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第49話:同盟

ユナは蒼陽連邦とリュミナス以外の各国の要人が信用するに値する人物かを見極めるために真意を確かめる。


「さあ、あなた方”個人”の本心をお聞かせください」


山岳王国の特使が豪快に笑う。


「ガハハハハ!!これだけ大勢の大人を前にして啖呵を切るその度量。気に入ったぜ!!」


ユナはニッコリと酒場の時に見せる営業スマイルを見せる。あの笑顔の時は恐ろしくて父親である親父さんすら近づかない。


「普段から酒場で無骨な冒険者を相手にしているので、あなた方はまだお行儀がいい方で、話しやすいです」


「そうか、そうか。ならまずは名を名乗ろうか。俺はフォルス・グリント。グリント王国の厄介者だ」


グリントって名乗るって事は王族の関係者か……。


「では、フォルスさん。あなたの本心を」


「ふぅ〜。正直快くは思ってない。俺の国も魔族のせいでだいぶ被害にあったからな。最初も嫌々来た。気に入らなければ適当な理由をつけて引き上げるつもりだった。だが、お前達が件の魔族を本気で救いたいって気持ちがひしひしと伝わってきて、親父……陛下の気持ちなんざ関係ねぇ、俺は俺の意思でお前達に手を貸すと決めた」


ユナはフォルスさんの目をまっすぐ見つめる。


「嘘は言ってないですね。分かりました。あなたを信じます」


ユナは酒場での仕事をしてきたせいなのか人の機微を見て、ある程度の嘘を見破れる……らしい。


次はイザルムの特使の方を見るユナ。


「名乗るのが遅れて申し訳ない。私はレイン・イシアと申します。私はイザルム女王の意に異論はありません。イザルム女王のご意向=私の意向だと思ってもらって構いません」


「それを素直に信じろって言うんですか?」


相手を見定めるように見るユナ。


「そう言われても仕方ありません。ですが私はこう言うしか他ありません。申し訳ございませんが」


レインさんは頭を下げる。


しばらくレインさんを観察するように見るユナ。


俺も周りもユナがどう判断するかを固唾を飲んで見守る。


しばらくしてユナはため息をつきながら……。


「フォルスさんよりは信用できませんが、信じましょう。よろしくお願いします。レインさん」


空気が少し和らぎ、俺を含め全員が安堵する。


その後も話を聞き続けたユナは最終的に全員信用できると判断した。


「皆様、訊問するような事をしてしまい申し訳ありませんでした」


ユナが勢いよく頭を下げる。


「気にするな。それだけお前がその魔族の事を大事に思ってるって事だ」


「魔族じゃ無いです!!エフィナです。私はエフィって呼んでますけど」


ユナがぷんぷんと怒ると、フォルスさんは悪い悪いと謝り、そのやり取りに笑いが起こった。


空気が和やかになったところで俺は話を戻した。


「僕達は戦争は望みません。最後の最後まで対話を望みます。もしそれでも対話が実現されない時は……」


俺は俯き拳を握った。


「そうなった時は、またその時考えましょう」


レインさんが俺の肩を掴んで励ましてくれた。


「ありがとうございます。みなさんどうかエフィナを助けるために力をお貸しください」


俺は頭を下げた。


周りから拍手が起こり、俺は嬉しくなった。


ラディウスさんが俺の横に立ち高らかに宣言した。


「ではここに蒼陽連邦同盟を結成する」


周りからは「うおおおおぉおおお」と鬨が一斉に上がった。


一旦、解散し、ラディウスさんと俺とユナ、親父さん、ガルドさん、ミリアさんが残りこれからの事を話し合う。


「とりあえず、人を変え封書を届け、対話に持ち込めるようにしよう。もし、何度も何度も追い返されれば、聖ヴェリシア周辺の村や町も不審に思い、どんどん孤立していくだろ。対話に持ち込めればこちらの要求を言う」


全員頷く。


「処刑日はおそらくガルド殿が推測してくれた二ヶ月後の聖ヴェリシア王の生誕祭。それまでに一応最悪のケースも想定して戦闘準備も進めておくって事でいいだろうか?カナト君」


「はい。よろしくお願いします」


俺達は外に出て今からどうするか考えた。


ガルドさんとミリアさんはここに残り、準備を進めておくと言った。


俺とユナと親父さんは一旦村に戻ることにした。


こうして俺とユナと親父さんは馬車を借りて村に戻った。


村に戻ると、俺達を見つけた村のみんなが駆け寄ってきた。


「大丈夫か!?」「酷い事はされてないか!?」「エフィナお姉ちゃんは?」


と矢継ぎ早に質問されていく。


俺達は一つ一つ答え、村長の家に向かい、これまであった事を簡潔に伝えた。


「噂はここまで伝わっておる。しかし、蒼陽連邦同盟とはかなり大事になってきたな」


「そうですね。でもそれだけ聖ヴェリシアのやり方が気に食わないと思ってる国や町が多いって事ですね。エフィナの事は置いといたとして」


親父さんが話す。


「ヘイトを買いすぎんたんじゃ、あの国は……」


窓から見える空を覗き憂いる村長。


話が終わると俺はユナと親父さんと別れ、久々の我が家に帰った。


家の中は村のみんなが掃除をしていてくれいたみたいで、とても綺麗だった。


久々の自分のベッドに入り、ようやく落ち着けたと感じた。


だが同時にエフィナがいないと実感もしてしまう。


しばらく眠れずベッドに潜っていると……


『カナト、カナト。帰ってきて早々にすまないがまた村外れの石碑まで来てくれないか』


と石碑の声が聞こえた。


俺は石碑の場所に向かうとまた淡い光を放っていた。


『大変な事になったな』


「はい。事と次第によってはあなたの国と完全に敵対する事になるかもしれません」


石碑はしばらく考えてる感じを醸し出していた。


『そうなったら仕方のない事だ。気にするな。だが相手は強大だぞ。もし戦になった時の勝算はあるのか?』


「正直ありません。俺はただの村人。素人に毛の生えた程度の実力しかありません。

他の方々はかなりの手だれだとは思うのですが、勇者の力に及ぶかどうか……」


『それでもやるのであろう?』


「はい!絶対にエフィナを取り戻します」


『ならば、私を連れて行け』


石碑の提案に俺は驚いた。


「連れて行くったって、どうやって、石碑ごと運ぶんですか?」


『エフィナから借りている印の力あるだろう。その印に私を取り込んでくれればいい。必ずやカナト達の役に立ってみせよう』


石碑からの提案に俺は胸が熱くなるのを感じた。

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