第62話:祝賀会
カナト達はラディウスの提案でエフィナ奪還成功を祝してリュミナスで一番大きい酒場を貸切にし、
宴を催す事にした。
夕方前にカナト、ユナ、エフィナが到着する頃には既に始まっており、何人かはすでに出来上がっていた。
その中にはユナの父ジュードも入っていた。
「おお、今回の主役、カナト様とエフィナ様のご到着だ!!」
誰かが大声をあげると、その場にいた全員が指笛を吹いたり、拍手をしたりしてカナト達を出迎えた。
カナトとエフィナは少し恥ずかしそうに入り、ユナはこのノリに慣れているので、
やれやれといった様子で入ってきた。
カナトは座席に案内され無理やり座らされた。
「何飲むよ?酒か?」
顔を赤らめた白獅子ギルドの冒険者が酒を片手に持ちながらカナトに肩を組んできた。
他の冒険者が頭をゲンコツした。
「未成年に酒勧めるな」
首根っこを掴まれ別の席に連れて行かれる様子をカナトは苦笑いしながら見送った。
ベルグラン商行の商人が、水を渡してくれた。
「ありがとうございます」
「いいえ。飲みたい物や食べたい物があれば、持ってきますよ」
店の奥にはたくさんの料理や飲み物が並べられている。
「ありがとうございます。そしたら肉と野菜を適当に……」
「承知しました」
商人は料理を取りに行った。
入れ替わりに、大聖堂の信徒の人達がカナトに挨拶に来た。
「今回は誠におめでとうございます」
信徒の人達はカナトに頭を下げた。
「いえいえ、皆さんのお力添えがあってこそ成せた事です。こちらこそありがとうございます。
皆さんお食事は?」
「私どもは修行中の身うえ、水とパンをいただきました」
「そうですか、お疲れ様です」
「私どもそろそろ礼拝の時間なのでここでお暇させていただきます。一目お会いできて良かった」
「こちらもお礼が言えて良かったです」
信者の人達はカナト達に一礼し酒場を後にした。
「どうぞ」
商人が帰ってきて、カナト達のテーブルに料理を置いてくれた。
「ありがとうございます」
「では、私はこれで」
商人はにこやかに一礼し自分の席に戻った。
カナト達は商人が持ってきてくれた料理に舌つづみを打ち、しばらく和やかに話した。
話がちょうど一区切りついたところにラディウスがやってきてカナトとエフィナを前に案内し、
挨拶をと言ってきた。
カナトとエフィナが前に立つとさっきまでやかましかった全員が黙って、カナト達を見た。
「皆さん、改めて今回は本当にありがとうございました。僕一人ではこうしてエフィナやみなさんと
笑い合える結末に辿り着けなかったと思います」
カナトはエフィナを微笑みながら見た。
エフィナも微笑み返し前に振り向いた。
「わたしは魔族です。そんな魔族のためにこれほどの人達が立ち上がってくれた事に感謝の念に堪えません」
エフィナはその小さな容姿には似つかない言葉を酒場にいる人達に伝える。
酒場にいる人達もエフィナの話を真剣に聞き入る。
「この中にはまだ魔族を恐れている人もいると思います。魔族がこれまでやってきた事を考えると、
仕方のない事だと思います。それでもわたしの為にここまで来てくれたカナトやユナ、皆さんに
言わせて下さい。本当に助けていただきありがとうございます。皆さんに頂いた命、
大切にしていきたいと思います」
エフィナが頭を下げるとあちこちから拍手の嵐が巻き起こった。
ラティウスが樽のジョッキを持って横から入ってきてカナトとエフィナの間に入った。
「彼らの未来やこれからの変わりゆく世界に幸あらんことを願って、今宵は飲み明かそうぞ!!かんぱーい」
「「「「「「かんぱーい」」」」」」
全員がジョッキを掲げて乾杯した。
「挨拶良かったよ。これからの行く末はカナト君たちのような若者やエフィナ君のような人間と仲良く暮らしたいと思う、他種族が作っていく。よろしく頼むよ」
カナトとエフィナは強くうなずいた。
席に戻ったカナト達は次々に話しかけられたり料理や飲み物を持ってこられたりし、大いに楽しんだ。
エフィナも魔族についての話を振られ、自分が分かる範囲で答えていた。
宴は朝まで続いたらしいがカナト、ユナ、エフィナは途中で退席し、宿に戻り休息を取った。
二日後。
カナト、ユナ、エフィナ、ジュードはフィリア村に帰る準備をしていた。
ガルド、ミリアは前日に諸外国を回ると言い別れの挨拶は済ませていた。
「ようやく村に帰れるな」
カナトは部屋で荷物をリュックに詰め込みながらエフィナに話しかける。
「うん。またフィリア村に帰れるなんて夢みたい」
エフィナは嬉しそうにカナトを見る。
「二人とも準備できた?」
トントンとノックした後にユナが部屋に入ってきた。
「もう少しで終わるから、先にエフィナと馬車に行っていてくれ」
フィリア村までラディウスの好意で馬車で送ってくれることになっていた。
最後の荷物を詰め終わったカナトは部屋に頭を下げ、出た。
馬車にはユナ、エフィナ、ジュードの三人が既に座って待っていた。
馬車に乗り込んだところに、カナトを見送りにラディウスが現れた。
「ラディウスさん。エフィナを助けていただきありがとうございました。この恩は一生忘れません」
「君の大事な人を助ける手助けができて良かった。それにこちらにも君らの願いとは別に多少違う思惑はあった。
それは同盟を組んだ諸外国も同じだろ。その結果国と国が手を取り合うことが出来るようにもなった。
こちらこそありがとう」
ラディウスは頭を下げた。
「それでも、エフィナを助けるために動いてくれた事には変わりありません。
一段落したらぜひフィリア村に遊びに来てください」
「ああ、約束しよう。今度は良き友人として訪ねさせてもらうよ、カナト」
カナトとラディウスは握手をした。
馬車が動き出した後、全員でラディウスに手を振った。
エフィナは特に大きく手を振り、目には涙を浮かべていた。
「ありがとう。本当にありがとう。わたしみんなが救ってくれたこの命大事にするからね」
エフィナはラディウスに叫び、ラディウスはニコリと笑い、馬車が見えなくなるまで振っていた。
馬車が見えなくなると手を下ろし、少し余韻に浸った……。
「またそう遠くない内にお会いしましょう”エフィナ・ルア・ファルミナス様”」




