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封魔のリミットブレイカー〜天才魔導士、剣で世界を救う〜  作者: 暁えいと∞
第4章『小さな体の大きな冒険』
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第19話「危険な依頼」

夜明け前、リュシアたちは王都を離れた。

目指すは、王都近郊の廃城跡――今や盗賊団「赤目のダゴ」がアジトとしている場所だった。


マルコからの依頼、「王家の印璽」を取り戻すために。


「潜入する以上、正面から突っ込むのは無謀だ」


ガルドが冷静に言う。

廃墟を指差しながら、簡単な見取り図を土に描いた。


「南壁は崩れている。あそこから忍び込めるだろう。俺が陽動する間に、リュシアとエルナは中へ」


「了解」


リュシアは頷いた。

子供の体でも、今や彼女は「チーム」の一員だった。


エルナも小さく頷き、背中の薬草袋をぎゅっと握った。


「無理はしないこと。目的は印璽の奪還だ」


ガルドの厳しい声に、二人は真剣な表情で答えた。


廃城は、かつて小貴族が住んでいたという石造りの砦だった。

今は半ば崩れ、あちこちに穴が空き、蔦が絡みついている。


見張りの盗賊たちが、だらしなく警備しているのが遠目にもわかった。


「……あんな連中に国家の印璽を持たせるなんて」


リュシアは苦い顔をした。


国家の誇りを、汚す者たち。

かつて七賢者だった誇りが、胸の奥で静かに燃えた。


ガルドがそっと立ち上がり、岩陰から身を乗り出した。


そして――わざと大きく足音を立てて走り出した。


「侵入者だ!」


盗賊たちが一斉に叫び、そちらに気を取られる。


今だ。


リュシアとエルナは、崩れた南壁の隙間からすばやく中に滑り込んだ。


城内は暗く、湿った空気が漂っていた。


石畳には雑に捨てられた食器や酒瓶が転がっている。


油断しているのが丸わかりだ。


リュシアは小さな体を活かし、物陰から物陰へ素早く移動した。

エルナも慎重に後を追う。


「印璽は宝物庫にあるはずよ」


リュシアは囁いた。

記憶を頼りに、かつての貴族の館の構造を思い出す。


「この階段を下りた先だと思う」


二人は気配を殺して進んだ。


だが、運命はそう甘くない。


階段を下りた先で、二人は盗賊たちに発見されてしまった。


「なんだ、ガキじゃねぇか!?」


「いや、こいつら、ただの子供じゃねえ!」


剣を抜く盗賊たち。


リュシアは剣を抜き、小さな体で構えた。


「エルナ、後ろに!」


エルナが後ろに下がり、精霊魔法の準備に入る。


リュシアは一歩踏み出す。

たとえ子供の体でも、剣の心得は確実に積み重ねてきた。


最初の盗賊が斬りかかってくる。

リュシアは小さな体を活かして、すり抜け、剣の柄で相手の脇腹を打った。


盗賊が呻き、膝をつく。


「次!」


すかさず二人目が襲いかかるが、エルナの放った風の精霊魔法が敵の視界を奪った。


その隙にリュシアが回り込み、剣で脛を蹴り飛ばす。


「小娘が!」


「なめるな!」


リュシアの叫びと共に、二人目も倒れた。


「よし、進むわよ!」


リュシアは汗を拭い、再び前へ進んだ。


宝物庫の扉は重く、厳重な錠で閉ざされていた。

だが――盗賊たちの雑さを読んでいたリュシアは、小さな隙間を突いてピッキングする。


カチリ、と錠が外れる音。


扉の向こう、石造りの宝物庫があった。


そして――中央の台座に、豪華な金細工の箱。


その中に、王家の印璽があった。


「見つけた……!」


リュシアが駆け寄ろうとしたその瞬間――。


「おっと、そこまでだ」


低い声が響いた。


振り向けば、大柄な男が立っていた。

片目に深い傷跡――盗賊団首領「赤目のダゴ」。


「王家の印璽を狙うとは、大したガキだ。……だがな、ここで死んでもらう!」


ダゴが剣を抜き、襲いかかってくる。

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