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封魔のリミットブレイカー〜天才魔導士、剣で世界を救う〜  作者: 暁えいと∞
第9章『子供の姿の真実』
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第44話「神殿での学び」

数日が経ち、リュシアの体はゆっくりと回復していた。


だが──まだ子供の姿のままだ。


「普通なら、24時間以内に戻るはずなのに……」


自室で鏡を見つめながら呟く。


だが、焦りはない。むしろ、その小さな体を受け入れつつある自分に気づいていた。


(今回は魔力を使いすぎた。きっと、その反動が長引いているんだろうな。)


そんな自己分析をしながら、リュシアは神殿内を歩いていた。


すると、ふと目を引かれる扉があった。


重厚な木製の扉。その上には、古代文字で「知の聖域」と刻まれていた。


「ここは……?」


封印技術に関する古文書が眠る、七賢者専用の禁書区画──


以前は立ち入りを許されなかった場所だった。


扉を押すと、そこには圧巻の光景が広がっていた。


天井まで届く巨大な本棚。並ぶ無数の古文書。


静謐な空気に満たされた図書室。


「……すごい。」


目を輝かせるリュシア。そこへ、ザックが現れた。


「やあ、やっぱり君も来ていたか。ここは神殿に伝わる知識の宝庫だ。守護者から、君には自由に閲覧してよいと許可をもらっている。」


リュシアはにっこりと微笑む。


「なら、遠慮なく勉強させてもらおうかな。」


***


二人は並んで机に向かい、膨大な書物を読み漁った。


小さな体では分厚い本をめくるのも一苦労だったが──


リュシアは決して手を止めなかった。


「ふふ、姿は子供でも、頭はちゃんと働くからね。」


「それが君らしいよ。まったく、知識に対する飢えは衰え知らずだな。」


時に討論し、時に笑い合いながら本をめくる。


それはまさに、かつての自分を思い出させる時間だった。


(こうして学ぶこと──それが、私の原点だったんだ。)


***


研究の中で、二人は重要な情報にたどり着く。


「七つの封印は、それぞれ異なる属性を持つ。風、炎、水、土、光、闇、霊──」


ザックがまとめたノートを広げる。


「風と炎の祠はすでに修復済み。次は水の祠だ。」


リュシアは地図を指でなぞった。


「大海に浮かぶ孤島……ここだね。」


「つまり、次は海を越える必要がある。」


「ふふ、航海なんて初めて。少し楽しみかも。」


***


同時に、自身の魔力についても分析を進めていた。


「リミット解除は、封印された魔力を一時的に開放する現象。そして“子供化”はその負荷から身を守る安全装置……」


「でも、今回は戻るまでが長い。原因は明白ね。」


リュシアが言い、ザックが頷く。


「君は、炎の封印修復で限界まで魔力を絞り出した。おそらく、その蓄積された反動が、24時間ルールを越えて影響している。」


「つまり、使いすぎた私が悪いってことね。」


「いや、よくやったと思うよ。だからこそ、しばらくは静養も必要だ。」


リュシアはゆっくりと頷いた。


「うん……でも、心は元気だから。こうして学んでるだけで、落ち着く。」


ザックは彼女の横顔を見つめながら、小さく笑った。


***


その後、神殿の賢者たちが訪れた。


「若き七賢者よ。君の探究心には目を見張るものがある。知識こそ、時に剣よりも強い。」


その言葉を受け、リュシアは深々と頭を下げた。


(たとえ子供の姿でも、私はまだ進める。知識があれば──きっと道は開ける。)


***


夕暮れの図書室で、リュシアとザックは旅支度を始めていた。


「水の祠に行くには、まず港町で船を探さなきゃ。」


「航海の準備は大変だが、未知の魔法や精霊との出会いもあるかもな。」


「ふふ、楽しみにしておこう。……でも、私の体が戻ってくれるといいんだけど。」


「心配しなくても、必ず回復するさ。」


窓の外から射し込む柔らかな陽光が、リュシアの横顔を照らしていた。


「困難でも、立ち止まらずに進む。それが、今の私の道だから。」

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