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封魔のリミットブレイカー〜天才魔導士、剣で世界を救う〜  作者: 暁えいと∞
第12章『水の試練』
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第56話「水の神殿の内部」

透明な水のカーテンをくぐり抜けた瞬間、リュシアたちは思わず息を呑んだ。


目の前に広がるのは、まるで夢の中にいるかのような幻想的な世界だった。


床は透き通った水晶のように透明で、その下を悠然と流れる水が、かすかに青い光を放っている。


壁面には絶え間なく清らかな水が流れ落ち、天井からはきらめく細かな水滴が舞い降り、光を受けて星のように輝いていた。


「…ここは……」


エルナがそっと呟く。


その声もまた、空間に吸い込まれるように柔らかく消えていった。


「建物というより、生き物みたいだな。」


ガルドが低く唸るように言った。


ザックは目を輝かせながら歩みを進め、壁の水流に手をかざした。


「驚異的だ…。これは単なる建築物ではない。おそらく、魔法的な生命体に近い存在だろう。」


まるで水そのものが意志を持って、祠全体を生み出しているかのようだった。


リュシアは、静かに立つ水の守護者ナイアを見つめた。


彼女は微笑み、青白いローブを揺らしながら、さらなる奥へと歩き出す。


「ついてきなさい。」


言葉は優しく、しかしその奥に強い意志が感じられた。


リュシアたちは無言で頷き、彼女のあとに続いた。


***


やがて、神殿の中央に辿り着く。


そこは広く、天井が高く、中央には円形の水盤が設置されていた。


その水面は鏡のように滑らかで、天井の星光を映している。


ナイアは水盤の前で立ち止まり、静かに語り始めた。


「七つの封印の中でも、この『水の祠』は特別な役割を持っている。


風は動きを、炎は力を、そして水は――記憶を司る。」


リュシアたちは、真剣な面持ちで耳を傾けた。


「あなたたちがこれまで修復してきた風と炎の封印は、それぞれの力の均衡を保つためのものだった。


だがこの水の封印は、単に力を封じるのではない。


『記憶』――過去の想い、罪、希望、そして絶望。それら全てを沈め、守るためのものだ。」


ナイアの言葉に、神殿全体が静かに応えるかのように、水の流れがわずかに高鳴った。


「……封印は、やはり弱っているのですか?」


リュシアが尋ねると、ナイアは静かに頷いた。


「ええ。しかし、あなたたちが修復してきた二つの封印により、状況はわずかに好転している。


だが――」


そこで言葉を切り、ナイアは厳しい表情を浮かべた。


「何者かが意図的に、封印の力を乱している痕跡がある。


『アルカード』――その名は、他の守護者たちからも聞かされている。」


空気が緊張で張り詰めた。


リュシアは唇を引き結び、しっかりとナイアを見返す。


「彼の目的は……いったい何なのでしょうか?」


「まだ全ては分からない。だが、彼は封印を破壊するだけでなく、ある種の“目覚め”を望んでいるようだ。」


ナイアは水盤に視線を落とし、そこに揺れる自らの影を見つめた。


そして、いよいよ試練の説明が始まる。


「この水の祠の封印にたどり着くためには、あなたたち自身が試されなければならない。


それが『記憶の水』による試練だ。」


ナイアの言葉に、四人は静かに頷いた。


「『記憶の水』は、あなたたちの心の奥底に隠された真実を映し出す。


それと向き合い、受け入れることができた者だけが、封印の間へ進むことを許される。


もし、真実から目を背ければ――二度とこの世界へ戻ることはできない。」


厳粛な空気が流れる。


それでもリュシアは、迷いなく口を開いた。


「どんな真実でも、私たちは受け入れます。」


その言葉に、ガルド、エルナ、ザックも静かに頷いた。


「よろしい。」


ナイアは微笑み、彼らをさらに奥へと導いた。


やがて辿り着いたのは、青白く輝く大扉の前だった。


扉の先に、それぞれの「記憶の水」が待っている。


「ここから先は、一人ずつしか進めない。」


ナイアが静かに告げる。


「成功すれば、またこの先の封印の間で再会できるだろう。」


リュシアは振り返り、仲間たちの顔を一人一人見た。


そして、力強く言った。


「どんな結果でも、私たちは仲間です。


必ず全員で戻ってきましょう。」


ガルドが深く頷き、エルナが微笑み、ザックが小さく笑った。


順番はリュシアが最初と決めた。


震える心を押さえ、彼女は青白い扉に手を伸ばす。


静かに開いた扉の向こうに広がる、青い光の世界。


リュシアは一度だけ深く息を吸い込み、そして――


迷いなく、その中へと足を踏み入れた。

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