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封魔のリミットブレイカー〜天才魔導士、剣で世界を救う〜  作者: 暁えいと∞
第8章『封印神殿』
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第36話「神殿到着」

空気が変わった。


山の斜面を登るにつれ、緑は徐々に姿を消し、赤黒い岩肌がむき出しになる。


「……熱い。」


リュシアが額の汗をぬぐいながら呟いた。


「この火山は休んではいるが、地下ではマグマが活発に動いている。」


ザックが地図を確認しながら答える。


吹き出す蒸気の柱、焦げたような岩の匂い。


自然の猛威が、ひしひしと肌を刺す。


「炎の祠は、この火山のエネルギーを封印の維持に使っているらしい。」


「なら、ここが封印の要だな。」


ガルドの声には、隠しきれない緊張が滲んでいた。


誰もが口をつぐみ、険しい道を黙々と進んでいった。


***


中腹へ差し掛かる頃、異変は明確になった。


急に温度が下がったかと思えば、地面が小刻みに震える。


溶岩の熱風と冷たい突風が入り混じる、異常な気象現象。


「精霊たちが怯えてる……」


エルナが不安そうに周囲を見回した。


ザックは険しい顔で呟く。


「封印の弱体化による影響だろう。風の祠でも似た現象があったと報告されている。」


リュシアは拳を握りしめた。


「私たちが急がなければ……」


使命の重みが、改めて胸にのしかかる。


***


ようやく視界が開けた。


火山の中腹に、赤褐色の石造りの神殿が建っていた。


柱や壁には炎を象った文様と、複雑な魔法符号が刻まれている。


その存在自体が、圧倒的な力を放っていた。


「ここが……炎の祠。」


リュシアは思わず声を漏らした。


入り口には、常に燃え続ける二本の火柱。


ただならぬ気配が、四人を圧倒する。


「強い魔力を感じる……これが封印の力か。」


ガルドが低く唸った。


誰もが自然に背筋を伸ばし、畏敬の念に包まれる。


***


炎の門の前に、一人の男が立っていた。


年配ながら鍛え抜かれた体躯、


赤い僧衣をまとい、腰には古びた剣を下げている。


その瞳は、炎そのもののように鋭かった。


「来訪者よ、何の用だ。」


低く、威厳に満ちた声が響いた。


リュシアは一歩進み出ると、


七賢者議会の使者であることを告げ、証を差し出した。


守護者はじっと書状と紋章を確認し、厳しく言い放った。


「確かに本物だ。しかし、それだけで祠の奥へ通すことはできぬ。」


「……試練を受け、資格を示せ。」


リュシアは、静かに頷いた。


「──受けます。」


ガルド、エルナ、ザックも、それぞれに覚悟を固める。


![0E270856-BCA0-405D-8C51-0B1EF9D24FDF.png](attachment:384e4be2-626c-41b1-a21b-d61055d2713e:0E270856-BCA0-405D-8C51-0B1EF9D24FDF.png)


***


守護者は炎の門の奥を指し示した。


「この祠は二千年前、魔王の炎を封じるため建てられた。」


「封印は、今、外部からの干渉により弱まりつつある。」


「七つの封印は互いに連動している。一つが崩れれば、すべてが瓦解する。」


重い言葉が、四人の心に響いた。


「封印を修復できるのは、使命を負った者だけだ。」


「汝らが真にその資格を持つか──三つの試練で示してみよ。」


炎の試練。


肉体、心、そして知恵。


リュシアは、剣を握る手に力を込めた。


(必ず──乗り越える。)


使命と、仲間たちの未来のために。

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