第一話Bー4「異世界から勇者が来て……それを殺そうとする異世界人の物語」
(ライピッツ会場)
黄金騎士は一言、二言の優勝の挨拶をした後、すぐ賞金の詰まった袋を受け取り、颯爽とどこかへ走り去ってしまった。
そのまま町外れの廃家の敷地にたどり着くと、黄金騎士は乗っている金獣からよろけてズリ落ちる。
背中から地面に叩きつけられた彼は、酷く疲れた様子でそのまま寝ていた。
「ちくしょ……最近調子悪いな、俺。形態を保つのが難しくなってきてやがる」
騎士が悪態をつくと、金のプロングホーンに変化が起きた。ボロボロと色が剥がれて、鈍い鉄色になったのだ。その足元には多くの砂や石が散乱している。
色だけではない。体も崩れていき、細かい形の金属と鉄板の山を作っていく。
「はは、それにしてもアイツら驚いてたなぁ。誰も俺に追いつけるわけねーのに」
彼が体を起こすと、『鎧だった』鉄板や砂や石ころが外れてゆく。最後に本物の兜を脱ぎ、素顔を曝した。
墓地での会話を思い出す。探し物は見つからなかったが、まさか怨敵が近くに居るとは。
案外、奴を倒すことが出来れば、彼女の悩みは消えるかもしれない。
「いや……駄目だ。アイツが許されたと感じられるのは、あの人だけだ」
だが、もしあの悪魔が彼女を狙っているのだとしたら、迎え撃つ所存である。
自分はその為に強くなったのだから。その為の黄金なのだから。
「黄金騎士は……俺が必ず倒す! 絶対にあの悪魔だけは! 父さんと、母さんの作品で!」
金髪の少年は鉄板を賞金とは別の袋に入れて、決意を胸に廃家を出た。
彼の名はエンディック。『今の』人々が黄金騎士と呼ぶ、勇者の打倒を目指す者である。
(勇者ギデオーズ=ゴールの手記より)
魔力世界『シュディアー』とは、環境管理装置『龍』によって支配された理想郷である。
我々の世界に『機力』が有るように、シュディアーには魔力という不思議なエネルギーが存在する。
御伽話に出てくるような魔法の力で、代わりに機械技術は進歩していない。
ある日、私の部隊が降り立った国『スレイプーン』の王が依頼をしてきた。
なんと龍から国民を守って欲しいというのだ。あの龍は世界の人口が一定数を超えると、五年一度に人減らしの名目で人々を襲っているという。なんでも、理想郷を保つ為とか。
今までの王はこれを黙認してきたらしいのだが、現王は違った。国民が殺されるのを許せないという。だがシュディアーの人間は、龍を傷付けることが出来ない。
この問題には『勇者鎧』を用いることにした。
王家の地下に封印された七つの秘宝を研究し、我々の技術で修復かつ改良した鎧。魔力と機力の両方の力を運用可能な最強兵器だ。
我々の機力世界『マシニクル』とシュディアーの友好の為、何より人々の命を守る為、龍に立ち向かい、これを撃破した。
しかしその後、勇者鎧の悪魔と契約した者達だけが、元の世界に帰れなくなった。国王は原因を突き止めるまで、ここに居ていいと言ってくれた。
そして全員毒を盛られて死んでしまった。
次回予告!!
のどかな幻想に守られた村の平和を突き崩す!鋼鉄の足音!
あれは何だ?
迷彩色に彩られた異世界の銃殺者達は?
弱き者の声を聞き届けるのは、緑の絶対聖者か、黄金の手品士か?