表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/67

第三幸I-2「狭き道の戦い」

孤児院の子供の1人、キリーが居なくなった。

エンディックとシナリーは夜の街へ、魔言による捜索を開始する。

そこで出会した腐乱夢ナイツパーティーと戦いになり、エンディックは一度共闘したニアダと戦うことに…。


「く……! やるじゃねぇかおっぱいちゃんよぉ! 俺様の動きについてくるとはなぁ!」

そう言うジョイチの顔面に魔言杖が突き込まれ、シナリーは続く動きで振り上げ、右腕に振り下ろす。

「そうですよー。貴方を防具の上から叩き殺せる程度には〜」

 シナリーは女といっても、幼い頃から勇者としての調整を受けた人間である。

 更にライデッカーから棒術の手解きを受けており、今までの喧嘩で、並の相手に引けを取らなかった。

「おや、キリーは?」

 ジョイチが腕を抑えて距離を離した隙に後ろを見ると、ニアダとエンディックが対峙する向こうに、誰も居ない。

 キリーと側にいた騎士の一人が、消えていた。

 そしてエンディックがニアダに殴り倒され、敗北したのを確認する。

(っ……! これはニアダさんがエンディックんに構ってる間に、二人とも倒してしまう必要が有りますね)

「余所見でガラ空きだぁー!」

 シナリーの予想通り、退かずに隙だと思い、乗ってくれた。

「魔言……!」

「この距離で間に合うかよー!」

 迫る敵に向けて杖を構え、先端より少し離れて魔力円を発生させる。

 光の円は、ちょうどジョイチの顔を覆い尽くすように発現し、一瞬視界を奪う。

「お……な?」

 動揺で止まった鉄棒を持った右手首に左振り払い、そのまま強く振り上げて、脳天に一撃を落とす。

「……ふ!」

 これで終わりではない。

 この攻撃で『二人』倒すつもりなのだから。

「魔言『THUNDER』!」

 すぐに後ろに反転し、ニアダに杖を向ける。

 幼馴染は倒れているため、射線に入らない。それに雷属性の攻撃なら殺傷せず、少量の魔力で人間を無力化出来る。

「魔言『MIRROR』」

 シナリーの杖、ファイスライアの魔力円から雷撃が放たれると同時、ニアダの前に魔力の鏡が現出する。

 鏡に跳ね返された雷光は、使用者へと戻り、シナリーは感電した。

「そ……んな!」

 魔言『MIRROR』は非物理を跳ね返す技術。

 それは光源や魔力攻撃を防ぎ、魔言使い同士の戦いでは、主な防御手段として多用される。

「甘いのぉ小娘。魔言使い相手に、戦士だけで勝負するわけないじゃろ?」

 鏡はすぐに霧散し、ニアダの後ろの物陰から、ローブを着た年老いた女が顔を覗かせた。

 その老婆、リンドはくぐもった声で言う。

「自己から遠くに作用させる攻撃より、身の回りに力を及ぼす防御の魔言の方が、発動は早い傾向が有る。よって魔言使い同士の戦いの際、魔言を跳ね返す『MIRROR』を警戒して、魔言以外の攻撃手段をとるのが常道なんじゃよ。

 じゃから……隠れて相手の魔言を『跳ね返し待ち』する方が、楽に勝てるんじゃな〜」

 シナリーは敵魔言使いの存在を知らず、迂闊に魔言を使用してしまったのである。

 倒れ伏すシナリーに近寄ったニアダは、抱きかかえてリンドの元まで連れて行った。

「悪いねぇシナリーちゃん。でも勇者は現実に居たんだよ。フィクションじゃなかったんだよ。なら……文句の1つも言いたくなるよね?


(ディーナ・地下の拷問室)


「私が連れてくるのはここまでのようだ。我々の仲間になりたければ、この女を連れて来るんだな」

 無人の酒場を通り、地下のこの部屋までの道のりで、意外にも何の妨害もなかった。

 ここまで護衛してくれたコーダンに後押しされ少年は、中で椅子に縛り付けられている少女の元まで進んだ。

 血の異臭が漂う空間を歩み、孤独な部屋の主の枷を解いていく。

「やっと会えたねリモネ……『お姉ちゃん』」

 対するリモネは目の前の男の子のことを、信じられないと目を見開く。

「嘘……? キリー……なの? そう、ここはライデッカー神父が居た、アリギエだものね」

「うん……。お父さんがおかしくなって、貧乏になって、僕は神父様に預けられたけど、お姉ちゃんはお父さんの側に残り続けた……。それからずっと会いたくて……お姉ちゃんがこんなことになるなんて僕」

 キリーは涙を浮かべながら、姉を支えて立ち上がらせた。

 そしてここに来た目的を告げる。

「僕、全部聞いたんだ。だから一緒に勇者を殺そう? お父さんをおかしくした、勇者って夢を、『良い奴ら』をやっつけようよ?」

 少年の名は、キリー=ブレイブン。

 彼もまた、この世の『善』を憎む者である。


(ティーナ近くの裏通り)


「俺に用か?」

 移動しようとする、ニアダとリンドの後ろに降り立ったのは、緑の勇者だ。

 異形の全身鎧の緑昇は、右腕のグロゴイルを構え、抗戦を促す。

「貴様の口上は上で聞いていた。肉親を失った憤りで、そのまま善良な騎士をやっていれば良かったのだ……。今の行動は、八つ当たりに過ぎない」

 振り向いたニアダはシナリーを壁際に下ろし、さぞおかしいと笑う。

「はははは! やっと会えた! 会えたよ母さん! 悪いことをすれば、絶対に寄って来ると思ったよぉ!」

 腐乱夢に取り憑かれた騎士は、大剣で振り上げて走り出した。


 数多の悪を切り刻み、その身に膨大な咎を抱える大食の勇者こと、緑昇。


 今夜、彼は敗北する。


無事に一週間更新を完了しました!

ちょっと少なめですが、このぐらいが丁度いいんですかね。


騎士を物理で圧倒したシナリーですが、魔言使い同士の戦闘経験は皆無だったため、基本的なメタられ方されましたね。


あとキリーが弟だった伏線は、あえてカットしました。

もしリモネの台詞に弟を匂わせるのが有ると、意味深なキリーと結びついてしまうからです。

この2人の話は次回以降で語られるので、ご安心を。



次回は緑昇vsニアダです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ