幕間 ~二人~
「よいしょ」
奥の部屋、普段はミリアが使っている寝室のベッドの上に優しく降ろされたのはグレイス。アルコールの影響で紅潮した顔を綻ばせ機嫌よく腰掛ける。靴などの履物は脱ぎ捨て、子供のように足をパタパタとさせていた。
それを見ながら、ミリアもやれやれといった表情をしながらも瞳は優しかった。
「二人きりになるのは久しぶりね、グレイス」
「んふふぅ、個室に二人きり…天国かしらん」
言いながら、グレイスはスルスルと衣服を脱ぎだし、あっという間に下着だけの状態になった。
「さぁ!きてぇ!」
「…あー、お店に戻らないとー」
「いけずぅ!いけずうううぅ!!」
ベッドの上で足をバタつかせるグレイスを見ながらミリヤは本当に子供みたいだと嘆息した。
ありし日を思い出す。あの頃からは想像のつかなかった現在の関係。
初めて出会ったのは、確か…。
「…リア?ねぇ?」
「…ごめんなさい、グレイス。少しだけ昔を思い出してたわ」
「…アイツのこと?」
「いえ、昔のあなたのことですよ」
「いやぁん、恥ずかしいからイヤよー!」
「はいはい、やめますから静かにしてくださいね。毛布、かけますよ?今日は少し冷えそうですから」
「この香り…昇天しそうよ。フフフ」
「それじゃあ、今度こそ戻りますよ」
ミリアが扉に体を向ける。
「…私もね」
「どうしたの?グレイス」
「私もよく覚えているわ。あの国に、あの立場にあって、それでも強い光を失うことのなかった貴女の存在。いつも意識してた」
「…今度、ゆっくりお話ししましょうね」
部屋を後にしようとするミリアの背中にベッドの上で横になったグレイスが声をかける
「いってらっしゃい、エミリア。愛してるわ」
少し振り返りながら微笑み、
「ゆっくり休んでくださいね。クロウディア」
言って、ミリアは部屋を後にした。