表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封魔のリミットブレイカー〜天才魔導士、剣で世界を救う〜  作者: 暁えいと∞
第3章『リミット解除、そして…』
16/56

第16話「元の姿に戻るとき」

森の中を抜け、人気のない小高い丘に三人は野営を張った。


満天の星が瞬き、夜の空気は肌寒い。


焚き火を囲み、ガルドが静かに見張りを続け、

エルナは小さな鍋で温かいスープを煮ていた。


リュシアは、小さな体を毛布に包み、焚き火のそばに座っていた。


疲れ果てた身体。


だが、心の奥には、確かな充実感があった。


(私は……役に立てた)


(子供の姿でも、ちゃんと戦えた……)


安堵と誇りが、胸に広がっていた。


***


その夜。


リュシアの体に、異変が起こった。


「……う……熱い……」


うなされるような声を上げ、毛布の中でもがく。


額には玉のような汗。


手足の先が、じんわりと熱を帯び、ほのかに光り始めた。


エルナが、驚いて駆け寄る。


「リュシア!?」


ガルドもすぐに駆け寄った。


リュシアの小さな体は、仄青い光に包まれていた。


まるで、何かが目覚めるかのように。


エルナは目を閉じ、精霊たちに問いかける。


「……これは、精霊の力?」


精霊たちは、微かに答えた。


「変化は、循環する。夜明けと共に」


エルナは、そっとリュシアの肩に手を置いた。


「大丈夫。きっと、元に戻る」


ガルドも静かに言った。


「彼女は、強い。必ず自分の力で乗り越える」


二人は、そっと見守った。


焚き火の光と、リュシアを包む青白い光が、夜の闇を照らしていた。


***


翌朝——


リュシアは、静かに目を覚ました。


朝日が、テントの布越しに柔らかく差し込んでいる。


リュシアは、ぼんやりと体を起こした。


そして——


気づいた。


(……目線が高い?)


手を見る。


小さな手ではなかった。


15歳の、元の手だった。


リュシアは、慌てて立ち上がった。


「戻った……!」


ガルドとエルナも、にっこりと微笑んだ。


「おかえり、リュシア」


「よかった……!」


リュシアは、思わず拳を握りしめた。


(元に……元に戻れた……!)


感激で胸がいっぱいになった。


***


食事を取りながら、三人で話し合った。


「どうやら、リミット解除の反動で子供化するのは、24時間限定らしいな」


ガルドが言った。


エルナも頷く。


「精霊たちも言ってた。力の循環が整えば、元に戻るって」


リュシアは、真剣な顔で頷いた。


「つまり——」


「封印された魔力をリミット解除で無理に引き出すと、

その反動で肉体が『安全な形』に縮小される。

でも、エネルギーが安定すれば、元に戻る」


彼女は、魔導士らしく論理的にまとめた。


そして、深く息を吐いた。


「つまり、次にまたリミット解除を使えば、また子供になる」


ガルドは、腕を組んで言った。


「代償があるってわけだな」


リュシアは、少し考えた。


(代償……)


(でも——)


「それでも……」


リュシアは、小さな声で、でも力強く言った。


「必要な時には、使う。

仲間を守るためなら、何度でも」


エルナが、そっと微笑んだ。


「私たちがいる。子供の姿でも、大丈夫だよ」


ガルドも、無言で頷いた。


リュシアは、目を閉じて、心に誓った。


(私は、もう一人じゃない)


(仲間と共に、この世界を救う)


(たとえ、どんな代償があったとしても——)


朝日が、彼女たちの旅立ちを祝福するかのように、眩しく輝いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ