しれば楽しき「ラノベ」かな
先の章で読書の話について少しふれたのだが、私の読書傾向は、はっきり言って、一貫性がない。
たとえるなら、雑食とでも言うべきだろうか。純文学と呼ばれる本も読むし、本格ミステリーやエンターテイメントまで、てあたりしだいに読む。小説はかくあるべき! なんていうこだわりもないものだから、抱腹絶倒コメディーから、ヘヴィーなノワールまで、面白かったと思った作品にもまるで一貫性がないのだ。
ただ、文芸に関するウンチクだとか、知識だとか教養といったものもない(おまけに、読むのが遅い)。だから、作品の批評なんてのは、とうていできそうにないのだけれど……。
ところで、個人的嗜好の話に他ならないのだが、私は、有川浩の小説が大好きである。
「えぇーっ、いい年したオバサンのくせに有川浩なんか読むのぉー?」
と言いたい人は言えばいい。笑いたければ笑ってくれ。
でも、でもでも! 私のようなオバサンだって、有川作品を好きになる権利は、ある……と思うのだ。
そう。有川作品は、いわゆる「ラノベ」というカテゴリーに属している(らしい)。そして私は過去に「ラノベ」と呼ばれる作品は、有川作品以外では「狼と香辛料」シリーズの最初の一冊(知り合いの高校生から、面白いと薦められた)くらいしか読んだことがない(たぶん)。
とまあ、こんな、「ラノベ」の入り口で有川作品にはまってしまった私なのだが、白状してしまうと、以前はろくに読んだこともないくせに、「ラノベ」というジャンルを軽視していた(すみません)。きっと、お子ちゃまな設定で、お子ちゃまな文章で、よくある展開で、よくある結末なんだろうなーと、勝手に想像していたのである(重ねてすみません)。
しかし、その考えを改めさせられたのは、あの「ハリーポッター」の映画を見てからだった。
初めて「ハリーポッター」なるものを私に教えたのは、長女だった。あれは、長女が小学校の三年生の時だったか。生協のカタログに原作本が載っていたのをめざとく見つけ、「買ってくれ」と、長女が私にせがんだのである。それまで、本を買って欲しいなどと長女からせがまれたことはない。だから、「ハリーポッター? なんじゃそりゃ?」と、問い返しつつも、「読書好きだなぁ……」などと親馬鹿な解釈をして、私は「賢者の石」を買い与えたのである。
おかげで、そのあと、「秘密の部屋」「アズガバンの囚人」と立て続けに買わされた。もちろん私は「子供が読む本」児童文学=子供だまし、というような認識で、購入した本をその時は読まなかったけれど。
さてさて。それから後は、皆様ご承知のとおり、「ハリーポッター」は映画化され、おまけにシリーズ化までされてしまったのである。
しかし、残念なことに、「賢者の石」が上映されていた当時、私はとても仕事が忙しく、映画を観たいと子供たちにせっつかれたのにもかかわらず、連れていってやることができなかった。だから、「二作目は絶対映画館につれていくから……」と子供たちに約束させられたのだ。
で、迎えた二作目。「秘密の部屋」を、子供たちと観た……。
そう。その映画が、私の目から、ウロコをぼろぼろ剥がしたのである。それは、私の予想を覆す面白さだった。子供だましだなんて、とんでもない。この映画、めっちゃ、面白いやんけ!
ただ、残念なことに、一作目を観ていないから、ところどころ、よくわからない。
そして、わからないことは心にひっかかる。
ひっかかるから、当然、知りたい。
おかげで、私は帰宅するやいなや、長女から「ハリーポッター」のシリーズを貸してもらい、「アズガバンの囚人」までを三日で読破し、寝不足するはめになったのであった。
ああ、めでたし、めでたし。
と、いうわけで。
今では、ラノベだろうが、リノベだろうが、ルノベだろうが、読まずに判断してはいけない……ということを私は肝に命じている。
でも、こんな私だから、「ラノベ」についてを語る資格がないのも、諸手を上げて認めよう。ほんの戸口に立ったばかりの、ろくに読んでもいない読者が、何をかいわんやなのだ。
しかし、そんなうすっぺらい読書歴しかない私の支持など、有川作品においては必要ない。
なぜなら、有川作品は、私が支持しようがしまいが関係ないくらいに人気があり、ジャンルをこえて支持されており、読み手の年齢を無視した高い評価があるからだ(なんか、だんだん、文章が支離滅裂になってる気がする 汗)。おまけに、奇想天外な設定(?)にもかかわらず、「塩の街」や「空の中」では、ほろりというか、ぐっというか、何とも言えない切ないトラップ(展開?)が仕掛けられていて、私はうっかり泣きそうになった(いや、実はホントに泣きました。もちろん、ここだけの秘密です)。
さて。有川作品を初めて読んだのは、今から三年ほど前だったろうか。
「Nちゃんから『すごく面白いの、読んで』って薦められて、さわりをちょっと読んだんだけど、それが、チョー面白かったの」
という長女の薦め(?)で、
「私が読み終わったら、お母さんも読むでしょ?」
と、『図書館戦争』の単行本(メディアワークス刊だったと思う)をブックオフで買わされた。
価格は、千円弱だったろうか。ブックオフで購入する本の五割は105円という私には、千円弱の単行本は少々高く、「これを買うのか?」と、ためらいも少しはあったが、「ハリーポッター」にまつわる過去もある(長女の薦める本はわりと面白い)。しかも、冒頭の数ページを立ち読みしたとたん、「なんじゃこりゃー!」と、松田優作のセリフのような衝撃を受け、勢いで買ってしまったのだ。もちろん、長女が「やった!」と喜んだのは言うまでもない。
いやいや、有川浩様、おそるべし。
その後、図書館内乱、図書館危機、図書館革命、阪急電車と、千円超の価格を無視し、連続して古本屋で購入したのは、私の記憶に新しい。しかも、読破したあと、次女に「絶対、面白いから、読んで」と、薦めたのも、言うまでもない(笑)。それほどまでに、魅力的な作品だったのである。
もちろん、先にも言ったように、なにが面白いと訊かれても、浅学な私には「とにかく面白かった」としか、答えようがない。ただ、ただ、胸がキュンとなるのが、有川作品なのだ。
ところで、この有川作品、最近では、ジャニーズの二宮くんの主演で「フリーター家を買う」がドラマにもなった(らしい)。残念ながら、私はその作品をまだ読んでいなかったので、ドラマは見なかったのだが、正月に帰省した長女が、「ページをビールで汚さないように!」という条件付きで、単行本(長女所有)を置いていってくれた(なんと、その単行本には有川先生の直筆サイン付き うん、たぶん長女は、ただ、自慢したかっただけなの)。
ビールを呑まない時間に、手袋をはめ、正座して読まねばならないと思っているのだが、なかなか、そんな暇がないのであった。
うーん、残念!