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封魔のリミットブレイカー〜天才魔導士、剣で世界を救う〜  作者: 暁えいと∞
第10章『帰還と再会』
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第50話「アルカードの影」

王都アルカディア――その華やかな街並みの裏に、闇は確かに存在していた。


下層区画、地図にも記されない一角。

そこに、王国の誰もが知らぬもう一つの市場――闇市場があった。


腐敗した空気、ひそひそと交わされる密談。

宝石、禁呪、禁断の薬草――あらゆるものが密売されるこの場所に、

ひときわ異質な存在が座していた。


アルカード。

貴族然とした優雅な佇まい、

白い手袋に覆われた指先で、ワイングラスをくるくると回している。


客たちは、誰も彼に近づこうとはしなかった。

無意識のうちに、彼の周囲を避ける。

それは本能的な「恐怖」だった。


テーブルの上には、一枚の地図。

魔力で作られた七つの封印の座標が、静かに光を放っていた。


アルカードは、グラスを傾け、ひとりごちる。


「――二つ目の封印も、予定通り、活性化した」


その唇には、冷たい微笑が浮かんでいた。


***


やがて、黒衣をまとった男が静かに現れた。

顔を仮面で隠した、例の商人だ。


男は膝をつき、報告する。


「レイン・シャドウブレイドの奪還、失敗しました」


アルカードは微笑みを崩さない。


「……心配するな。予想通りだ」


商人は戸惑った。


「しかし、彼女は重要な……」


「駒に過ぎん」

アルカードは優雅に断言した。


「もはや彼女は用済みだ。

いや、むしろ……彼女が“あちら側”に付いた方が、面白い」


仮面の商人は、沈黙した。


アルカードは続ける。


「――リュシア・フェルディナンド。

彼女が、想定以上に成長している」


商人がうなずく。


「はい。彼女は、封印修復に成功しました。

魔力なしで、七賢者としての役割を果たしました」


アルカードの金色の瞳が、妖しく光る。


「素晴らしい。

彼女が成長すればするほど、我が計画は進む」


テーブル上の地図を指でなぞりながら、静かに言う。


「修復は、同時に活性化を意味する。

封印を強化すればするほど――魔王復活の準備が整うのだ」


商人は戦慄した。


***


その場に、もう一人の影が現れた。

黒いローブに包まれ、顔を隠した謎の協力者。


「次は……水の祠ですね。対策は?」


アルカードは、グラスの赤い液体を一口啜った。


「何もする必要はない」


「……なぜ?」


「彼ら自身が、封印を強化し、結果的に“門”を開く」


「……!」


「我々が手を出す必要などない。

むしろ、時には“手助け”すらしてやろう」


ローブの男は問うた。


「リュシア・フェルディナンド……彼女は危険では?」


アルカードはふっと笑った。


「心配無用。

彼女の力――リミット解除の魔力こそが、鍵となる」


テーブルの上に、一枚の肖像画が置かれた。

そこには、リュシア――あどけない微笑みをたたえた少女の姿。


「彼女が、どこまで成長するか……見ものだ」


アルカードはその肖像画に指を這わせた。


「そして最終的には――彼女の魂すら、主に捧げる」


その言葉は、甘く冷たく、氷のようだった。


グラスを掲げるアルカード。


「――魔王の復活に、祝杯を」


真紅の液体が、静かにきらめいた。

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