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封魔のリミットブレイカー〜天才魔導士、剣で世界を救う〜  作者: 暁えいと∞
第9章『子供の姿の真実』
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第45話「子供の目線」

神殿での学びを一段落させたリュシアとエルナは、


物資補給を兼ねて、山のふもとの村へ向かうことになった。


朝の光に輝く山の風景。


清らかな空気と、遠くに見えるのどかな村。


「ガルドとザックは、神殿に残ってるのよね。」


エルナが微笑む。


リュシアは頷いた。


「うん。レインのことや、次の旅の準備で忙しいからね。」


二人きりの下山道。


子供の姿をしたリュシアは、小さな足で一生懸命ついていく。


「なんだか、普通の子供みたいだね。」


エルナが冗談めかして言うと、リュシアは苦笑した。


「……確かに、見た目だけならね。」


(誰も私が七賢者だなんて思わないだろうな。)


そんなことを考えながら、リュシアは歩を進めた。


***


村に到着すると、広場では子供たちが遊んでいた。


「新しい子だー!」「一緒に遊ぼうよ!」


無邪気な声がリュシアに飛んでくる。


リュシアは戸惑った。


「わ、私……」


後ろからエルナが背中を押す。


「行ってきなさい。


今日は、ただの子供でいればいいのよ。」


リュシアは少しだけためらったが──


やがて、小さな声で答えた。


「……うん。わかった。」


そして子供たちの輪に加わった。


「私はリュシア。よろしくね!」


元気に自己紹介すると、


子供たちは大歓声で迎えてくれた。


***


最初はぎこちなかったリュシアだったが、


鬼ごっこ、かくれんぼ、ボール遊び──


遊びが進むうちに、自然と笑顔になっていった。


「きゃははっ!」


楽しそうな笑い声。


砂まみれになりながら転げ回る。


(こんな風に遊ぶの、いつ以来だろう……)


リュシアはふと思った。


かつての自分は、魔導書院でも孤高だった。


誰よりも高みに立とうと、遊びも、笑いも、遠ざけてきた。


──だけど、今は違う。


今は、心から楽しかった。


エルナが遠くから優しく見守っている。


(エルナ……ありがとう。)


心の中で、そっと呟いた。


***


遊びの中で、リュシアは「子供の目線」の新鮮さに気づく。


地面を這う小さな虫。


空に浮かぶ、面白い形の雲。


摘み取った花の、驚くほど鮮やかな色。


(小さな世界には、こんなにもたくさんの奇跡がある。)


村の子供たちは、なんでもすぐに「どうして?」と聞いてくる。


「なんで雲は動くの?」「どうして花は咲くの?」


リュシアは笑いながら答えた。


「空気の流れで雲は動くんだよ。


花はね、太陽の光を浴びて大きくなるんだ。」


子供たちは目を輝かせた。


「すごい!リュシアって、先生みたい!」


その言葉に、リュシアは顔を赤らめた。


(先生……か。)


悪くない響きだった。


***


夕暮れ、遊び疲れた子供たちと草原に寝転がった。


茜色に染まる空を見上げながら、誰かが聞いた。


「リュシア、大きくなったら何になりたい?」


リュシアは少し考え──


微笑んで答えた。


「立派な魔導士になりたいな。」


すると子供たちは声を揃えた。


「もう十分すごいよー!」


その無邪気な応援に、リュシアは胸がいっぱいになった。


(彼らは私が七賢者だなんて知らない。


それでも、こんなふうに応援してくれる。)


素のままの自分を、受け入れてもらえる幸せ。


リュシアは、静かに心をほどいていった。


***


夕方、村を後にする道すがら。


エルナが優しく尋ねた。


「楽しかった?」


リュシアは、迷いなく頷いた。


「うん、とても。


……久しぶりに、心から笑えた。」


小さな体で、でも力強く答えた。


「私、いつの間にか──


子供時代を忘れていたんだね。」


エルナは優しく微笑む。


「才能に恵まれた人は、早くに大人になりすぎる。


でもね、子供の頃の心も、大切にしていいのよ。」


リュシアは空を見上げた。


「この体には、弱点だけじゃない。


素晴らしいものも、ちゃんとあるんだ。」


そう言って、屈託なく笑った。


──リュシアはまた一歩、前に進んでいた。

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