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封魔のリミットブレイカー〜天才魔導士、剣で世界を救う〜  作者: 暁えいと∞
第8章『封印神殿』
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第39話「心の試練」

三つの試練のうち、二つを突破したリュシアたち。


次に向かうのは──心の試練。


守護者に導かれ、神殿の奥深くにある静かな部屋へ辿り着いた。


そこは、ほのかな光に包まれた、円形の「瞑想室」。


中央には、静かに燃え続ける一つの青い炎。


壁には、精神や魂を象徴する古代の絵が描かれていた。


「ここが心の試練の場だ。」


守護者が厳かに告げた。


「この炎を見つめ、自らの心の奥底と向き合うのだ。」


リュシアは静かに頷いた。


だが──


「エルナも、そばにいてくれませんか?」


リュシアは、振り返り、頼んだ。


エルナは驚き、そして微笑んだ。


「もちろん。リュシアがそれを望むなら。」


守護者は一瞬、厳しい表情を見せたが──やがて頷いた。


「正直に弱さを認めることも、強さだ。許可しよう。」


***


リュシアは、炎の前に座った。


エルナはすぐ隣に、そっと腰を下ろす。


炎をじっと見つめ、呼吸を整える。


次第に、現実の輪郭が薄れていく──


意識が、深く、自分の内面へと沈んでいった。


***


目の前に広がったのは、かつての「アルカディア魔導書院」。


──だが様子が違う。


学生たちが華麗に魔法を披露する中、リュシアだけが──魔法を使えない。


「元・七賢者様だって?」


「もう使い物にならないただの人間だよ。」


「可哀想に、魔法すらないなんて。」


周囲の囁きが、痛烈に心をえぐる。


リュシアは、拳を強く握り締めた。


(違う……私は、私は──)


だが、魔法が出ない。


どんなに祈っても、呪文を唱えても──何も起きなかった。


絶望と自己否定。


身体が、小さく、縮こまっていく。


(……私は、無力だ。)


そう思った、その時──


***


遠くから、柔らかい光が差し込んできた。


「リュシア、聞こえる?あなたは、あなたのままで価値がある。」


エルナの声だった。


その光に触れた瞬間──リュシアの胸の奥が、じんわりと温かくなった。


(エルナ……?)


震える手で、光へと手を伸ばす。


光は優しく、彼女を包み込んだ。


(……私は、一人じゃない。)


***


幻影の中で、もう一人のリュシアが現れた。


「魔法がなければ、君は何もできない。」


内なる声が、冷たく告げる。


だが、リュシアは小さく首を振った。


「違う。私は、知恵がある。経験がある。そして、仲間がいる。」


「魔法に頼らなくても、私は……私のままで、戦える。」


内なるリュシアは、じっと見つめた後──やがて微笑んだ。


「なら、進め。」


そして、幻影は、静かに霧散した。


***


意識が現実に戻った。


リュシアが目を開けると──


中央の炎が、鮮やかな青から、純白へと変わっていた。


守護者が静かに頷いた。


「心の試練、合格だ。」


隣で、エルナが涙ぐみながら微笑んでいた。


「リュシア……よく、頑張ったね。」


リュシアは、そっとエルナの手を握った。


「ありがとう……あなたがいてくれたから、立ち上がれた。」


守護者は、静かに言った。


「心の強さこそ、真の力の源だ。よくぞ己に打ち克ったな。」


リュシアは静かに目を閉じた。


(私は──もう、過去に縛られない。)

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