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封魔のリミットブレイカー〜天才魔導士、剣で世界を救う〜  作者: 暁えいと∞
第7章『旅路の試練』
32/56

第32話「山岳路での遭遇」

険しい山道に足を踏み入れたリュシアたちは、緊張感を強めていた。


平原から山岳地帯へと景色は一変し、


切り立った崖と細く続く山道が、旅の難易度を一気に跳ね上げる。


「……気をつけろ。ここからは、自然そのものが敵だ。」


先頭を歩くガルドが低く呟く。


ザックは地図を見つめ、エルナは精霊の気配を探る。


リュシアもまた、足場を慎重に確かめながら進んでいた。


遠くには、目指す火山のシルエットが見える。


──あそこに、「炎の祠」がある。


リュシアは心の中で、静かに闘志を燃やしていた。


***


昼下がり、険しい崖沿いの細道にさしかかる。


一歩踏み外せば、谷底へ真っ逆さまだ。


エルナの頬がこわばる。


「風が……強いね。」


「精霊たちも騒いでる。足元、気をつけて。」


リュシアはエルナに頷きかけ、自分のマントを押さえた。


ザックが地図を見ながら進路を指示する。


「この先の小道を抜ければ、近道になるはずだ。」


ガルドが険しい表情で周囲を見渡した。


「──だが、近道は危険も大きい。覚悟して進め。」


四人は互いに無言で頷き合い、前進した。


***


休憩のため、開けた岩場に出たその時だった。


「動くな。」


四方から、声が響いた。


現れたのは十数人の山賊たち。


粗末な鎧に、刃こぼれした剣を手にしている。


頭領らしき男が、不敵に笑った。


「へっへ、ずいぶんいい装備じゃねぇか。


荷物を置いていきな、命が惜しけりゃな!」


リュシアは一歩前に出る。


「私たちは、七賢者議会の使者だ。


手を出せば、王国全土に指名手配されることになる。」


──威厳ある口調で告げた。


だが、山賊たちは笑っただけだった。


「七賢者だぁ?……今さら誰も怖がりゃしねぇよ!」


「こんな山奥じゃ、法律も正義も通用しねぇ!」


リュシアは、内心で歯噛みした。


(──ここは、力が支配する場所だ。)


ガルドが剣を引き抜き、低く構える。


「……仕方ない。全員、抜刀しろ。」


リュシアも剣を抜き、エルナは魔法の詠唱に入り、ザックは小型魔法具を起動させた。


──交戦開始。


***


最初に動いたのはリュシアだった。


一人、山賊たちの懐に飛び込み、華麗な剣技で切り払う。


(……私一人で、片をつける!)


かつての「天才」と呼ばれた誇りが、無意識に彼女を突き動かしていた。


だが──


「リュシア、待て!単独行動は──!」


ガルドの叫びも間に合わなかった。


リュシアが突出したことで、連携が崩れ、


後方支援のエルナも、守りの手薄になった。


山賊たちの刃が、エルナへと迫る。


「エルナ、伏せろ!」


ガルドが間一髪、盾で受け止めた。


ザックも必死に防御魔法を展開する。


──リュシアの独断が、全体の危機を招いていた。


***


リュシアは、はっと気づく。


(……違う。これは、私一人の戦いじゃない。)


一度後退し、仲間たちと合流する。


「ごめん、私──!」


「今は言い訳無用だ!」


ガルドが鋭く叱責した。


「ここから巻き返すぞ。指示に従え、リーダー!」


リュシアはぐっと拳を握り、頷いた。


「──了解。」


短い指示が飛ぶ。


「ガルド、前衛で壁を作れ!エルナ、支援魔法で援護!ザック、側面から魔法罠を仕掛けろ!」


自らは中央から動き、連携の核となる。


四人の動きは、見違えるように噛み合った。


***


エルナの風精霊魔法が、山賊たちの視界を遮る。


ザックの仕掛けた魔法罠が、足元を爆ぜ、山賊たちを混乱させる。


その隙をついて、リュシアとガルドが同時に突撃。


──完璧な連携。


劣勢だった山賊たちは、次々と倒れていった。


最後に、頭領が呻きながら剣を落とす。


「こんな……子供たちに……!」


捨て台詞を吐き、逃げていった。


リュシアは剣を収め、深く息を吐いた。


***


勝利の余韻の中、リュシアは、ガルドに頭を下げた。


「……すまない。」


「気づけたなら、それでいい。」


ガルドはにやりと笑った。


エルナもザックも、微笑んでいた。


「仲間を信じろ。」


「一人じゃないよ、リュシア。」


「……ああ。」


リュシアの胸に、じんわりと温かいものが広がった。


──こうして、四人はさらに絆を深め、


次なる旅路へと、力強く歩み出すのだった。

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