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封魔のリミットブレイカー〜天才魔導士、剣で世界を救う〜  作者: 暁えいと∞
第7章『旅路の試練』
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第31話「旅立ちと絆」

朝の光が王都アルカディアの背後から差し込み、街道を黄金色に染め上げていた。


リュシアたち四人は、街道を歩き始めていた。


目指すは──遠くそびえる山脈、その中腹にあるという「炎の祠」。


まだ旅は始まったばかり。


だが、王都を離れた今、彼らには自らの力で未来を切り開くしかなかった。


「……あれが目的地だ。」


ザックが地図を広げ、遠くに見える山を指差す。


雪をかぶった高峰の中、一本だけ赤茶けた煙を吐く山──それが火山だった。


「火山の中腹に、古代の祠があると言われています。」


「そこに、封印の一つ……"炎の封印"が眠っているはずです。」


リュシアは小さく頷き、目を細めた。


「険しい旅になりそうだな。」


ガルドが腰の剣を撫でながら言う。


「でも、楽しみだよ!」


エルナが無邪気に笑い、隣を歩くリュシアの袖を引いた。


リュシアも、つられて微笑む。


──そうだ。


一人ではない。


今の自分には、共に歩む仲間がいる。


それが、何よりも心強かった。


***


数日後。


日が落ち、夜の闇が世界を包み込む。


草原の一角で野営した四人は、焚き火を囲んで温かい食事を取っていた。


ぱちぱちと薪が爆ぜる音だけが、静かな夜に響く。


やがて──


「……少し、昔話でもするか。」


ガルドが口を開いた。


「お前たちに話しておきたいことがある。」


リュシア、エルナ、ザックが顔を上げる。


「俺は……かつて、アルカディア王国の近衛騎士団長だった。」


静かながらも重みのある言葉だった。


リュシアたちは息を呑む。


「王国に仕えることが、誇りだった。だが──護るべきものを護れなかった。」


火が揺れる。


「……そのせいで、多くの部下を失った。


王国を、王女様を……護りきれなかったんだ。」


沈黙。


やがてガルドは続けた。


「だから俺は剣を置き、放浪の旅に出た。」


目を伏せるその姿に、リュシアは強い感情を覚えた。


だが──


「今、ようやく分かった。」


ガルドはリュシアたちを見回す。


「護るべきものは、過去じゃない。今、共にいる仲間だ。」


その言葉に、リュシアの胸が熱くなるのを感じた。


「……ありがとう、ガルド。」


自然と、そんな言葉がこぼれた。


焚き火の炎が揺れる。


誰からともなく、次はエルナが口を開いた。


「私も、少し話してもいいかな。」


リュシアとガルド、ザックが静かに頷く。


「……私は、精霊族の父と、人間の母の間に生まれたの。」


淡々とした口調だったが、その瞳の奥には、消えない寂しさがあった。


「幼い頃、父は精霊の森に帰ってしまった。


母は私を一人で育ててくれたけど……村では、ずっと疎まれていた。」


小さな肩が震える。


リュシアはそっと、隣に座るエルナの手に触れた。


エルナは微笑み、続ける。


「でも、ある日気づいたんだ。


私には、精霊の声が聞こえるって。」


──精霊たちは、差別もしないし、蔑みもしない。


ただ、エルナを「友達」として受け入れてくれた。


「……精霊たちと話す時間だけが、私の救いだった。」


そう言って、エルナは空を見上げた。


「でも──リュシアたちに会って、初めて思ったの。」


「人間の世界でも、ちゃんと"居場所"を作れるんだって。」


リュシアは、胸がいっぱいになった。


言葉はなかった。


だが、その手のぬくもりは、エルナにしっかりと伝わっていた。


***


今度は、ザックが手帳を閉じた。


「僕も……本当のことを話すよ。」


焚き火の光に、眼鏡の奥の瞳がきらめく。


「僕がリュシアを追ってきた理由は、七賢者議会からの正式な命令だった。」


リュシアは一瞬、表情を曇らせた。


ザックは言葉を続ける。


「魔力封印の現象、リミット解除の現象……


すべて前例のない事態だった。


だから、詳細に観察して、記録するように命じられていたんだ。」


──つまり、自分は「研究対象」だった。


リュシアの胸に、かすかな怒りが湧いた。


だが──


「でも今は違う。」


ザックははっきりと、リュシアの目を見て言った。


「君は、単なる"対象"なんかじゃない。


仲間だよ。大切な──。」


少し頬を赤らめながら、ザックは言葉を結んだ。


リュシアは黙っていたが、やがて小さく、吐息をついた。


「……正直に言ってくれて、ありがとう。」


そして、柔らかく微笑む。


「私も、信じたい。今のあなたを。」


その一言で、ザックの顔がぱっと明るくなった。


***


三人が己の過去を語った今。


焚き火の前に座るリュシアにも、自然と順番が回ってきた。


「……私も話すよ。」


焚き火を見つめたまま、リュシアは口を開いた。


「最初にこの旅に出たとき──


私は、自分の力を取り戻すことだけが目的だった。」


ぎゅっと、膝を抱える。


「力さえ取り戻せば、また認められる。


また……"あの頃の自分"に戻れるって……そう信じてた。」


かすかな自嘲。


「でも違ったんだ。


力を失ったことで、私は……本当に、大切なものを見つけた。」


──仲間。


──信頼。


──未来を守る意志。


「失ったものばかり見ていたけど、今は違う。


私は、今の私で、戦いたい。」


リュシアの声は震えていなかった。


その瞳には、確かな光が宿っていた。


「……リュシア。」


エルナがそっと肩に触れる。


「あなたは、ちゃんと変わったよ。」


ガルドもうなずき、ザックは「最高の研究対象だ」とにやりと笑った。


四人の間に、静かな絆が芽生えていた。


火はなおも燃え続け、


夜空には、無数の星が瞬いていた。


──そして、四人は改めて誓った。


「必ず、炎の祠の試練を乗り越えよう。」


リュシアが、拳を握る。


「──ああ。」


「もちろんだよ!」


「記録にも、ちゃんと残すからね!」


それぞれの思いを胸に、四人は、未来を見据えた。


次なる試練へと──。


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