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8 戦争

 銀貨が捏造されている事が知れ渡ると、国中に混乱が訪れた。

まず、化学者たちにより現在発行されている銀貨には3分の2以上銅が含まれていることが論じられた。

もちろん最初に論文を出したのは私の領地にすむ反乱軍の一員だ。

それにより銀貨の信用は地に落ちた。

通貨の価値が墜落し、物価は以前の何倍にも膨れ上がった。

こうして我が国の経済は崩壊したのだ。

民が不満の声を上げるのは当然であった。

テレーズは貧困に苦しめられた農民や教団に意を唱える者たちを率いて、この混乱を招いたフィリップ王子の戴冠に抗議を迫る行進を連日行った。

そのためテレーズは屋敷をあけることが増えた。

ようやっと帰ってきたかと思うと、体中傷だらけになっているのだ。


「テレーズ、その怪我はどうしたの。」


「王国軍の奴らにやられたんだよ。」と答えながらテレーズは私から包帯を受け取った。

手当をしようとする私をテレーズはいつも拒んだ。


「あたしに構うなよ。

それより他の奴らを手当してくれ。

仲間も怪我してるんだ。」


テレーズのいうように、帰ってきた反乱軍の者たちは皆怪我を負っていた。

心配になる私に、テレーズは「そんな顔するな。」と笑う。


「あたしたちは平気だ。

奴らに簡単に負けやしない。

カドリーヌは婚約発表まで大人しくしていろよ。

あんたに死なれちゃ困る。」



そうして婚約発表の日がきた。

私とリオンの婚約発表は、隣国の王宮で取り行われることになっていた。

先日リオンが演説を行ったバルコニーに、今度は二人で並んで立つ。

バルコニーからは先日よりも多くの近衛兵が警備をしているのが見えた。

リオンが私の手を取り口を開く。


「私、リオンとモンタギュー公爵家の令嬢、カドリーヌとの婚約をここに宣言する。

皆も知っているとおり、カドリーヌ嬢は隣国の公爵家令嬢であり、隣国において最も広い領地を所有している人物である。

また彼女は我が国の教団からの独立を支持してくれている。

彼女は皆に教団の影響を受けない清い信仰を保障してくれるだろう。

彼女は私と志を共にしている。

私はカドリーヌ嬢と協力し、皆の幸福のために尽くすことを約束する。」



リオンが宣言を終えたそのとき、人々の拍手の音よりも先に地鳴りのような音が響き渡った。

それはフィリップ王子の率いる我が国の王国軍隊が攻め入る足跡だった。

集まっていた隣国の民たちがどよめくのとは裏腹に、リオンは涼しい顔をして私に微笑みかける。


「貴殿の言ったとおりになったな、カドリーヌ嬢。

おかげで迎え打つ準備はできている。」


「ええ。

フィリップは私とリオンの婚約を阻止したいでしょうから、万が一に備える必要があると思っていたの。

本当に攻め入るほど愚かだとは思わなかったけれど。」


リオンはふっと鼻で笑うと、身振りで自身の兵たちに民を避難させるよう指示する。


「フィリップ王子ははるばる我が国へ来てくれたのだ。

歓迎してやらねばなるまい。」


瞬く間にリオンの率いる隣国の軍が戦艦を率いて現れ、フィリップ王子の軍と対峙する。

リオンは民が皆避難し終えたのを確認すると、軍の先頭に立つフィリップに声をかける。


「こんなに大勢を引き連れてなんのご用かな、フィリップ王子。」


余裕のある冷たい笑みを浮かべるリオンとは対照的に、フィリップは怒りを露わにする。


「とぼけるな。

お前とその女の魂胆はわかっているんだ。

お前たちは我が国の王座を狙っているんだろう。

そうはさせない。

ここでお前を倒す。」


「それは私への宣戦布告と捉えて宜しいか。」


「そうだ。」と息巻くフィリップに、リオンは冷笑を返す。


「だが、貴殿の王宮は既に占領されているようだぞ。」


「何を言っている!」


青筋を立てるフィリップの元へ、ひどく慌てた様子の彼の兵士が駆け寄る。


「フィリップ殿下!

王宮が反乱軍により占拠されました!」



その声を聞いて、私は思わず「テレーズたちは勝ったのね。」と小さく喜ばずにはいられなかった。

フィリップが隣国へ攻め入る間に、彼のいなくなった王宮へテレーズ率いる反乱軍が攻め込み占拠したのだ。


「あなたの負けよ、フィリップ王子。」


私がそういうと、フィリップは顔を真っ青にして膝をついた。



「さてカドリーヌ嬢、貴殿にひとつ教えておくことがある。」


興味なさげにフィリップから視線を逸らして私の方をむいたリオンがいった。


「なにかしら。」


「そちらの国の王室に近しいものに貴殿の協力者がいるのはご存知だろう。

それが誰か、知っているか。」


リオンがいう協力者とは、テレーズに手紙を出しフィリップが銀貨の捏造をしたことを伝えた人物だろう。

その人物はリオンとも通じていただろうか。


「いいえ。

誰なの。」


リオンは私の耳に顔をよせ囁いた。


「聖女アリアだ。」


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