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封魔のリミットブレイカー〜天才魔導士、剣で世界を救う〜  作者: 暁えいと∞
第2章『新たな仲間』
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第10話「魔物の巣窟」

森の北端、古びた洞窟の前に、リュシアたちは立っていた。


入り口はぽっかりと口を開け、冷たい空気と、微かな瘴気が漂っている。


枯れた木々、腐った草、濁った空気。


自然の秩序が乱れているのを、リュシアも直感で感じた。


「……ここだな」


ガルドが低く呟く。


エルナは小さく震えながらも、毅然と頷いた。


「この奥に、闇がいる」


リュシアは剣を握り直し、深く息を吸った。


「行こう」


***


洞窟内部は、ほの暗かった。


足元には、湿った苔と不自然に広がる結晶。

壁には、ところどころに古代魔法の文様が刻まれている。


「これは……」


リュシアが指でなぞる。


(召喚魔法の痕跡……?)


何かを、この地に呼び出そうとした形跡。


それが何なのかは、まだわからない。


「気をつけろ。何か来るぞ」


ガルドが剣を抜いた瞬間——


ギャアアアアッ!!


獣のような叫び声が洞窟に響き渡った。


次の瞬間、薄闇から無数の影が飛び出してくる。


——下級魔族たち。

猿のような小柄な体躯に、鋭い爪と牙。

目を血走らせ、獰猛に襲いかかってきた。


「来るぞ!」


ガルドが盾を構え、リュシアの前に立つ。


リュシアも剣を抜き、構えた。

エルナは後方で精霊と交信し、支援の準備を始める。


「リュシア、俺が前で受ける!お前は側面を狙え!」


ガルドの指示が飛ぶ。


「了解!」


リュシアは、剣を構え、横に回り込んだ。


ガルドが魔族たちを受け止め、リュシアが横合いから一体ずつ切り崩す。

エルナは後方から、小さな風の精霊を呼び出して支援魔法を飛ばす。


最初は、うまくいっていた。


だが——


リュシアは、気づかないうちに前に出すぎた。


(一気に決める!)


そう思った次の瞬間、背後から別の魔族が飛びかかってきた。


「危ない!」


ガルドの叫びと同時に、盾が間に割り込む。


——ガンッ!


激しい衝撃。

リュシアは、尻もちをつきながらも、何とか体勢を立て直した。


「……す、すまない!」


歯を食いしばりながら叫ぶ。


ガルドは険しい顔で言った。


「一人で突っ込むな!」


リュシアは、胸を突かれたような思いだった。


(……まただ)


一人で戦う癖。

魔導士時代、常に最前線に立ち、仲間を守る立場だった。


だから、無意識に、一人で全部やろうとしてしまう。


だが今は違う。


今は、剣士だ。

そして、仲間がいる。


リュシアは、深く呼吸を整えた。


「……わかった。もう、無茶はしない」


ガルドは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに頷いた。


「なら、もう一度仕切り直すぞ」


リュシアは、剣を握り直し、ガルドと並んで立った。


エルナも後方から、そっと支援魔法を重ねる。


魔族たちが再び襲いかかってきた。


だが今度は、三人が連携して動いた。


ガルドが正面で受け、リュシアが横から一体ずつ仕留める。

エルナが、風の刃で敵の動きを封じる。


無駄な動きは一切ない。

誰かが突出すれば、誰かがカバーする。

互いに支え合いながら、少しずつ、敵を削っていく。


(これが……仲間と戦うってことなんだ)


リュシアは、剣を振るいながら確かに感じていた。


一人では届かない力。

一人では守れない未来。


だから、仲間がいる。


やがて、最後の魔族が絶命し、洞窟に静寂が戻った。


リュシアは、剣を地面について、肩で息をした。


ガルドが近づき、ぽん、と彼女の頭に手を置いた。


「……悪くない」


リュシアは、顔を上げた。


「……ほんとに?」


「ああ。だが、まだまだだ」


ガルドは、苦笑しながら言った。


エルナも、ふわりと微笑んだ。


「一緒に、強くなろうね」


リュシアは、小さく笑った。


(——ああ)


(私は、もう、一人じゃない)


***


洞窟の奥へと進む三人。


空気はさらに冷たく、重くなっていく。


そして——

巨大な空間にたどり着いた。


中央には、黒ずんだ石の祭壇。

周囲には、血の跡。

崩れた蝋燭と、ひび割れた魔法陣。


リュシアは、剣を握りしめた。


「これは……召喚儀式の痕跡だ」


「まだ何か、いるかもしれん」


ガルドが剣を構える。


エルナは、震える声で告げた。


「精霊たちが……怯えてる。もっと奥に、闇がいる……!」


三人は、互いに頷き合った。


そして、さらなる深部へと足を踏み入れる。


その先に待つのは、かつてない試練だった。

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