第55話:迫り来る時間
ユナ、ジュード、フォルス、レインの四人はヴェリシア家、次男レオンハルト・ヴェリシアと対峙していた。
炎の剣を操るレオンハルトを包囲する四人は攻撃のチャンスを探っていた。
「どうした。形勢逆転したんだろ?俺を潰す絶好のチャンスではないか」
レオンハルトが余裕の笑みを浮かべる。
ユナ以外はそれなりの経験を積んでいる強者。
その三人がレオンハルトに飛び込めないでいる。
(この男、隙がねえ……)
フォルスの額から汗が流れる。
(状況は、こちらが有利のはず……)
レインが杖を構える。
(なのに何だ。この圧迫感)
ジュードは剣を握る手に力が入る。
そんな状況にレオンハルトは深くため息をついた。
「せっかくチャンスをやったのに、誰一人来ないか……。ならこちらから行くぞ!!」
レオンハルトはまずユナに向かっい炎剣を振り落とした。
「なっ!!」
ユナは後ろに飛び避けた。
「ユナ!!」
ジュードがユナを助けようとユナの元に向かおうとすると、目の前にレオンハルトが現れ、炎剣を下から振り上げた。
「ぐっ!!」
ジュードの服が焼けたが致命傷は避けた。
フォルスとレインが同時に左右からレオンハルトに攻撃を仕掛けるが二人の視界からレオンハルトが消える。
「所詮、勇者の血が流れてる俺の前ではお前達が何人いようが無意味。有象無象と同じなのだ」
四人は一ヶ所に集まりレオンハルト睨む。
「あの炎の剣をどうにかしないと、あの王子様に一撃与えるのも困難んだぞ」
「分かっています。ですがあの炎の剣、私の魔術も燃やし尽くしてるみたいで……少しでも触れられれば、魔力ごと消滅させられてる」
「そんな危ないので人が斬られたら……。あれ?でも、斬られた人は多少燃えたりするけどほとんどが火傷や切り傷だけですんでませんか?」
ユナの頭に疑問が浮かぶ。
「あの炎はあくまで魔力を燃やすって事か!?俺達は魔力をあまり持たないから、
火傷する程度で済んでるってことか!?」
ジュードがニヤリと笑う
「魔族特化の力って事か。そりゃあそうだよな。あいつらの力は魔族から人間を守るための力」
フォルスが、槍を構え直す。
「私はあなた方よりは警戒せねばなりませんね。なんせ魔力が多いので」
レインが杖を構える。
「少し光明が見えたな。気をつけなければいけないが、必要以上に怯える事はない!!」
「よっしゃああああ!!第2ラウンド開始だ!!」
「私も足を引っ張らないように頑張ります」
「後方支援はお任せを!!」
四人は再びレオンハルトに立ち向かうのだった。
ーエフィナsideー
まだ朝日が昇りきらぬ灰色の空の下、石畳の広場には整列した聖騎士たちの鎧が鈍く光っていた。
空気は張りつめ、人々のざわめきが遠い波のように広がる。
広場中央
巨大な処刑台が築かれ、その階段に向かい、白い布を被せられたひとりの少女がゆっくりと歩いていた。
そのすぐ後ろを歩くのは、黒金の鎧に紅のマントを翻す男。
ディオバルド・ヴェリシア。
聖ヴェリシア王国三勇者血族の一人にして、次期王位を狙う冷徹な男。
「魔族の娘よ。今日お前の死は私にとって最高の祝福になる。陛下の前で魔王の器である貴様の首を落とし、
真に魔王を倒したのはこのディオバルド・ヴェリシアだと世界に知らしめ、無能な兄達を越え、次期国王になる。
光栄に思うがいい」
ディオバルドの話にエフィナは何も反応せず黙って歩いていた。
「ちっ、気色の悪い娘だ。ところで、貴様はいつまで人間の姿でいるつもりだ?」
その言葉にエフィナはピクッと反応した。
「いくら魔族だと分かっていても、人間の姿のままでの処刑は流石の私でも気が引けるのでな」
エフィナは無言を貫く。
「まあ、いい。どうせ処刑の前に全ての魔力を無力化する結界を処刑台に張るから
その時に貴様の醜悪な真の姿を国民どもの前に晒してやる」
それでも無言を貫くエフィナにディオバルドは少々腹が立った。
「そういえば、さっきから所々、煙が上がってるの見えるか?」
エフィナはチラッと顔を上げ町の様子を見た。
「煙が上がっている所は、無謀にも我々に歯向かってる連中が返り討ちにあってる場所だ」
エフィナはディオバルドの顔を見た。
「そうだ。魔族の貴様を助けに来たとかいう頭がおかしくなった阿呆どもだ」
「!!!」
エフィナの表情は嬉しさより悲しみに満ちていた。
(カナトどうして、来たの?しかもこんなにたくさんの人を巻き込んで……。ってわたしが助けてって言っちゃったからだよね)
「ふはははは。いいぞ、その絶望した顔が見たかったのだ。奴らは良い仕事をしてくれた」
「わたしが死ねば、あの人たちは見逃してくれますか?」
「ん?そうだな……。貴様が大人しく死ねば、奴らが戦う理由は失われる。戦意喪失した相手を追い詰めるほどこの国は腐っちゃいない。完全にお咎めなしとはいかないが命は救ってやる」
「分かりました。早く処刑を執行してください」
エフィナの目には覚悟が宿っていた。
(馬鹿が!!逆賊どもを許すわけないだろ。全員死刑だ死刑!!惨たらしく殺し、晒しあげる。この国に逆らえばどうなるかを全世界に知らしめてやる)
ディオバルドはエフィナにバレないように笑いを堪えていた。
エフィナは処刑台の階段を登り始めた。
「エフィナ!!」
背後でエフィナにとって懐かしい声がした。
振り返るとそこにはカナトがいた。
少し更新ペースを落とします。




