第38話「力の試練」
リュシアたちは、炎の守護者に導かれて、神殿の訓練場へと向かった。
そこは巨大な円形の闘技場。
壁には、様々な武器が整然と並び、床には過去の激戦を物語るような傷跡が残っている。
修行者たちが静かに稽古をしている光景は、凛とした空気を張り詰めさせていた。
「ここが力の試練の場だ。」
守護者が告げた。
「これから三段階の戦いに挑んでもらう。──剣のみでな。」
リュシアは深く頷いた。
「魔法なしで戦う。それが、この試練のルールですね。」
「その覚悟、確かに見届けよう。」
守護者の視線が厳しく光った。
***
第一の相手として立ちはだかったのは、鍛え抜かれた修行者だった。
剣を構えた男が、静かにリュシアに向かって歩み寄る。
「始め!」
掛け声と同時に、激しい剣戟が交わされた。
リュシアは剣を横薙ぎに振り、相手の突きをかわす。
──だが。
(やっぱり……まだ剣だけじゃ、分が悪い……!)
魔法を使えないリュシアの剣術は、経験では敵わない。
しかし──
「焦るな。基本に忠実にだ。」
ガルドの声が脳裏によみがえる。
リュシアは呼吸を整えた。
無理に攻めず、相手の隙を待つ──
着実に、防御と反撃を繰り返し、徐々にペースを取り戻していく。
そして──
一瞬の隙を突き、相手の剣を打ち払い、勝利を掴んだ。
「第一段階、突破だ。」
守護者が短く宣言した。
***
続いて現れたのは、三人の修行者。
「今度は数で挑む。単純な力だけでは勝てんぞ。」
守護者が冷たく告げる。
リュシアは剣を構えながら、周囲を素早く観察した。
──三人同時に来られたら、防ぎきれない。
だが、彼女はすでに多勢に無勢の戦いを経験していた。
(山賊との戦い、雷魔獣との連携……あの時の教訓を活かす!)
リュシアは地面に転がる火山石と砂に目を留めた。
素早くポーチから小袋を取り出し──
「これなら……!」
砂を地面に撒き、視界を遮る。
咄嗟の奇策に戸惑う修行者たち。
その隙を突いて、一人、また一人と丁寧に仕留めていく。
最後の一人を打ち倒した時、リュシアは深く息をついた。
「第二段階、突破だ。」
守護者が静かに告げた。
「……面白い女だ。」
彼の目に、わずかに興味が宿った。
***
そして、最後の戦いが始まった。
相手は──炎の守護者自身。
「手加減はせん。本気で来い。」
リュシアは剣を両手に構えた。
(この人には──勝てないかもしれない。)
開始と同時に、守護者は鋭く踏み込み、重たい一撃を繰り出してきた。
──重い!
リュシアは必死に受け止めるが、剣ごと弾かれる。
一瞬で間合いを詰められ、蹴り飛ばされる。
(こんなに、圧倒的な差が……!)
それでも──
リュシアは立ち上がった。
***
打ち負かされながらも、リュシアは気づき始めた。
(勝つ必要はない。負けないことが大事なんだ。)
剣を振るうだけではない。
観察し、分析し、適応する。
守護者の動きを読み、力を受け流し、隙を見つけて反撃する──
「私は……ソードメイジだ!」
声を上げ、リュシアは反撃に転じた。
直接打ち合うのではなく、相手の力を利用していく。
そして──
「ここまでだ!」
守護者が剣を引き、試合終了を告げた。
「力の試練、合格。」
リュシアは、荒い息をつきながらも、誇らしげに胸を張った。




