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地面が、揺れた。今まで生きてきた中で最も強く、下から突き上げられて足が宙に浮くような感覚。

建物が揺れる。目の前で電柱が斜めに傾ぐ。近くの店からは店員が叫びながら転がり出て来る。

ちょうど外に出ていた私が見たのは、そんな情景だっった。


時間にしては数分の、けれど命が何年も縮まるような恐怖。それが終わってから真っ先にしたのは、家族の安否確認で。幸い家は無事だった、そこにいた母にも怪我はなく、私にも怪我はなく。

正直な話、遠くに出ていた父と連絡が取れない以外にはさほど心配していなかった。


あの、警報を、見るまでは。


太平洋側一面に出された津波警報。そして親族たちのいる故郷が震源地に程近く、同時に海のすぐ傍だという事実。

それでも、大丈夫だとどこかまだ思っていた。

海に近い彼らならば、警報と同時に避難していると。そう思っていたのは、思えていたのは。


良く知る故郷の良く知る場所が、屋根まで波にのまれる光景をテレビで見るまでの間だった。


それは静かに、けれどまるで張りぼてかのようにあっさりと建物を壊していく水の暴挙。

その中に、貴方の家があった。私達の見つめる中、貴方の家は、屋根まで水に覆われて。


そうして、あっさりと。ただのがれきとなって、カメラの前を流れていった。



あの時、見る事は出来なかったけれど、その後一緒に家にいてたまたま助かったおばさんが言っていた。あの家に貴方がいたと。


祝お兄さん。貴方が、あの津波にのまれたのだと。




私がその話を知ったのは、あの大震災から10日も後の事だった。




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