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第48話:勇者の血族達とユナの見極め

―聖ヴェリシア王国 王城・白聖議場ー


高い天井、金糸で織られた天幕。


壁面には“初代勇者”が魔族を討ち果たす場面を描いた巨大なタペストリーが掲げられている。


今まさにその下で、王国の運命を左右する会議が開かれていた。


長机の中央には、


聖ヴェリシア王国国王エルゼヴァン・ヴェリシア三世。


その両脇に並ぶのは、王直属の聖騎士団長や教会枢機卿たち、そして勇者の血を継ぐ三兄弟。


空気は静寂というより、重圧に満ちていた。


「蒼陽連邦を筆頭に、七つの国と十数の自治領が“同盟”を結成しました。」


報告したのは宰相リオル。


手にした報告書を差し出しながら、声にはわずかな震えがあった。


「彼らは“対話を拒んだ聖ヴェリシア”を糾弾し、“魔族捕縛の正当性”を疑問視する声明を出しています。」


王の金の瞳が細められる。


「……“疑問視”だと?」


宰相が頷く。


「はい、陛下。彼らは“勇者の国にあるまじき傲慢”と……」


「ほう」


王の隣で声が低く響いた。


発したのは長兄、アドリアン・ヴェリシア。


銀髪をきっちり撫で付け、冷徹な瞳を持つ男。


理性と冷酷の権化のような彼は、実質的に聖ヴェリシアの軍を統括している。


「我々はこれまで世界の安寧のため何百年も数多の魔族を討伐してきた。今更、魔族の一匹を裁くことに異議を喚き散らす、他国の声を聞く必要ない」


アドリアンの言葉に、場が静まり返る。


すぐに次兄レオンハルト・ヴェリシアが重い声で続けた。


「だが兄上、このままでは戦だ。七国の連合など、いくら聖国といえど面倒だぞ。この国は確かに強い。

だが対話を拒否したのは不味かったんじゃないか?“正義”を掲げる者はどちらか、民衆の心は彼らに流れかねない」


「心?」


アドリアンが鼻で笑う。


「民の心など、剣と信仰でいくらでも矯正できよう。それに魔族は悪。これは絶対に覆ることのないこの国の不文律」


レオンハルトは眉を顰めた。


「……だが、もし戦になったらこちらも無傷とはいかないぞ」


「ふん、我らさえ生き残れば、雑兵などいくらでも補充できる」


二人の間に緊張が走る。


だがその一触即発の空気を、低く落ち着いた声が割った。


「やめろ、兄上、兄者。」


末弟、ディオバルド・ヴェリシア。


ディオバルドは片膝をつき、王に向かって恭しく頭を下げた。


「父上。あの村で捕らえた魔族の小娘は、“魔王の力”を宿していると申しておりました」


その言葉に、王の目がわずかに光を帯びた。


「……魔王の力、か」


ディオバルドは静かに続ける。


「はい。我らが討たねば、また二十年前の災厄が繰り返されるでしょう」


アドリアンが顎を撫でながら呟く。


「ならば尚のこと、見せしめが必要だな。各国が何を言おうと、“魔王の血”を恐れぬ我らこそ正義だ」


王が玉座の上から低く問う。


「処刑の準備は?」


「進めております、陛下」


ディオバルドが答える。


「二ヶ月後、処刑は聖都中央広場にて。そして陛下の生誕祭と聖典朗読の後に大々的に群衆の前で行い、我らの威厳を国民に示すべきかと」


王の瞳に満足の色が宿る。


だがその時、宰相が恐る恐る口を挟んだ。


「……陛下、しかし、このまま処刑を強行すれば、“世界すべてを敵に回す”ことになりかねません」


アドリアンが冷ややかに笑う。


「世界が逆賊なのだ。正義を忘れ、我らを疑う愚者どもが何をしようと、この聖ヴェリシアが揺らぐことはない」


王は玉座の肘掛けに指をトントンと叩き、静かに言った。


「愚かなる諸国に思い知らせよ。“勇者の血”が何を意味するかを。そしてその娘を、聖火に捧げるがよい」


ディオバルドが深く頭を下げた。


「御意。必ずや、この手で“魔王の力”を滅ぼしてみせましょう」


ー白聖議場前の回廊ー


会議を終えたディオバルドが一人歩く。


その背後から、レオンハルトの声が響いた。


「……うまく立ち回ったな」


ディオバルドは立ち止まり、振り返らないまま答える。


「何の事やら、私は思った事を口にしたまで……」


レオンハルトは目を細め、静かに呟いた。


「……まあいい。”勇者”の名を汚すことだけはないようにな」


その言葉に、ディオバルドは小さく息を吐いた。


「ふっ……。“勇者”の名など、俺たちはとっくに継いでいない。俺達は“勇者の影”だ。

父上とこの国が望む正義を遂行する、それだけだ。」


そしてディオバルドは再び歩き出す。


遠くで鳴る鐘の音が、まるで“裁きの日”の始まりを告げているようだった。


ーカナトー


蒼陽連邦仮設本部には、フィリア村の俺達を含むラディウスさんやリュミナスの各代表人、封書の事を聞きつけ合流してくれた各国、各町村の上位陣がいた。


全員、先日の封書の受け取り拒否を憤慨し、今にも聖ヴェリシア王国に攻める勢いだった。


「みなさん、僕達の事を思って憤るお気持ちはありがたいですが、戦を仕掛けたら何の意味もありません。

それでは聖ヴェリシア王国と一緒です。僕達の最終目標は平和的にエフィナを取り戻す事です」


俺は全員を見て言った。


「だが、実際門前払いをされたんだろ。どうするつもりなんだ?」


白獅子ギルド長ヴァーリンさんが聞いてきた。


「向こうがこちらの要求を聞いてくれるまで何度も足を運ぶつもりです」


商会長のイェランドさんが首を横に振る。


「それは理想論だよ、カナト君。ごねられてる間に処刑されてしまったら元も子もないんじゃないのか?」


他の上位陣の方々も同じ意見だった。


大司教ホラシウスさんは俺の意見に多少は賛同してくれた。


「私も神に遣える身、無駄な争いは避けたいと言う君の意見に同意はしたい。だがやはりイェランド氏の言うことも頷ける」


それぞれがこうすべきやああすべきと話し始める。


そこにユナが割って入る。


「話し合ってる最中に申し訳ありません。一つ確認したい事がありまして。封書の事を聞きつけて駆けつけてくれた皆様、今回助けるエフィナが魔族だと言う事は認識されていますでしょうか?皆様の話を聞いていると、

聖ヴェリシア王国が封書の受け取り拒否したとだけが広まってしまった感が否めないので確認です」


後に合流した人達はユナの話を聞いてしばらく沈黙する。


俺はそこは伝わってなかったかと落胆していると、海辺の小国ティルナのギルド長が・・・


「認識しているに決まっている。それでもお前達に協力すると決めたのだ!!」


他の上位陣の方々も強く頷いた。


「魔族が脅威なのは間違いない。悪だとも正直今でも思っている」


砂の国イザルムの特使は話す。


「それでは、何故?」


ユナが尋ねる。


「人間の中にも悪はいる。ならば魔族の中にも善がいてもおかしくはないと、我が女王は以前言っておりました。私もそれはそうだと思いそれを証明するために今回ここに馳せ参じました」


続けて山岳王国グリントの特使が話し始めた。


「どちらが善とか悪とか、そんなものその時々で変わるもんだ。今回は直感的に聖ヴェリシア王国に非があると思うと陛下は言ってた。陛下の直感は良くも悪くも大概当たるから俺はお前達についていく。それだけじゃ不服か?」


「そうですね、お二方のお話を聞いているとどちらも双方のトップがそう言うから来ましたというだけ。あなた方

個人の意志が見えません。そんな人達と一緒に行動するのはリスクがあると思います。それはまだお話を聞いてない方々も同じです」


ユナの言葉に空気がピリつく。


「ユナ、それは……」


俺はユナに言い過ぎだと言いに行こうとしたが親父さんに止められた。


「ユナが言う事は間違っちゃいない。魔族を助けるってんだ。そんな変わり者がこんなにいるなんてのが、

そもそもおかしい話なんだ。ここにいる連中は全員、魔王や魔族達が暴れ回ってる時代を知っている。だからこそ見極めなければいけない。本当に心の底からエフィナを助けるために動いてくれる人物達なのか」


俺はユナの様子を見る。ユナは大の大人達にも物怖じせずまっすぐ見据える。


「さあ、あなた方の本心をお聞かせください!!」

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