第20話「赤目のダゴとの決戦」
彼は、別の通路から回り込み、ダゴの背後に迫っていた。
そして――一撃。
重い盾をダゴの背中に叩きつけた。
「ぐっ!」
ダゴの動きが鈍る。
「今よ!」
リュシアが駆け出し、足元に斬りかかる。
エルナも精霊の風を呼び、ダゴの目を一瞬眩ませた。
ダゴは巨体を揺らし、必死に応戦した。
だが、三人の連携は完璧だった。
ガルドが防御を引き受け、エルナが支援し、リュシアが隙を突く。
一度、二度、三度。
小さな剣でも、確実にダメージを積み重ねる。
「このガキがぁああ!」
ダゴが最後の力を振り絞って、リュシアに渾身の一撃を放った。
だが――リュシアはそれを読んでいた。
素早く飛び退き、瓦礫の影に身を隠す。
そして、倒壊しかけた天井の柱へと目を向けた。
(あれを……落とす!)
リュシアは剣を振り上げ、柱の基部を斬りつけた。
ガキン!と音が響き、ギシギシと軋み始める天井。
「な、なに……!?」
ダゴが驚いた顔を向けた瞬間、
轟音とともに瓦礫が落下した。
巨体のダゴは、避けきれなかった。
「ぐあああああっ!」
廃墟の瓦礫に埋もれ、ダゴは動かなくなった。
静寂が訪れた。
埃の中で、リュシアは肩で息をしながら剣を下ろす。
ガルドとエルナも、慎重に周囲を確認した。
「……終わったな」
ガルドが呟いた。
「うん」
リュシアは、小さな手で剣を握り直しながら答えた。
宝箱に近づき、中を確かめる。
そこには――王家の印璽が、確かに収められていた。
精緻な金細工、王家の紋章。
「これで……情報が手に入る」
リュシアは小さく呟き、印璽をそっと懐に収めた。
三人は無事、廃墟を脱出した。
夜明け前、まだ薄暗い森を抜けながら。
「お前、よくやったな」
ガルドがぼそりと言った。
リュシアは一瞬、きょとんとした顔をしたが――すぐに笑った。
「ふふ……当然よ」
エルナも微笑んだ。
「リュシアは、小さいけど強い」
「……小さい、は余計よ」
頬を膨らませながらも、リュシアは心から嬉しかった。
今の自分は、たしかに弱い。
でも、もう一人じゃない。
仲間と一緒に、前に進める。
(私は――まだ、戦える)
リュシアは、胸の中でそっとそう誓った。




