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第59話:血筋の終焉

エフィナの印の力で勇者としての力を封じられたヴェリシア三兄弟。


ガルド達と対峙していた長男・アドリアン・ヴェリシアは自分の中から力が消えていくのを感じ、驚愕していた。


「これは一体……。勇者の力が……」


アドリアンは剣を振るって、勇者の力を出そうとするが空を斬るだけで何も出なくなっていた。


ユナ達と戦っていた次男・レオンハルト・ヴェリシアも同じだった。


「ふざけるな。俺は勇者の血族だぞ!!その勇者の力が使えなくなった……」


剣に力を注ぎ込もうとするが剣が炎を纏うことはなかった。


最後に三男・ディオバルド・ヴェリシアが剣を振っていた。


だが、その斬撃は先ほどまでの速さはなくなってた。


風も消え、純粋な肉体と技の勝負へと変わっていた。


ギィンッ!


剣がぶつかるたび、互いの体力が削れていく。


「こんな事が……俺がこんなイレギュラーどもに追い詰められるだと……」


ディオバルドは、エルネスト、カナト両名を同時に相手にしていた。


「さすがと言うべきか……。力を失っても二人相手に互角に渡り合うとは」


エルネストとカナトが交互にディオバルドを攻めるが、弾き返されては反撃をされる。


「当たり前だ!!勇者としての力がなくともお前達など敵ではない」


カナトが短剣を突き出すが、横に避けられ逆に腕を掴まれ膝蹴りをくらう。


「がはっ!!」


カナトはお腹を押さえてその場でうずくまる。


その上からディオバルドが剣を振り落とそうとするが、エルネストが弾く。


剣が放物線を描き後ろに飛んでいった。


「なっ!!」


「強がっていても、動揺は隠しきれないか……。今までのお前なら剣を吹き飛ばされる事なんてなかった」


エルネストはディオバルドに剣の切っ先を向けた。


「まだだ!!俺は勇者の血族。魔を滅する者なり。魔族がこの世界に蔓延ってる限り、世界に真の安穏は訪れない」


ディオバルドは手でエルネストの剣を掴み、エルネストを自分の方に引き寄せ、頭突きをくらわせた。


「何という執念だ。そうまでして魔族を根絶やしにしたいか!!」


「当然だ!!奴らは存在しているだけでこの世界に悪影響をもたらす害虫!!害虫は駆除しなければならない」


「エフィナは害虫じゃない!!」


カナトがディオバルドの腰にまとわりついた。


「黙れえぇぇえええ!!魔族を庇うお前達も害虫だ!!世界の為に死ねええええ!!」


ディオバルドはカナトの頭に肘打ちをする。


一瞬気を失いかけるカナトだが根性で持ち堪えた。


「このぉ……っ!!」


もう一度肘打ちをしようとした時、エルネストがディオバルドの眼前に迫っていた。


「ディオバルド・ヴェリシア。今まで魔族の脅威から人々を守ってきてくれた事には敬意を表しよう」


エルネストは剣を更にグッと握る。


「その責務から解放してやろう!!世界はあの子をきっかけに変わろうとしている……」


剣を振り構える。


「だから、お前達も世界と共に変わるんだ!!」


「我らはこの世から魔族を一匹残らず滅ぼすために存在する!!そんな世界認めてたまるか」


ディオバルドは迫り来る剣を口で受け止めた。


「なっ!!」


ディオバルドの悪あがきにエルネストは驚いた。


「そのガチガチの考えを改めろって言ってるんだ!!」


カナトは足を引っ張りディオバルドの体制を崩した。


口から剣が離れ、エルネストが再び構える。


「改めぬ!!ここで俺が折れれば世界は魔族に蹂躙される!!そんな事許さぬ!!」


剣がディオバルドに向かって振り落とされる。


もう自力で避けれぬ所まで迫っていた。


「ダメえええええ!!」


エフィナが大声で叫んだ。


その声に反応したエルネストは咄嗟にディオバルドの体の横に剣を突き刺した。


「はあ……はぁ……はあ……」

「はあ……はぁ……はあ……」

「はあ……はぁ……はあ……」


カナト、エルネスト、ディオバルドの三者はそれぞれ息を荒げていたが、やがて三人とも力を抜いた。


「誰かを守りたいという思いにお前は負けたんだ」


ディオバルドは無言でエルネストを睨んだ。


「いや、お前もこの世界を守りたいという意味では一緒か……」


「俺の負けだ、殺せ……」


ディオバルドは目を閉じた。


「殺しませんよ。俺達の目的はエフィナの奪還です。それ以上は求めません」


カナトの言葉にエルネストはフッと笑い、剣を抜き鞘に戻した。


「ここで殺さなければ、俺はずっとお前達を狙い続けるぞ!!」


「もう、誰にも奪わせはしない。来るなら今度こそ返り討ちにするまでだ」


そう言ってカナトはエフィナを連れその場を立ち去った。


その頃ガルド達はアドリアンとの勝負が最終局面を迎えていた。


「チッ……まだ立つか、化け物め……!」


「お前こそ……いいかげんくたばれ!俺達の連撃をどんだけ浴びてんだよ」


アドリアンの体は既に満身創痍だったが、瞳から闘志は消えていなかった。


「そう言うわけにはいかんな。この国は最強であり続けなければいけない」


「いや十分最強だろ。俺達三人を一人で相手にできている時点で」


ヴァーリンは肩で息をしながら剣を構える。


「負ければ、最強ではなくなる。この国の地位は失墜する!!それだけは断じてあってはならん」


アドリアンが鬼気迫る勢いで三人に突撃してくる。


「貴方がこの国を思うように、私達もエフィナさんを思っているのです!!」


ミリアは光の矢を放つ。


アドリアンは避けず全て受けながらもなお迫り来る。


「魔族などこの世界の害にしかならない!!」


「そうかい……。だったらその節穴かっぽじてエフィナをよ〜く見やがれってんだ」


ガルドはアドリアンの攻撃を避け、力を溜める。


「あんな純粋でまっすぐな奴、人間でも中々いねえ!!そんな奴を殺すってんなら、ここで寝てろ!!」


ガルドの剣がアドリアンの鎧を破壊し体を斬った。


「どこにこんな力が……」


「誰かを救う為なら、限界を越える事だってできるんだよ」


「ふっ、まるで”勇者”みたいだな……」


アドリアンはそのまま気を失った。


ユナ達の方も決着がつきそうだった。


「俺がこんな雑魚どもに……」


レオンハルトは膝をつきユナ達を睨んでいた。


「あなた達はあなた達の正義を信じて、エフィナを殺そうとしたのかもしれない。それを否定するつもりはないわ」


ユナは腰を低く構えた。


「でも、私達にも正義がある。今回は相容れなかったけど、きっと互いに手を取り合える事もあるかもしれない」


ユナがレオンハルトに突撃する。


「だけど今回は私達が勝たせてもらう!!」


ユナはレオンハルトに蓮撃を浴びせた。


レオンハルトはユナの攻撃に何もできず殴られ続け、壁に叩きつけられ気を失った。


その様子を大人三人が冷や汗を出しながら見ていた。


「あんたんとこの娘さん、どうなってんだ……。俺らよりよっぽど強いんじゃないか?」


「一瞬うちの亡くなった妻が娘にダブったよ……」


「奥様もお強かったのですね……」


「ああ、俺が一度も勝てなかった、唯一の女性だ」


大人達の方に向いてニコッとVサインするユナに大人達は苦笑いしながら手を振った。


これにてエフィナ奪還作戦終了。

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