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日常を壊す者

 侵入者騒動から、2週間。

 セイナは気にするなと皆に命じたが、どこか自分達の責任と思い込んでしまうところがあるのか、各々が緊張感を漂わせ、それが国全体に蔓延している。

 悪いことではないのだが、ゆったりした感覚を好むセイナにとっては、いささか好ましくない雰囲気であった。

 

「どうにかなんないかねぇ、っと。」

「何が、ですかな?ふっ!」

「いや、なんか、ふんっ!空気がさ、重くて、よっ!」

「っく!?それは、いたしかた、ない、ことで、す!」

 

 セイナとウォルフは、城に設置された訓練場にて組み手をしていた。侵入者騒動の際に約束をしていたからである。少し離れた日陰でシオンが、訓練場を囲むようにして隠密隊のメンバーが様子を見ている。皆が一様に息をのみ、言葉を発していない。

 ウォルフが打ち込み、セイナがそれを避け、避けた体勢からすかさず防御の隙間に打撃を打ち込み、それをウォルフが防御する。というやりとりを、かれこれ一時間は繰り返している。

 

 互いに素手で、尚且つ、プロテクターを着けずに軽装。これはセイナの『やるならば、常に実戦を想定しろ。』という教えからであった。

 ただし、それ以上に、一般人には理解しがたい光景があった。

 

 セイナは目隠しをした状態で、ウォルフと組み手を行っていた。その状態でウォルフと会話をしながら、笑みを絶やさず、少し余裕を感じさせるほどに攻撃を繰り出している。

 

 対するウォルフは、セイナの動きに確かな隙を探しながら、会話はすれども、目は笑っておらず、必死さを感じさせていた。

 

 これらのことで、どちらが優位に立っているか言うまでもなかった。

 

「ん?おっさん、息上がって、っと、ねえか?」

「そん、なことっ!ありま、せんよっ!」

「っし!んじゃ、王手っ!!」

「っ!?ぬぉ!!」

 

 セイナが、ウォルフの拳撃を体全体で受け流すようにして、体を回転させながら懐に飛び込むと、そのままの勢いを使い、右半身を接触させ、ウォルフに当て身をくらわせた。

 全体重をかけた当て身が直撃したウォルフは、後方に向けて吹っ飛んだが、その後、空中で体を回転させて着地、その体格からは想像できないほどに実に軽やかではあったが、尋常ではないダメージを負ったことをウォルフの両足の震えが物語っていた。

 

「終わりで、いいだろ?」

「ええ、参りました。しかし王に王手をかけられるなど…」

 

 そう言って、ウォルフは座り込んだ。途端に、周りにいた人間から溜息が漏れる。張り詰めていた糸が切れたかのようであった。

 セイナは目隠しを外し、外から入る陽光に目を細めながら、ウォルフがいる方向に体を向けた。

 

「にしても、おっさん。別に魔法わざ使っても良かったんだぞ。」

 

 セイナの言う通り、ウォルフはセイナとの組み手に際して、純粋な肉体の格闘戦で戦い、魔法の類は一切使っていない。セイナの知っている限りでいえば、ウォルフの魔法特性は白兵戦において秀でた能力であったはずだ。

 

「私は、以前も申し上げましたとおり、陛下が目隠しを取っていただければ、使わせていただきます。」

「それは、おっさんなりのハンデか?」

「いえ、恐れ多いこと。自分が陛下の目隠しを取るに足る実力がつきましたらという意味にございます。」

「俺に攻撃を当てていただろう?」

「攻撃を当てるというのは有効打をカウントします。」

「固いやつだ。それに、一回は目隠し無しの状態でやっただろうに。」

「ですから、ですよ。」

 

 ウォルフは苦笑いを浮かべながらこめかみの辺りを指で掻いた。

 

 隠密隊隊長ウォルフ=スティングラは元々イリアの民ではない、それ以前にセイナと初対面の時は味方ですらなかった。

 セイナに恨みを持つ人間が雇った刺客、雇われの殺し屋が昔のウォルフの仕事である。

 

 敵としてセイナと対峙したことを今でもウォルフは忘れていない。銀色に輝く瞳、絶対的な実力差、自分より10ほど若い青年に与えられた味わったことのない完全な敗北。

 そして、何より自害を選ぼうとした自らの命を必要としてくれた器の大きさ。

 ウォルフはあの日からこの国のために生きることを決めたのである。

 

 現在では、ローズフェルトから移住してきた女性と結婚し、一人娘を授かり、一人の良き夫として、父として、隠密隊隊長として生きている。

 あれ以来、守るべきものが増えたとウォルフは穏やかに思う。

 

「わかった。それでは精進しろ、ウォルフ。」

「かしこまりました、陛下。」

「おーい!シオン!!」

 

 セイナはウォルフとの会話を終え、離れて見ていたシオンに呼びかけた

 シオンの表情がパッと明るくなり、一度セイナのほうへ向かおうとして立ち止まり、引き返すと背負っていたバスタードソードを壁に立て掛けて、棚の上にあったタオルを持って小走りで近寄ってきた。

 

「タオルでございますか?セイナ様。」

「ん、ありがとう。でも、ちょっと違うお願いだ。」

「はい、なんなりと。」

「久しぶりに、手合せをお願いしたいのだが。」

 

 その瞬間に、場内にどよめきが走る。

 一国の主にして、国内で最強といわれる男、セイナ=イリアス。

 かたや、男でも扱うことが困難なバスタードソードを片手で扱い、剛力と脅威の身体能力を備えた少女、シオン=アマネ。

 

 国内で互いに敵無といわれる両者による組み手は、武を志す者にとって、あまりに魅力的だ。

 しかし、周りの期待を背にした当の本人であるシオンは乗り気ではない。証拠に明らかに申し訳なさそうな表情をセイナに向けていた。

 

「セイナ様、あの、申し訳ないのですが、私は、」

「なんだ?シオン、さっき『なんなりと』って言ったじゃないか。」

「・・・言った覚えがありません。」

「あっ、シオン、お前!」

「何で、いまさら私と手合せなのですかっ!?」

「さっき、言ったとおりだよ。『久しぶり』って、最後にったのは、5年前だろう?」

ったって・・・・・・、あれは、セイナ様の罠に嵌められたから、しょうがなくですっ!ノーカウントですっ!!はじめからセイナ様と戦う気なんかありません!!」

 

 再びどよめき。ただし、理由は異なる。『黒曜』と呼ばれ、異性に対して常に冷めた表情でいるシオンが、頬を赤らめ感情を露にする光景に、ある者は合掌し、ある者は『眼福』という言葉を呪文のように繰り返し、ある者はある意味で昇天している。

 

 訓練場に繋がる入り口の一つから、タッタッタッ、と誰かの駆けるような音が聞こえた。

 

「兄さん!また、公務を抜け出して何をしているのですかっ!?」

「やばい、ヨシュアだ!お前ら、散れ!」

「「お、応!!」」

 

 隠密部隊がすばやく退散し、ヨシュアも一瞬、その光景に気をとられた。

 その隙を突き、ヨシュアの方を向いていたシオンの手をセイナが握り、強い力で引っ張った。

 直後、シオンが赤面する。

 

「逃げるぞ!シオン!!」

「え、あ、はい!!」

「待って下さい!兄さん!!」

「議会はお前に一任する!頼んだぞー!!」

 

 セイナは街に向けて、一目散に駆け抜けた。

 握られた手を見つめながら、シオンはただ引かれるままにセイナに身を委ねた。

 

 ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

 

「おばちゃん!なんか冷たい飲みもんくれ!」

「あら、陛下様じゃあないかい。久しぶりねえ。ちょっと待ってくださいね。」

 

 言いながら、屋台の体格が良い婦人は、果物を搾ったジュースを木で出来たコップに入れ、セイナの前に2つ差し出した。

 

「シオンちゃんもどうぞ。あれ?いつも背負っている剣がないわね。もしかして、今日はお休みなのかしら。」

「・・・・・・。」

「シオンちゃん?」

「あ、ひゃいっ!!」

 

 婦人に話しかけられ、飛び上がるシオン。

 どうやら先刻まで握られていた手をじっと見ていて、心ここにあらずといった感じになっていたようだ。

 

 訓練場から、そのまま逃げ出したので、セイナは隠密訓練用の上下黒で統一された身軽な服を着ており、王と言うにはラフな格好である。また、シオンは剣を持っていない以外はメイド服のままなので、組み合わせとして外見上は違和感がある。

 

 公務をサボってセイナが街中にいるのは、イリアでは日常的である。国内ではセイナが日中に街を歩いていても、ほとんどの者がそれに対して違和感を覚えることはない。もちろん服装に関しても、公務の一環であったり、公務から逃げ出してきたりと、その背景において服装もバラバラであるので、今のセイナの格好も特に気にされることではなかった。

 

 自由都市国家と銘打ってはいるが、イリアという国は帝国、果ては他の妖精派の国と比べ、小国であり、治めている土地の面積、国の規模、どれをとっても大きなものではない。

 

 ただし、他の妖精派の国に囲まれるように建国されたイリアは、背に渓谷を背負い、国自体が高地にあるため、自然の要塞と化している。他国からすれば攻め難いという印象を強く与える国なのだ。

 

 セイナが王となって6年。治安は日を追うごとに改善し、街の人間も穏やかな日々を過ごせるようになってきた。

 

 差し出されたコップを手に取ると、セイナは片手で掴み一気に飲み干し、シオンは両手がコップを包み込むようにして、少しずつ咀嚼するように飲み始めた。

 

「おばちゃん。ご馳走様。金置いとくから。」

「ご馳走様でした。」

 

 セイナは軽く片手を上げ歩き出すと、シオンは深々とお辞儀をしてからシオンの後に続いた。

 

「陛下様!お釣りは!」

「必要ない!俺にはそれだけの価値があった!また来るぜ、おばちゃん!」

「毎度ありがとうねー!」

 

 婦人は朗らかな笑顔で二人を見送った。

 

 

 しばらく、そのままセイナは街を歩いた。今日も街は活気に溢れている。良い雰囲気だ。

 すれ違うたびに声を掛けてくれる人々、笑顔の子供たち、みんなを守りたい素直にそう思う。

 

「ん?」

 

 セイナは背後に突然強烈な視線を感じた。

 気のせいではないな。証拠に隣を見るとシオンも何かに気づいたようで、表情が変わっている。

 その視線は、それから全身に絡みつくような感覚をセイナに覚えさせた。

 

 強い敵意か、しかも隠そうとしていない。

 

 バサバサバサ!

 

 セイナとシオンの頭上に一羽の烏が降下し、口にくわえていたものをセイナに渡すと、再び飛び立った。隠密部隊所属の伝達用烏である。

 

 烏が銜えていたものは、どうやら手紙であり、セイナはそれを広げた。

 

『西側城壁を警備していた兵士が何者かによって気絶させられていました。いま、隠密にも捜査させています。お気を付けて下さい。 ヨシュア』

 

「おそらく、それだな。」

 

 セイナは手紙を服の中にしまい、シオンに話しかけた。

 

「気付いているな?シオン。」

「はい、セイナ様。後方に一人、尾いてきますね。」

「まっ、たぶん俺絡みだろう。敵意は完全に俺に向いている。しかし、ここではマズいな、街の人を巻き込む危険がある。シオン、付いてこい。」

「承知しました。」

 

 セイナが走り出すと、シオンが後に続いて走り始める。

 街の人間も、突然走り出したセイナとシオンを注目していたが、いつも通り何かあったのだろう程度にしか考えてはいないだろう。

 

 セイナとしては、ここで避難を命じれば、小さな騒動となり、それが侵入者を刺激しかねないという考えの下である。また、願わくは、ここでは事を起こさず、黙って付いてきて欲しいものだと思っていたが、それに関しては心配がない様で、自分たちにしっかりと付いてきていることが気配でわかった。

 

 セイナは空を見上げる。太陽は真上に昇っていた。

 二人は常人では考えられないようなスピードで疾走しているが、それに付いて来る侵入者も、ただ者ではないことがわかる。

 その状態で走りながらセイナはシオンに向けて話しかけた。

 

「シオン、いまの時間、誰もいない場所はあるか?」

「そうですね、この位置と状況から考えますと、ラウンドヒル辺りでしたら、今は人がいないかと思われます。」

「わかった、では、そこにする。」

 

 イリアの東端に位置するラウンドヒルは、昔から街としては整備されていない土地で小さな山々の麓に広い平原が広がっている。

 普段は、騎士団や隠密の屋外訓練場として利用されているが、ヨシュアの伝令が各部署に伝達されていると仮定して、恐らくいまは無人である。

 

 ここからなら、常人で1時間程度。

 それなら、10分かかるまい。

 

 後ろを振り返る。

 大振りのマントで体全体を覆い隠した人間が追いかけてきている。見たところ、まだ余裕はありそうか。

 

「もうすこし速くするぞ、シオン。その服装で付いて来られるか?」

「もちろんです。」

 

 一刻も早く、街から遠ざけたい思いで、セイナはスピードを上げた。

 

 ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

 

 ラウンドヒルの平原にセイナとシオン、侵入者が向かい合って立っていた。

 シオンが前に出ようとするのを、片手を出すことで遮り、セイナは一歩前に踏み出した。

 

「さて、まずは、黙って付いてきてくれたことに礼を言う。それで、狙いは俺か?」

 

 わかっていることだが、確認の意味を込めセイナは話しかけた。

 相手を観察すると、マントの奥から、二つの紅の瞳が見える。

 侵入者も、正面からセイナのことを観察しているようだった。下から上へ視線は動き、終にセイナの左瞳に視線が固定された。

 

「その瞳、貴殿が『魔狼』か。」

「その呼び名、あまり好きじゃないんだけどな。」

 

 覚えがない声だ。しかし気配からある程度察してはいたが


「よりにもよって女か...」


 戦場では男も女もないと、それくらいはわかったいてもやはりやりにくいなという感情は生まれる。

 ただ、何も遮蔽物がないところに来て、敵意をぶつけられると解かる。

 この女は俺に明確な殺意を抱いている。

 しかし、それには理由があるはずだ。

 

「無駄だと思うが、聞いておく。話し合いに応じるつもりは、」

「無い。」

「そうか、残念だ。」

 

 その瞬間、二人の間に強い緊張状態から生じた独特の空気が充満していく。

 

「それでは俺が勝ったら、話を聞かせてもらうとしよう。」

「勝てたらな。」

 

 理由がわからない以上、本人から聞き出すしかない。

 言い終わると同時に、女の姿が消え、セイナは後方に跳んだ。

 

 ドゴォ!という衝撃音と共に、先程までセイナのいた場所の地面が抉られ、半径2メートルほど大きく陥没した。

 予想以上に速い。

 

「それが得物か。」

 

 女は、大振りの剣を両手で構え直した。

 シオンのバスタードソードより長さは劣るが、刀身に幅があり、重量感を感じさせる。ただ、それだけでは地面を陥没させるほどの威力を出すのは難しい。

 

 何かあるなとセイナは直感する。

 

「セイナ様!」

「大丈夫だ。心配ない。もう少し、離れていろ。」

 

 シオンはセイナに従い、見守ることに徹していたが、心配そうな表情というよりは、代わりに自分が出ようとする気持ちを抑えているように見えた。

 

「はああああぁぁぁぁ!!」

 

 女は二撃目の動作に入っている。

 

「だらぁ!!」

 

 振り下ろされた斬撃を地面に転がるようにして避ける。目的は一撃目の場所に移動するためである。

 

 陥没した場所の周りにある草が焦げている。

 

「なるほど、爆発【エクスプロージョン】か。」

 

 大方、インパクト時に剣に魔力を乗せて衝撃面に魔力を爆発させる。それならこの威力も納得がいく。

 使用時に、直接魔力をぶつける分、消費が激しいが、これを連発してくるということは相当の素人か


 相応の遣い手か。 

 

 ただ、この程度なら【使わなくても】制圧は可能だ。とセイナは感覚する。

 

 現在、何も武器を持っていない状態で彼女を制するには、直接的な打撃を与えるほかない。

 しかし、軽率に間合いに入るようなら、爆破の能力により体ごと粉砕されかねない。

 それならば、どうする。

 

 簡単なことだ、爆破の能力を発動させた瞬間、間合いに入り打撃を加えればいい。

 

 実際は、簡単なことではない。

 しかし、セイナの瞳がそれを可能とする。

 

【魔眼フェンリル】。その銀の瞳は、能力を封印している状態でも常時、常人離れした動体視力や魔力の流れを見るという恩恵を所有者に与えている。

 

 帝国兵の攻撃を簡単に避けた動き、小さな力で相手に強烈な衝撃を与える打撃はその力の効果である。

 ただし、力を十二分に使用するには、その動きに耐えうる肉体を要し、セイナは血の滲むような鍛錬と幾たびの戦場を経験した末に、その力に耐えうる体を手に入れたのである。

 

 次の一撃で決める、セイナはそう考え、彼女の動きを見る。

 

 横薙ぎから、上段に振りかぶり、そのまま叩きつける。それを彼女の初動から予測する。

 

「はっ!!」

 

 横薙ぎに振り抜かれた剣を、最小限の動きで避ける。ここで、足に可能な限りの力を溜める。そして、上段から振り下ろされる一撃を軌道が修正できなくなるところまで引き付け、懐に、

 

「いまだっ!」

 

 溜めをつくっていた足の力を解放し彼女の懐に、下段から潜り込む。

 

 しかし、セイナにはそのときはっきり見えた。

 彼女の瞳が不意を付かれた驚愕ではなく、罠にかかった獲物をみるような瞳であったことを。

 

 ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

 

 女は魔力を打撃点に集約させ、二撃目も同じように地面を抉った。

 考えが、正しければ恐らくはこの技の性質は見破られている。それと同時に対応策も。

 

 それは狙い通りでもある。

 

 魔眼フェンリルがどういったものであるか、それは国にあった多くの資料からある程度の推測を立てることが出来る。

 

 そして、風聞が確かであれば、魔眼の所有者であるセイナ=イリアスは、侵入者を『すすんで殺害しない』フェミニストだ。

 

 恐らくは、自分のことも戦闘不能にすること狙ってくるはずだ。

 そこに勝機をみる。

 

 彼は武器を持っていない、それならば攻撃方法は打撃。

 私が爆破の能力を使っていれば、そのうちに隙を突いて懐に入ってくる。

 

 動きを見る。視線、体勢。

 

 三撃目の、横薙ぎを避けた体勢から、彼が次の一撃を合図に打撃を加えにくると確信した。

 

 それが狙っていたタイミング、彼は私をただの爆破能力者と思っている。

 

 予想通り、驚異的な速さで、懐に入ってくる。

 しかし、あらかじめ予想していたため必要なことをするだけだ。

 

「【全てを焼き尽くせ、イフリート】。」

 

 ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

 

「【全てを焼き尽くせ、イフリート】。」

「なっ!?」

 

 その言葉が響いた瞬間。彼女の体が炎に包まれた。

 一気に、彼女の周囲の空気が高温になっていく。

 

 セイナは打撃を加えようとした拳の動作をキャンセルし、地面を後方に向かって蹴ったが、無理な動きをしたため体勢が不安定になってしまう。

 

 その状態を好機と見たのか、彼女が火に包まれた腕を横薙ぎに振るう。

 すると、彼女の腕から産み落とされたかのように、いくつもの火球がセイナに襲い掛かった。

 

 ドスっ!!

 

「くっ!」

 

 全て避けきれず、ひとつが左足に直撃する。

 火球の威力は凄まじく、足からの衝撃で体ごと飛ばされた。

 

 そのまま、地面を転がる。

 

「これは、高位魔法【ハイスペル】か・・・。」

 

 高位魔法【ハイスペル】は、血の特性による魔術の根源となる要素をありのままに使用できる魔法であり、その威力は一般的な魔術と違い強力である。


 また、イフリートという高位魔法の起動の速さ。魔力の流れを読むフェンリルをもっても単純な呪文のみで溜めを必要としないこの魔法の特性は厄介なものであった。

 

 ただし、使用できる人間は、その根源を特色として持っている血がより濃く受け継がれている者、それでは、彼女は

 

「喰らえっ!!」

 

 気をとられたときセイナに僅かな隙が出来る。


 彼女は懐から赤く光る石を柄の窪みに嵌め込むと剣を前方に投擲した。

 

 目標は、シオン。


 セイナはそれを見た。その赤く光る石に尋常ではない量の魔力が込められている。まさか、

 

 はじめから、それが狙いか。

 

 シオンの位置を確認する。込められた魔力量を考えれば、あの距離では確実に爆破に巻き込まれる。

 しかも、シオンはセイナに気をとられ初動が明らかに遅れている。自らを守るべき武器もない。

 

 負傷した左足を庇わず

 

「シオン!!」

 

 ただセイナはシオンにむけて疾走した。

 

「セイナ様っ!!」

 

 シオンがセイナに呼びかけたと同時に、鼓膜を貫くような爆発音と衝撃が響き渡った。

 


今回は、ある意味完結となっていない話です。


すこし長くなりそうだったので、一つの話を2~3部構成にしてみようかと思ったわけです。


バトルシーンって難しいですね。でも、このあともバトルシーンとなるでしょう(涙)


あと、修正したのですが、一話目からミスしている箇所、間違った名詞を使っておりまして(汗)気づいたときにはゾッとしました。


正直、自信をもって日本語が語れる日本人ではないので、何か言葉の使い回しで、これはイカンというものがありましたら。ご指摘お願いします。


私の稚拙な文章を読んでくださる方、感謝です。

頑張って、続きを書きますのでよろしくお願いします!


※いまよく見たら誤字だらけでした(涙)まだ修正箇所があるかも・・・

2010.7.3.12:30頃

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