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第77話:静かな怒り

継承戦一回戦エフィナVSダルガンの戦いは一進一退の攻防が続いていた。


ダルガンは舌打ちする。


(殺せない……!)


爪を立て、歯を噛みしめる。


「反則、反則、反則……くだらん縛りだ。魔界は弱肉強食が全て!!なのに殺せないだと!?これでは本来の力が出せないだろうが」


ダルガンは地団駄を踏みながらエフィナとエルネストを睨む。


「お前達もそう思わねえか?こんなやり方で本当に真の魔王が決めれると思うか!?」


ダルガンは他の候補者に訴えかける。


他の候補者は特に反応はせず静観を決め込む。


その態度にダルガンの怒りのボルテージはますます上がっていく。


その様子を見てジルヴァが話す。


「最初の取り決めで言ったはずだ。殺し合いをするならそれは”戦争”になるだけだ。それで魔王を決めて何になる?不服ならば降りればよかろう」


「黙れよジジイ!!魔界全土は強者を求めてんだよ。こんなままごと遊びみたいな決め方で誰がついてくるんだよ!!もういい!!ここからは俺様のやり方でやるぜ!!」


ジルヴァが止めに入ろうとする。


「身勝手な事をすれば失格にするぞ!!」


「その前にてめえらを殺してやるよ!!」


ダルガンはジルヴァと記録官に飛びかかった。


それをエルネストが防いだ。


ダルガンの背後の影からグラヴァが飛び出し、爪でエルネストを吹き飛ばした。


エルネストは地面に叩きつけられ口から吐血した。


「よくやったぞ。グラヴァ!!」


グラヴァは少しだけ頭を下げ、すぐさまエルネストに追撃を開始する。


エルネストは立ち上がり、グラヴァの攻撃を弾き、反撃する。


後ろに下がるグラヴァに対しエルネストは追いかけそれぞれ攻撃をしあう。


ダルガンは再びジルヴァ達を狙おうとする。


「しまいだ。力が全てという事をその身をもって思いしれ!!」


ダルガンの凶爪がジルヴァに振り落とされる。


だがダルガンとジルヴァの間に結界が展開され、ダルガンの攻撃は弾かれた。


ダルガンが睨む先にはエフィナがおり、エフィナは手をかざしダルガンを睨んでいた。


「あなたの相手はあたし達だよ?」


エフィナは結界をダルガンの周りに球状型に展開し閉じ込めた。


「こんな薄っぺらい結界で俺様の動きを封じたつもりか。舐めるなよ!!」


ダルガンは爪を高速で振り回し結界を破壊した。


エフィナの前に降りてきたダルガンはエフィナを見下ろしていた。


「そんなに死にたいなら。殺してやるよ」


「やれるもんならやってみなさいよ」


挑発するエフィナにダルガンはニヤリと笑った。


「お望み通りにお姫様!!」


爪を振り落とすダルガン。


「させるか!!」


背後からエルネストがダルガンに斬りかかる。


ダルガンはギリギリかわし、その隙にエフィナとダルガンの間に立つエルネスト。


ダルガンがグラヴァの方に視線だけを向けると、腕に傷を負い、膝をついていた。


「さすがだな。グラヴァを退けるとは」


ダルガンは素直にエルネストを褒め拍手した。


「俺様は強い奴が好きだ。それがたとえ人間でもな。どうだ?俺様の仲間にならないか?お前なら部下としてではなく肩を並べる朋友として迎え入れんこともないぞ?」


エルネストに手を差し伸べるダルガン。


「俺が手を取るとでも?それにお前からは嘘の気配が漂ってる。もし俺が仲間になっても隙を見て殺すつもりだろ」


ダルガンは不敵な笑みを浮かべる。


「まあバレるか……。その通り。俺は人間が心底大っ嫌いなんだよ。視界に入れるのも不快なくらいにな」


「奇遇だな。俺もお前みたいな力で全てを捩じ伏せようとする奴は気に食わん」


エルネストとダルガンの視線が交差する。


ダルガンは突然闘場に響く声で叫んだ。


「いいか、魔界の者ども!」


炎が一段と燃え上がる。


「俺が魔王になった暁には――真っ先に人間界を蹂躙する」


観衆がざわつく。


「村も街も、国もだ。魔族の恐怖を思い出させてやる!」


その言葉に観衆はうおおおおと叫び、ダルガンコールが巻き起こった。


その瞬間、闘場の音が消え、場が凍りつくのを全員感じた。


次の瞬間、エフィナの魔力が、明確に変質した。


「……許さない」


静かな声。


だが、その内側には激しい怒りがあった。


「あなたは……“王”を名乗る資格がない」


エルネストも剣を構え直す。


「人間界を蹂躙する?そのために、何人の“普通の人間”が死ぬ?」


カナトの顔が浮かぶ。


ユナの笑顔が脳裏をよぎる。


「俺は、それを見てきた」


エフィナは一歩、前へ。


「力で支配する王は、もう要らない」


エルネストが横に並ぶ。


「この戦いは、お前の“野心”を測る場じゃない」


炎の中、二人の影が重なる。


エフィナの魔力が、抑制から“導き”へと変わる。


ダルガンの炎を、完全には消さない。


だが、暴走させない。


「ここで止める」


エルネストが言い切る。


「俺達は……未来を焼かせない」


ダルガンは笑った。


「……面白い。ならば、焼け残れるか試してみろ!」


炎が咆哮し、闘場が震える。


ダルガンがエルネストに飛びかかる。


エルネストの剣が、ダルガンの腕を浅く裂いた。


血が、炎に落ちて蒸発する。


「……チッ」


ダルガンが一歩、後退した。


エルネストの攻撃を捉えきれなかった。


観衆が息を呑む。


エルネストの動きは、完全に上回っていた。


合流したグラヴァの突進をいなし、ダルガンの拳を剣の峰で弾く。


二人の連携を、わずかな隙で切り崩す


だが、決定打が出せない。


(……この距離なら、首を落とせる)


剣先が喉元に届く。


だが、エルネストは止めた。


(駄目だ。殺す)


刹那の躊躇。


その瞬間に、ダルガンとグラヴァが距離を取る。


エルネストの眉がわずかに歪む。


(魔族との戦いは、いつも命の取り合いだった)


制圧?無力化?


そんな概念は、魔族同士の戦いにはない。


弱った敵は、次の瞬間、牙を剥く。


だから殺すか、殺されるか。


それが、エルネストが生きてきた戦場の常識だった。


(だが……今は)


ルールがある。


殺してはいけない。


人間同士の戦いのように、腕を折る、気絶させる、拘束する。


だが、ダルガンは違う。


(この相手を……“制圧”する術がない)


エフィナは、その迷いを見逃さなかった。


「……エルネスト」


声は震えていない。


だが、覚悟がこもっている。


「本気を出せば……勝てるの?」


一瞬、闘場の音が遠のいた。


エルネストは、正直に答えた。


「……ああ」


視線を逸らさず、続ける。


「ダルガンと、その副戦者。二人がかりでも……」


一拍置いて。


「前魔王の、足元にも及ばない」


観衆がざわめく。


ダルガンの顔が歪む。


エフィナは、一歩前に出た。


「それなら……」


短く息を吸う。


「本気を出して」


その言葉は、命令ではなかった。


信頼だった。


エルネストは戸惑う。


「だが……それは……」


「あたしは、見たい」


エフィナの瞳が、まっすぐにエルネストを射抜く。


「殺さずに、あなたが“魔族と戦ってきた勇者”である証を」


その目に、恐れはない。


逃げもない。


(……信じてる)


エルネストは悟った。


「……分かった」


エルネストは剣を構えた。

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