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露と答へて  作者: 夜露
20/23

蝦夷よりきたりて

 先々月の末のことである。私は長女に連れられて、チームナックスの高知公演を観に行った。

 オフィスCUEのナックスと言えば、さすがに最近では「知らない」という人も少なくなってきたかも知れない。何しろ、マスコミ関係者から「今、もっともチケットが取りにくい」と言われるほど人気のある舞台だし、看板タレントの大泉洋は、ドラマやCM等での活躍めざましく、きっと誰もが一度は目にしたことがあるだろう。

 しかし、大泉洋以外のメンバーとなると、若干、影がうすい感がある。世間のみんなが、誰がリーダーかを知っているとは思えないし、メンバーの顔と名前にいたってはよくわからない、なんて人も、きっと少なからずいるはずだ。

 なので、知らない方のためにちょっとだけ説明すると、オフィスCUE(芸能プロダクションです。社長は「水曜どうでしょう」のミスターこと鈴井貴之氏)所属のタレントで、森崎博之率いる(一応、彼がリーダー)北海道出身者で結成された演劇集団(?)がチームナックスなのである。

 メンバーは、森崎の他に大泉洋、安田顕、戸次重幸、音尾琢真と、計五人で、大泉洋が出演する「水曜どうでしょう」がブレイクした後は、ナックス自体の知名度も徐々にあがり、最近では、NHKの大河や朝ドラなど、数々のドラマ、映画に各々が出演するようになった(もっと知りたい方は、ウィキペディアで調べてください)。


 で……うちの長女の話になるのだが。


 実は長女、そのナックスの熱狂的ファンなのである。

 そして、その中でも「水曜どうでしょう」の大泉洋が高校生のころから、なぜか大好きで、大泉洋に恋心にも似た憧れを抱いている。「水曜どうでしょう」はもちろんのこと、大泉洋の出演する番組やCMはすべて録画し、映画は映画館で見て、さらにDVDまで買う。その徹底したファンぶりは、ジャニーズのアイドルに目を輝かせる少女を彷彿とさせるのだが、いかんせん、相手はアラフォーのおっさんなのだ。「どこがいいの?」と、思わず訊きたくなるのは親ならば当然だろう。

 いや、確かに、「水曜どうでしょう」は面白いとは思う。原付東日本縦断シリーズのウイリーは何度見ても笑えるし、アメリカ横断や対決列島など、黙っていれば男前のミスターのオトボケぶりと藤村Dの無茶ぶり(笑い声)に、私もお腹を抱えて笑ってしまった。

 しかし、面白いということと、大泉洋が魅力的というのは、また別の話だ。大泉洋個人となると、そんなに格好よくはないというか、今時の若い子が憧れるような男前なら他にいっぱいいるじゃん! と、私には思えてならない。なのに長女には、大泉洋が格好よく魅力的に見えるらしく、周りの友人たちから、「どこがいいの?」とか「あー、やっぱB専や」などと、なかば呆れ気味に言われても、怯む様子はまるでない。公演が終わってからは、うっとりした目で「洋ちゃん、かっこいいー」を連発しているのだった。

 やれやれ。

 そんなだから、過去にもナックスの舞台を福岡や大阪まで観に行っており、今回の公演「WARRIOR!」も、高知公演だけでなく、広島公演へも行った(つまり、同じ舞台を二回観た)。チケットは抽選で、高知が二枚と広島が一枚当たったのだから、ラッキーだったと言えなくもない。おかげで長女は「高知と広島の両方が当たった私って、すごくない? やっぱ、ナックスとは運命で結ばれてるんや」などとのたまい、すっかり勘違いしているのである。

 いったい、どんな運命じゃ、大泉洋が結婚したときには、マジでショック受けたくせに、と突っ込みたくなるのだが、いずれ、希薄な絆であることに、嫌でも気付くことだろう。ほっとくことにしよう。


 さて。

 そんなわけで、今回の公演は、長女が「一緒に行かない?」と言いだした。実はこれまで、演劇の公演というものを私は観に行ったことがなかった。舞台なぞというものは、よほど前のほうの席でなければ役者の顔がよく見えないし、どうしても見たいと思うほどの舞台はテレビで放送されたりDVD化されたりするから、高いお金を払って劇場に観に行くのが何だかもったいないような気がして、行ったことがなかたのだ。おまけに高知では上演される作品も少ない。新幹線と列車を乗り継ぎ、はるばる劇場にまで足を運ぶような時間とお金もない。だから、こんな機会を与えてくれた長女には、お礼を言わなければならないだろう。

 舞台は、予想以上に、とても面白かった。

 戸次演じる信長が圧倒的な権力をふるう戦乱の世。家康が殺害され、安田演じる平民の男が家康になりすまし、音尾演じる秀吉の策略に翻弄される面々……と、奇想天外なストーリーなのだが、それぞれのキャラにぴったりの配役と、随所にナックスらしいコミカルさがちりばめられていて、しかし、時に真面目に、気を抜いていると、ほろりと涙を誘うような場面もある。

 脚本を書いたのは、リーダー森崎。カーテンコールでは、それぞれの挨拶とトークに爆笑し(ガンダム大好き戸次の「ジークジオン!」コールには笑った)、アンコールの拍手に三度もこたえてくれた。

 まさに、評判どおり、大満足の三時間で、「また、見たいな」と思わせる舞台で、「いやー、ナックスって、いいじゃない」、と、今回ばかりは素直に認める私なのである。

 ただし、「洋ちゃん、格好いいろー?」という長女の意見には、やっぱり同意できないが。

 

 ナックスの舞台「WARRIOR!」は、WOWOWで放送されることが決定しました。

 興味のある方は、ぜひ御覧ください。

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