第25話「七つの封印と世界の危機」
リュシアたちがさらに探索を進めると、書庫の奥に鎮座する巨大な壁画が目に留まった。
そこには、七つの輝く宝石のような紋章が刻まれ、それぞれに違う色の光を宿していた。
ザックが興奮気味に呟く。
「これは……七つの封印の図か?」
リュシアは壁画をじっと見つめ、唇を引き結んだ。
「風、炎、水、土、光、闇、霊……」
それぞれの封印には、対応する属性と、地図上の位置が記されていた。
中央には、黒い渦――かつて魔王が封じられた『混沌の地』を示す紋様。
そして細かい古代文字が添えられている。
> 『七つの封印、これを護ること、すなわち世界を護ることなり。
>
>
> 封印の力、ひとたび弱まれば、混沌再び目覚めん。』
>
ザックが読み上げると、重苦しい沈黙が落ちた。
エルナが囁く。
「つまり……この封印が弱まれば、魔王が復活するということ?」
リュシアは頷き、続けた。
「そして、今、何かがこの封印を蝕んでいる。」
***
壁画の地図を改めて見直すと、最も近い封印――『炎の祠』の場所が特定できた。
リュシアが指を差す。
「ここだ。王都から南東、黒炎山脈の中腹にある。」
ガルドが腕を組んで言った。
「封印を護るべき存在がいるか、あるいは……すでに何者かに狙われているか。」
ザックも真剣な顔になる。
「もし封印が破られれば、世界の均衡が崩れる。
その影響は、僕たちの想像を超えるかもしれない。」
リュシアは、強く拳を握った。
(もはや、私自身の問題だけじゃない――)
(これは、世界全体に関わる問題なんだ。)
「行こう。」
リュシアはきっぱりと言った。
「炎の祠へ。封印を、護るために。」
***
一行は、書庫で必要な情報をすべて記録し、準備を整えた。
リュシアは最後に、巨大な書架を振り返った。
(知識は、力だ。)
(でも、力は何のために使うべきか――私は、もう知っている。)
仲間たちと視線を交わす。
ガルドが静かにうなずき、エルナが優しく微笑み、ザックが真剣な瞳で頷いた。
四人は、新たな旅路へと踏み出すため、忘れられた書庫を後にした。
夜空には無数の星が輝き、彼らを静かに見守っていた。




