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封魔のリミットブレイカー〜天才魔導士、剣で世界を救う〜  作者: 暁えいと∞
第3章『リミット解除、そして…』
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第15話「追跡者との対決」

岩陰から戦いを見守るリュシアの心は、激しく揺れていた。


(何か……何かできるはずだ)


(私が、ただ隠れているだけなんて……!)


小さな体。


弱い力。


でも——頭脳だけは、失っていない。


リュシアは深く息を吸い込み、状況を冷静に分析し始めた。


(敵は七人。ガルドとエルナだけでは防ぎきれない)


(しかも、リーダー格の魔族は指示を出して連携を取っている……!)


ならば——


(リーダーを潰せば、隊列は崩れる!)


作戦は決まった。


問題は、どうやってリーダーに接近するか。


普通なら、気づかれて即座に排除されるだろう。


しかし今、リュシアは——子供の姿。


(小さい私なら、敵の視界をすり抜けられる)


(見落とされる確率が、飛躍的に高い!)


リュシアは、岩陰からそっと身を滑らせた。


誰にも気づかれないように、草むらを這いながら前進する。


小さな体、軽い足取り。


敵たちは、ガルドとエルナの方に集中しており、リュシアの存在など眼中にない。


(今だ……!)


リーダー格の背後へ回り込む。


心臓が高鳴る。

冷たい汗が首筋を流れる。


(距離、三メートル……二メートル……)


リーダーの腰には、小型の短剣が見えた。


あれなら、小さな力でも奪える!


リュシアは、地面を蹴った。


「っ——!」


跳びかかる。


手を伸ばし、リーダーの腰から短剣を抜き取った!


「何!?」


リーダーが驚き、振り向く。


だが、その一瞬の隙——


リュシアは、短剣を逆手に持ち替え、思いきり敵の太ももを突き刺した。


「ぐっ……!」


リーダーの膝が崩れる。


そこへ、すかさずガルドが駆け寄った。


「今だっ!」


鋭い突きを喰らわせ、リーダーを地面に叩き伏せた。


エルナの精霊魔法が、残った魔族たちを牽制する。


隊列が崩れた魔族たちは、統率を失い、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。


***


リュシアは、地面に尻餅をついたまま、呼吸を整えていた。


小さな胸が上下し、全身から汗が噴き出す。


だが——


(やった……!)


(私にも、できた……!)


その時。


大きな手が、リュシアの頭を優しく撫でた。


「よくやったな」


ガルドだった。


その言葉に、リュシアは胸がいっぱいになった。


エルナも、駆け寄ってきて微笑んだ。


「すごかったよ、リュシア。あの隙を突けたのは、君だけだった」


リュシアは、少し照れくさそうに顔を背けた。


「当然だ。私は、七賢者だからな」


小さな声で、でも誇りを込めてそう呟いた。


***


追撃を警戒しつつ、三人はその場を離れた。


歩きながら、状況を整理する。


「なぜ、あの連中は私を狙った?」


リュシアの問いに、ガルドが答える。


「リミット解除。封印された力を発動したことで、敵に目をつけられたんだろう」


「……厄介だな」


エルナも口を挟む。


「精霊たちも、リュシアの力に強く反応していた。

あれは、ただの魔力じゃない。何か、もっと深いものが眠っている」


リュシアは、胸に手を当てた。


(封印された、私の力……)


(それを狙う者たちがいる……)


(なら、私は……もっと強くならなきゃ)


静かに、しかし確かな決意が胸に宿る。


「急ごう」


リュシアは言った。


「王都へ。魔導書院へ。

私自身の力を、取り戻すために」


ガルドも、エルナも、力強く頷いた。


そして三人は、夜の森を抜け、再び王都を目指して歩き出した。

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