し、着いたぞ」……早いね」
連絡を入れると、すぐにひょこっと現れる40代の男。
少し厳ついが、なんだかホストな感じもする親父殿である。
「んで、俺の奥さんと娘ナンパしようなんて考えているのはテメェらか?」
尋常じゃない勢いでメンチを切る親父殿。
「ひっ」
「え、ええええとですね………」
混乱するナンパ二人組。
「今なら通報しねえからさっさと消え去りな」
「「はいぃぃぃぃぃぃぃ!」」
さっきの人妻発言どこ行った!?
ってか、親父殿コワっ!
「んじゃ、昼食取って帰ろうか」
そう言って私と母さんの手を取る。
何か行動が女慣れしている。
大人だから経験豊富だったりするのだろう。
某ファミリーレストランで昼食取っていると、
「貴方、例の品は?」
「バッチリだ」
「どうせ、ナースとかメイドとかそこら辺だろ」
「「……娘に行動読まれてる!?」」
鎌をかけて見たら見事に引っかかった。
「何か王道中の王道ぽいなって」
「なん……だと…!?」
いや、TS系作品で服装=メイド服とかだろう。
後、ゴスロリとか。
まず、私にはそこそこ身長あるからゴスロリは無いだろうな。
「ダメもとで聞いてみるけど、彗、来てくれるか?」
「それ相応の対価があれば」
「たとえば?」
「温泉に行きたい」
温泉いいじゃないか。湯船にポカンとしずみ、ボーとするの。
上がったら冷えた炭酸を飲むのが美味しいんだ。
中学校の修学旅行、自分の影の薄さ利用して夜中にゆっくり露天風呂入ったのは最高だった。
秋で紅葉が綺麗だったし、もう死んでもいいと思ったほどだ。
「……そんなのでいいのか?ハイスペックのpcとか、タブレットとかじゃなくていいのか?」
「パソコンはこの前外部メモリそこそこ大きいの買ったし、タブレットもお正月にくれたし、壊れるまで別に必要ない。今ので十分」
そして出てくるものは何故、家電?
「それじゃ、今の仕事ひと段落終わったら3人で温泉行くか」
「そうしよう!」
「そうしましょうか」
よし、母も賛成が出た。
ちょっとテンションあがってきた。
今日は親父殿と母さんの好きなものを着くろう。
嬉しさに思わず口元が緩む。
「……良かったな、表情が出るようになって」
「あら、本当。やっぱ可愛いわね、私たちの娘」
そう言って両親は笑顔で私の頭をなでる。
……何か安心するな。
そう思いながらも、時間は進んでいった。