第四幸Kー1 「強欲村の過去」
黄金騎士と緑の勇者の策は、黄金の悪魔を追い詰めるも、明かされた顔と秘められし切り札によって逆転され、エンディックは失意し、緑昇は深傷を負った。
さして意外な正体でもなく、誰もが予想していた人形の顔。
仇の悪魔の操り人形に驚くは、少年のみである。
(ヴェルト村の過去・ガンティア山)
「こちらベネト!敵機を確認! そちらからは見えるか、ギデオーズ?」
「は! マモン=グリーズの一時方向より、無人機を確認しました少佐」
断崖絶壁の谷の間、その空中に黄金の騎士甲冑が浮いている。
梟の意匠に丸みを帯びたフォルム、反重力装置の翼を生やした、兜に王冠を頂く全身鎧の人物。
この強欲の勇者鎧の装着者は、ベネト=ハウピースという。
「アイツがハーピィって呼ばれてる無人機か。見たことのない機体だが……。ここから街道へ飛んでいって、もう何人も殺ってるらしいからなぁ」
前方の空より高速で突っ込んでくる、人間より大きな物体。
ベネトは敵の突進を右に飛び避けつつ、目元のバイザー内のカメラで撮影した。
その鋼の怪鳥は突進後、機首を上げて上昇していく。
「照合……該当無しか。見た目は小型無人戦闘機といった具合だな」
このハーピィという魔物は、平べったい胴体に鳥の頭、可変翼、下部の可動腕にはクローが取り付けられている。人の乗っていない戦闘機だった。
装甲色は雲模様のグレーの迷彩となっており、撮った画像をズームすると、頭部に機銃が確認出来る。
「このシュディアーという世界も解らんな。どこからこんな機力世界のような、機械生命体が生まれてくるんだ? なぜ人間に敵意を向ける?」
ハーピィは上昇から旋回し、再びこちらに突進。
今度は下から生えた腕爪も構え、下降による加速で、更なる速度で接近して来る。
「まあ、いいか。どんな化物だろうと、俺達があの村に取り入る、いい口実にさせて貰うぜ。トュルゥウ……フォオッチュゥン!」
ベネトが構えたのは、短めの両刃槍『真実の富』だ。その動きに呼応して、四つの金球が周囲を浮遊する。
金の勇者は翼に機力を込め、迫る魔物に向かって高速上昇かつ直進。
「アイアンヴェノムビィイムッ!」
空中でぶつかるかに見えた鳥達だが、ベネトは直前に向きを変えて上昇。
すれ違う瞬間、四つの金球から眩い光線が照射され、ベネトの下を通過する怪鳥に降り注ぐ。
マモン=グリーズはそのまま上昇して行き、全身を金に犯されたハーピィは、谷底へと墜落していった。
(金属毒光線こそ、我が鎧の主武装。相手の防御力に関わらず、猛毒の光で敵を着色することで支配。支配下に置いた上で、毒素で犯し殺す、万能の矛だ!
反射魔言で跳ね返されちまうのが欠点だが、遠隔操作された金球の早撃ちは防御詠唱より早く、跳ね返せない方向へ自在に回りこむ。
何より例え跳ね返されようと、攻撃より更に強い防御力場がそれを防ぐ……。
マモン=グリーズは本当、最高の兵器だぜ!)
「少佐、敵増援であります。無人戦闘機を三機確認」
兜の通信機から聞こえた戦友の声に従い、ベネトは索敵する。
下後方より上昇してくるハーピィが一機、右上方から降下してくる二機の機力反応が知れた。
「なら、上からだなぁ!」
黄金の勇者は右上の敵へ上昇機動。
槍を構えて、切断消滅の技術を呼び出す。
「魔言『SLASH』」
真実の富の上側の刃に、紫の光の線が付与された。
ハーピィは彼我の距離がゼロになる前に、頭部機銃砲を連射。
ベネトは弾丸を防御力場で弾きつつ、半回転のロールして下降する。
「おらよ」
ハーピィと勇者が互いの腹を向けながら交錯するとき、槍が下から上へ振り上げられた。
刃に添えられた紫の光は、魔物の頭からぶつかり、何の抵抗も受けずに中の機械を消し切っていき、尻から宙空へ出る。
真っ二つになったハーピィを捨て置き、ベネトは回転して姿勢を平行に戻し、もう目の前まで来たもう一機のハーピィの上へ飛び上がった。
「無機物は空じゃ重過ぎる……堕ちな!」
振り下ろされた真実の富は、今度はハーピィの尻から背中、頭部を抜け、異形の鳥を切り落とす。
「おっと、背中を取られちまったか」
そこへ下から上昇して来ていた、四機目のハーピィがインレンジ内に。ベネトは魔物に対し、背を向けて上昇中である。
鋼鉄の鳥は機銃を撃って追いすがりながら、下部可動腕クローで金の翼を掻き千切ろうとする……が。
「俺の得物にゃ砲身がねーんだわ……。つまり、全方向に撃てるってことだよなぁ?」
勇者を護衛する金球は機銃掃射を防ぎながら、金属毒光線を発射。
至近距離から光を浴び続けたハーピィは、その身を金に染め上げられ、やがて上昇を止め、地の底へ落ちていってしまった。
「旦那様は相変わらず、戦いに遊びが多いですなぁ」
「おうよ、マモン。俺は勇者様だぜ? 英雄がこんなダサい雑魚共にマジになったら糞ダサいだろ? 常時舐めプで完勝してこそ、勇者って看板貼れるんだよぉ」
ベネトは頭の王冠から聞こえた音声に返ずる。
王冠の金十字の装飾に封じられた、強欲の悪魔マモン。このAIが彼の相棒だ。
「お疲れ様ですハウピース少佐」
兜内の通信機から聞こえた声は、崖上の林に隠れている部下の物だ。
彼はギデオーズ=ゴールと言って、プライベートでも旧知の仲で、ベネトの戦友だった。
ギデオーズは勇者ではなく、支援無人機の操作や整備に精通した兵士。
異世界の機力技術に強い関心があり、王都の錬金術士団とも懇意にしていた。錬金術士達と短い交流の中で、すぐさま初歩的な術を習得したギデオーズは、一種の天才と言える。
「これであのヴェルト村は、我々を受け入れてくれる筈です。もし王都の追手が来たときの為の、潜伏池になるでしょう。
あの無人機の暴走騒ぎで、時間は稼げていると思われますが」
「それに機力世界の政府が、この件を黙ってるわけがねー。シュディアー人がどんな言い訳するか知らねーが、きっと救援が来る……国家を信じようぜギデオーズ」
だが上の筋書きは、ベネト=ハウピースの想像とは異なっていた。
マシニクル政府が優先していたのは、勇者鎧という超兵器の試験データ。
権力者達は異世界での試験データを元に、いずれ来るシュディアー侵略と自分達の世界の戦争に役立つ、新兵器を欲していた。
勇者鎧という超兵器の為ならば、非人道な実験も、替えを探せば良い捨て駒など惜しくは無いと。
この先の未来のマシニクルでは、先に異世界から帰った部隊の情報により、勇者鎧のレプリカ兵器が量産体制に入るまで完成するのだが、シュディアーで見捨てられた勇者達は知るよしもない。
しかしそれを用いた侵略作戦は、緑昇ら次世代の勇者の結界門破壊によって、一時中断する形となるのだが。
スマナイ…間を空けてしまって本当にスマナイ。
新たに生まれたパソの徹底的反抗に苦しめられてました( ;´Д`)でも大丈夫です多分。
ここから前後は過去編となります。シナリーのお父さんはマトモな頃はイケイケで、技名とか叫んじゃう系の人でしたね。
このハーピィー戦は本来無かったもので、マモングリーズの万全状態での戦闘をちゃんと書きたく、入れることにしました。
この先、マモングリーズが魔物と戦うシーンほぼ皆無ですしね…。敵ライダーは辛いよ。
そして次回、6話へのショッキングな伏線と設定が設置されますので、お楽しみに。




