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第63話:村の異変

数週間ぶりに故郷の村が見えてきたころ、カナトは胸の奥にぬるい安堵を感じていた。


「やっと……帰ってきたな」


肩にかけた荷物を軽くゆらし、エフィナも嬉しそうにした。


「村の匂い……懐かしい……んだけど……」


ユナも微笑みながら言う。


「いつもの、のんびりした村……のはずなんだけどね」


だが、三人の足は、村の入口でピタリと止まる。


「……あれ?村、間違えた?」


思わずそんな言葉が漏れたほど、村は変貌していた。


◦ 村の入り口には商人の行列

◦ 露店がずらりと並び

◦ 旅の冒険者たちが荷車を押しながら押し寄せ

◦ しかも、見たことのない大きなギルド旗まで立っている


ジュードがぽかんとした顔で呟いた。


「……なんでここにギルドの臨時支部があるんだ?」


ユナが呆気に取られる。


「なんか……お祭りでもしてるみたいね……」


カナトは眉をひそめながら村の通りを見渡す。


どこを見ても知らない人だらけだった。


村の中心部に入ると、さらに混沌としていた。


「おい!そっちの宝箱は俺のだ!」


「いやいや、先に見つけたのはこっちだ!」


「鑑定士様、こっちも見てくださーい!」


そんな怒号と喧騒が飛び交い、いつもの静けさなど欠片もない。


エフィナがカナトの袖をくいっと引っ張る。


「カナト……ここ、ほんとにフィリア村……?」


「……の、はずなんだけどな」


ユナが「えっ」と声を漏らす。


「ちょっと待って……あれ、うちの酒場……?」


本来ならのどかに営業しているはずの酒場が、客であふれ、外にまでテーブルが出されていた。


中から怒鳴り声が響く。


「料理は順番だー!文句は言わせんぞ!!」


ジュードが店を任せた代理の村人の声が店に響き渡る。


他に手伝いをしている村人達はヒィヒィ言いながら店の中や外を走り回っていた。


カナトたちは思わず吹き出した。


「おーい!カナト達か!」


聞き慣れた声がして振り返ると、村長が慌てて歩いてきた。


村長は息を切らしながら現状を説明する。


「お前さんたちが留守の間にな……!あの魔王城から宝がザクザク掘り出されてな!」


「宝……?」


カナトの顔が引きつる。


村長は続ける。


「武具に金貨、古い巻物やら魔道具やら……冒険者が噂を聞きつけて、こんな有様よ!」


エフィナは驚いたように瞬きをする。


「あ……あそこ、そんなに宝あったの……?」


ジュードが頭をかきながら言う。


「今までそんなに出てなかったのに、何で今頃……」


ユナが苦笑いする。


「お宝ラッシュ……そりゃこうもなるよね……」


村長は両手を広げて叫んだ。


「村の人口が十倍になっとるんじゃあああ!!」


カナトは頭を抱えた。


「しばらく、村でのんびり……する予定だったんだけどな……」


エフィナは逆に嬉しそうに目を輝かせる。


「カナト!お祭りみたいで楽しいよ!」


ユナは頬を膨らませて言った。


「私もゆっくり出来ると思ったのに……」


カナトは肩をすくめるしかなかった。


こうして、平穏を求めて帰ってきたカナトたちを待っていたのは、村史上最大の“宝騒動”による大混乱だった。


しかし、その混乱の中にも、彼らが守った村の新しい活気が満ちていた。


とりあえず全員まずは酒場の混乱を収めるために酒場に入っていくのであった。


久々の酒場にエフィナは最高の笑顔で接客し、ユナはジュードと共に料理を作り、カナトは空いた皿を下げつつ、洗いまくるのであった。


酒場のメンバーが戻ってきた事により次々と客を捌ききれ、怒涛の一日が終わった。


翌朝


「……ん、あさ……?」

布団の端で丸くなって眠っていたカナトが、腕を伸ばして大きく伸びをした。


そのすぐそば、エフィナはすでに起きている。寝癖のついた髪をまとめながら、主人公に軽く声をかける。


「起きて?」


「……あぁ。早いな、エフィナ」


「お腹すいた」


エフィナはそう言うと、さっとキッチンへ向かう。


慣れた手つきで料理を作るが、頑張って作る姿が微笑ましく、カナトも横で手伝っている。


「酒場の余った材料しかないから、簡単なものでいいよな?」


「そうだね」


カナトとエフィナはパンとスープとサラダをテーブルに並べ「いただきます」と言って食べた。


午後、ユナと合流し買い物に出る。


前はなかった美味しそうな露店の匂いにエフィナがすぐ吸い寄せられた。


「カナト、あれ! あれ食べたい!」


「さっき昼食べたんだろ?」


「べつ腹……」


「……甘いものは太るわよ!!」


ユナがエフィナの腕を掴んで止める。


エフィナはじたばた暴れながら、カナトにすがりついた。


「カナト……?」


「ユナが怒るからな……」


「がーん!」


露店の主人が笑いながら声をかける。


「仲良しだねえ、三人さん」


「…………」


「…………」


「いや、まぁ……」


二人が同時に主人公の袖を掴んだ。


「「そうでしょう?」」


そのタイミングが完全に揃っていて、仲の良さが滲み出てしまい、周囲の客が“あぁ、若いねぇ”と微笑ましそうに見ていた。


夜。


部屋に戻り、風呂も済ませ、カナトとエフィナは寝る準備をしていた。


静かな時間だ。


エフィナが小さな声で言う。


「……こんな日々、ずっと続くのかな」


カナトが少しだけ目を細めた。


「続くといいな」


「……うん」


エフィナがカナトの肩に頭を預ける


「カナトと一緒ならわたし、どんな日々でも大丈夫だけどね」


「……急にどうした」


「なんとなく……。でも、そう思ったの」


「……もし、また大きなことが起きたら……」


「わたし、カナトのそばにいたい」


カナトはエフィナの頭を優しく撫でた。


「何があっても、守るよ」


エフィナは小さく息をついた。


穏やかで小さな日常が過ぎていくのだった。

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