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エピソード1 就職先は妖怪専門の業務代行事務所!?

RPGにつかうシナリオを意識して作りました。 だけど、RPGを好む会社さんは現在少ないらしいですが、

もし、このシナリオを使いたい! この作者使えそう! ってなったらどうかこれ使ってください。

 連絡待ってます。 詳細は本小説の後書きをご覧ください。




 こんにちは、私の名前は雨音巫花(あまねみか)。 先日大学を卒業し、現在は就職先へ向かっている最中で、絶賛バスに乗っています。 


 就職といっても、私の家は神社をやっており、高校生の時に起きたとある出来事がきっかけで、それまでは嫌いだった家業の神社を継ごうと決めていたのですが、大学生活を満喫している中、周りの友達の影響でやっぱり一回は社会にでといた方がいいと、卒業間近辺りの季節にやっと気付き、就活なども終わった! 


 と、思っていたのですが運良く、私の祖母の知り合いが私のことを雇ってくれるらしくて、しかも仕事内容も神社関係だとか。 というのもあり祖母とその知り合いさんにはものすごく感謝しています。 


 「(バスアナウンス)次は、網目原ー。 網目原ー。 お忘れ物にご注意ください」

 

 目的地であるバス停の網目原だ。 私はバスの停車ボタンを押して、運賃を払いバスから降りた。

いよいよ、新生活の始まりだ。


 「うーん……。 空気が美味しい」


 バスに長らく座っていたのもあって思わず腕と背中を伸ばして深呼吸した。


 ここは山に囲まれている自然があふれてたところで、私の就職先はここから五分かからないくらい程度の道を歩いた先にある蜘蛛縄村(くもなわむら)という場所にある。 噂によると、そこは昔、妖怪たちの溜まり場で、今でも夜になれば畑の作物を食べに山から村に降りてくるとか。


 蜘蛛縄村への道を歩いているとセミの鳴き声や川の水が流れている音がきこえてきた。 私が大学生まで住んでいた街では、セミすらも夏には聞こえなかったところなので新鮮味を感じる。 


    ◇


 祖母からもらった地図を頼りに蜘蛛縄村に到着した。 だけど、地図に書かれているのはこの蜘蛛縄村までであり、就職先がこの蜘蛛縄村のどこにあるかはまだわからない。 ちょうど近くに田植え作業をしているお婆さんを見つけたので、私の就職先がどこにあるのかを質問した。


 「すいませーん」

 「ん? ありゃあんた、外から来たんかい?」

 

 私の呼びかけに笑顔で接してくれた。 なんて心優しいおばあさまなんだろう。


 「はい。 私、この村にある「漆事務所」っていうところに用があるのですが……」

 「ああー、桐彦ちゃんのとこね」


 桐彦? おばあちゃんの知り合いの名前だろうか? 私のおばあちゃんからは事務所の名前しか聞いていないので、事務所のお偉いさんの名前まではわからない。


 「ならついておいで。 じいーさーん」

 「なんだ?」


 田んぼの奥の方でトラクターに乗りながら田植え作業をしているお爺さんが、おばあさんの呼びかけに答えた。


 「ちょっとこの子を桐彦ちゃんのとこに案内してくるから!」

 「ああ! わかった!」

 「さあ、ついておいで」


 おばあさんに案内されるまま、村の道から山道に入りを蜘蛛縄村の奥地までやってきた。 山道はそんなに険しくなく、ちゃんと整備されていて車が通った形跡がある。 木々も生い茂っており、夏の暑さが影のおかげで忘れられる。


 「さあ、見えてきたよ」

 「はぁー、はぁー、あれが……」


 山道は険しくはないが目的地までは意外と遠く、思わずバテテしまったが、目的地が見えたとのことで、歩いた疲労で下を向いていた顔を上げると、木造二階建ての一軒家が見えた。 


 「こ、ここが……」

 「じゃあ、私はここでね」

 「あ、ありがとうございました」


 おばあさんは別れの挨拶を済まして山道を降りていった。 ここまで登っても息一つあげていなかったとは、この村の人たちはここまでいつも歩きで来ているのか? 私なんかもう背中が汗でやられかけている。


 一軒家の玄関までやって来た。 入り口は引き戸式で呼び鈴がついてある。 とりあえず呼び鈴を押さなければ。


 「すみませーん。 雨音です。 すみませーん」


 呼び鈴を鳴らしても反応もなければ出てきそうな気配もない。 家の裏にいないかと向かってみると、村全体が見渡せる絶景が広がっていた。


 「わぁ、きれい……」


 まだ昼間のもあって、涼しいそよ風に気持ちよく当たりながら景色を楽しめる。


 「そこにいんの、誰だ?」

 「え?」


 声が聞こえ後ろを振り向くと、そこにはタバコを口に咥え、畑の作業に使っていたのか、土がついているクワを片手でこちらに向けている男がいた。 私を不審者に思っているのが明らかにわかる殺意マンマンな尖った目でこちらを凝視している。


 「え、あ、あの、雨音巫花です。 すみません勝手に裏の方までまわってしまって」

 「雨音? 雨音ねぇー……。 うーん、どっかで聞いたことがある様な」


 男は自身の記憶を振り返っているのか、眉間を摘んでいる。


 「あのー、私、祖母の紹介で「漆事務所」に就職した者なのですが……」

 「祖母、雨音……。 ああー、清羽さんとこの」

 「はい! そうです」

 「あー、そういや、そんな話しあったなー。 まあいいか、入れ。 背中、スッキリしたいだろ」

 「あ、ありがとうございます!」


 私が不審者という誤解も解け、事務所? である一軒家の中に入った。 中に入ると式台があると思いきや、土足前提の作りになっており、玄関を開けて早々土や泥を落とすカーペットが置いてあった。 真正面には机があり書類やら出前ピザの箱やらが散らかっている。


 「下は基本的に仕事、上は寝たり食ったりするところだ。 お前の部屋は二階の左側の部屋。 俺は基本的に下で寝てるから気にすんな。 あと、シャワーなり風呂なりは、あの机の奥の扉だ」


 男の人はそういってから、机の近くにある革椅子に机に足を乗せる形で座った。


 「そういや俺の名前がまだだったな。 俺は漆桐彦(うるし きりひこ)。 まあなんだ、詳しいことはお前も背中をスッキリさせてからでいいだろ?」

 「はい。 じゃあ、シャワーお借りします」


 

  ◇


 「ああーさっぱりした。 シャワーありがとうございました」


 シャワーから上がり、桐彦さんからもらった作業着に着替えてから部屋を出ると、下の部屋がさっきより片付いており、さっきまでの土や泥が嘘みたいになっている。


 「おおー、上がったか。 じゃあまずこれ、仕事のマニュアルな」

 

 桐彦さんがくれた仕事マニュアルは広辞苑並みの大きさと厚さがあって読破するには苦労しそうだ。


 「が、頑張ります......」

 「じゃあ、じゃあマニュアルも渡したことだし、行くぞ」

 「え、行くってどこに?」


 桐彦さんはポケットから鍵を取り出した。


 「どこにって。 そりゃ、仕事だ」

 「え? えーー!」


  ◇


 桐彦さんの軽トラで仕事場に向かうことになった。 桐彦さんがやっている仕事の内容は、主に村民たちから依頼された代行業で、そのほとんどが農業関係のお仕事だ。 だけど、もらった仕事マニュアルを揺れる軽トラの中で読んでいるが、マニュアルには、農業とは関係ないことばっか書いてある。 


 軽トラの荷台にも、明らかに畑仕事とは関係なさそうな、縄や木箱などを出発前に積んでいた。


 「あのー、すいません」

 「おう、なんだ?」


 軽トラの中では、ヴィジュアル系バンドの音楽が流れており、桐彦さんも、おそらく歌っているバンドのメンバーが印刷されてある服を着ていて、歌を口ずさみながら運転しているのもあって質問がしづらい。


 「漆事務所のお仕事って、主に農業の代行業ですよね」

 「ああ、そうだな」


 桐彦さんはそしらぬ顔で答えた。


 「では、なんで仕事マニュアルには「妖怪」の情報ばっかの載ってるんです?」

 

 言葉の通り、もらった仕事マニュアルには蜘蛛縄村付近で噂されている妖怪の情報と出没予想地点が書かれている。 あきらかに農業とは関係がなさそうだが。


 「それが本業だからだ」

 「はい?」

 「清羽さんから聞いてないか? たしかに最近は村の畑仕事代行がほとんどだが、それらはあくまで日銭稼ぎだ。 本業は妖怪を締め上げて討伐する。 またはこっから追い出す」

 「い、いやいや妖怪だなんて。 そんな昔話じゃあるまいし......」

 「お前は清羽さんから何も聞いていないようだが、俺は清羽さんから色々聞いてるぜ。 五年前の一か月間消えなかった雨雲。 あれを解決したの、お前なんだろ」


 おばあちゃん、さすがに口軽すぎない?


 「さて、もうすぐ着くぞ」


 ◇


 目的地である依頼者の民家に到着した。 車を降りると、民家から私を漆事務所まで道案内してくれたおばあさんがでてきた。


 「あら、今朝会った」

 「あ、おばあさん」

 

 私は民家の玄関にいるおばあさんの元へと走った。


 「今朝は道案内ありがとうございました」

 「なんだ、お前もう美栄(みえ)ばあと知り合いなのか」

 「あら、桐彦ちゃん。 この子、あなたの所の新人さんなの?」

 「まあ、そんなとこだな。 さて、こっからはお仕事だ。 巫花、この辺で出てくる妖怪はある程度抑えたな」

 「はい。 でも、本当に出るんですか」

 「出るか出ないか、見えるか見えないかは、お前の妖怪を信じる心が答えてくれるだろうよ。 じゃあ美栄ばあ。 現場に案内してくれ」

 「あいよ」


 美栄さんに案内されるまま、私たちは家の裏にある、私と美栄さんが初めて会った畑にやって来た。


 「さてと、こっからはお前の仕事だ。 新人」

 「仕事って言っても、この畑で何をすればいいんですか?」

 「メインは犯人の特定だ。 てことで、俺が犯人であろう妖怪をピックアップしたマニュアルだ」


 桐彦さんがくれた新しいマニュアルは、漫画の単行本サイズで、さっきもらった広辞苑サイズのマニュアルと比べて、非常に読みやすい。


 「あのー、最初からこっちを渡せばよかったんじゃあー......?」

 「アホ言え。 そいつはあくまで初仕事ようだ。 ただでさえあんな分厚い本からこいつを切り抜くの苦労したんだ。 大事に使えよ」


 分厚いのは自覚しているのか。


 「さてと、じゃあマニュアルを渡したことだし、この辺の調査は頼んだぞ」

 「桐彦さんは何するんですか?」

 「俺は裏手の林道や山の中の調査だ。 まあ、なんかあったら連絡しろ。 ほら、メアドと番号」


 桐彦さんとメアドと電話番号の交換を済ませ、桐彦さんは裏の林道に向かい、私の初仕事が始まった。

 今回の仕事内容である、畑荒らしの犯人として桐彦さんがピックアップした妖怪は

 唐傘お化け、座敷童、河童の三体で、この中の誰かが犯人妖怪だ。 


 理由として、荒らされた畑には下駄の足跡が確認される。 下駄のサイズ的に予想される身長は、百三十から百五十センチメートル。 足跡には謎のぬめりがある。 かららしい。 


 荒らされている畑を確認すると、下駄らしき形をした足跡があり、その足跡にも、たしかに謎のぬめりが土についている。

 

 「美栄さん。 畑が荒らされるようになったのは、いつ頃から何ですか?」

 「そうね。 たしか、三週間前くらいかしらね。 ちょうど夏野菜が収穫時で畑に向かったら、見事に畑は踏み荒らされてたし、育ててた野菜も食い荒らされててね。 ちょうど桐彦ちゃんにも手伝ってもらってたから、依頼したのよ」

「人影かなんかはみませんでしたか?」

「人影っていっても、基本畑に来るのは朝だからねー。 でも、この前夜中さ畑に向かったら、小さい子どもの影は見た気すんよ。 でも子どもにしては、一回り大きかった気すんね」


 子どもの影。 となると、犯人となる妖怪は座敷童が近そうになるけど、まだヒントが足らない。



 情報① 子どもの人影



 「あの、朝トラクターに乗っていたおじいさんと今お話ってできますか?」

 「ああ。 できるよ。 ついてきな」


 美栄さんのお家に上がり、おじいさんへの聞き込みを開始した。


 「それでー、畑の件についてお聞きしたいのですが......」

 「ちょっと待っとってくれ」


 美栄さんの夫、柚木芯堂さんだ。 畑の件について聞こうとしたが、白黒の映画を見ながら一服しているのもあってまだまだ時間がかかりそうだ。


 「待たせたね。 確か、畑の件だったかな?」

 「はい。 最近荒らされるようになったことについて、芯堂さんにもいくつか聞きたいことがありまして......」

 「そうさなー」

 

 芯堂さんは吸い切った煙草の火を灰皿に押し付けて消し、何かを閃いたようにこちらに視線を向けた。


 「そういえば、何か変なものを背負ってた気がするな」

 「変なもの?」

 「ああ、そいつを見かけた時、野菜泥棒かと思ってちょうど持ってた野球ボールを背負ってたやつに向かって投げて当ててやったんだが、石だが金属に当たった時みたいな音がしたな」


 石や金属に当たった時みたいな音? てか、なぜ野球ボール?


 「その野菜泥棒を追いかけたりは?」

 「もちろん追いかけたが、夜だったのもあって、すぐ見失ってな」

 「その時、足跡にぬめりはありましたか? あと身長も」

 「ぬめり? ああ、ばあさんも桐も似たようなことを言うがわしは見なかったな。 身長に関しては他の二人と同じくらいだったきがするな」


 てことは、芯堂さんが見かけたのは、犯人と仮定していない誰か? でも、ぬめり以外の情報は大体同じだし、うーん......。



 情報➁ 何かを背負っていた野菜泥棒


 「あと」

 「あと?」

 「その野菜泥棒に関してなんだが、たしか傘みたいなのを持ってたな」

 「傘? どういう傘ですか?」

 「たしか、穴だらけの唐傘だったな」

 「唐傘?」

 

 ポケットに入れていた携帯が鳴り、確認すると桐彦さんからの電話だった。


 「桐彦さん?」

 

 芯堂さんに断りを言い、桐彦さんの電話に出るため一旦、外に出た。


 「もしもし」

 「なんか進捗はあったか?」

 

 私は桐彦さんに、美栄さんと芯堂さんから聞いた情報を携帯越しに桐彦さんに伝えた。


 「唐傘にリュックを背負っるねぇ~。 こっちも新しい情報があるぜ」

 「どういうのです?」

 「今まで足跡が確認されたところをうろついてたら、ぬめりがない下駄の足跡があった。 しかも、サイズが最初に確認されたサイズよりでかい。 この点で思ったことは、唐傘お化けはない」

 「なぜです?」

 「なぜって、唐傘お化けは一足歩行だろ」


 そんな軽い理由でいいのか?



 情報➂ ぬめりがなく、今までのより大きい下駄の足跡



 「まあ、電話で長話もなんだし、一旦事務所に戻るか」


 美栄さんと芯堂さんに別れの挨拶を済ませて桐彦さんの軽トラに乗って事務所に戻った。


  ◇


 「もうすっかり夕方ですね」

 「まずいな。 もうすぐ出てくるぞ」

 

 桐彦さんは、今回の事件の情報がまとまっている地図を見ながら頭をかいている。


 「出るって、もうですか!」


 腕につけている電子時計を見ると、まだ五時半だが、もう妖怪が出てくるの?


 「あ? 当たり前だろう。 妖怪にしろ悪魔にしろ、出てくる時間帯は夜って決まってんだろ」

 

 なんかもう、妖怪とかって本当に昔話の通りの生活をしているんだろうと思ってしまう。 

 でも、今思えば、私が高校生の時に起きたあの出来事も、夕方あたりから始まっていた記憶がある。


 「でも、これといっていい情報がありませんね」

 「てか、まずいな。 これ以上延期すると、あの二人に申し訳がたたねぇ」

 「延期って、この依頼何日前から受けてんですか?」

 「に......、二週間前」

 「結構前から受けてますね」


 てか、そんなに期間があったのに聞き込みしてないって、どういうことなんだ。


 「さすがに今日あたりに解決しねぇと、申し訳ねぇな」


 桐彦さんは、いつも柚木家の二人から畑仕事の手伝いのお礼として野菜をもらっており、今回の依頼で恩を返そうとやる気を出していたが、調査がうまくいかず困っていたらしい。


 「しゃあねぇ。 初日そうそう申し訳ねぇが、今から妖怪討伐だ!」

 「討伐って、え? でも場所は?」

 「あいつが居所は特定した。 問題は犯人の妖怪だ」

 「どういうことです?」

 「俺の妖怪の討伐方法として、まず犯人である妖怪を、情報の元推理する。 推理が終わったら、その妖怪の弱点を洗いざらい見つけて戦う! って感じだ」

 「じゃあ、妖怪の推理が間違ってたら」

 「その時は、最悪泥試合だ」


 もう、とんでもない仕事すぎる。

 

 「安心しろ。 お前は戦わなくていい。 お前は調査と推理を任せるために雇ったからな」


 思わず胸に手を当てて、ほっと一息ついてしまった。


 「って、待ってください。 てことはつまり、今から戦う妖怪を推理するのは......」

 「まあ、無論お前だな」


 勘弁してください。 そんな自信私にはないですよ。


 「でも、私にそんな自信……」

 「そんなに気負うな。 今回はおそらく弱い部類の妖怪だ。 でもまあ、推理が当たったら給料にサービスは入れとくぜ」

 「頑張ります」


 思わずまじめな目線で返してしまった。

 

 「お、おう。 頑張れ」


 今ある情報を整理すると、

まず、


 ① 犯人の身長は百三十~百五十

 ➁ 犯人はリュックみたいな何かを背負っており、それは石か金属みたいな音がする。

 ➂ 足跡は最初、謎のぬめりがあったが改めて確認した所、ぬめりはなく、下駄の足跡が大きくなっている。

 ④ 犯人はぼろぼろの唐傘を持っている。


 そして、犯人と仮定しているのは ①唐傘お化け ➁座敷童 ➂河童 の三体。

 

 この感じだと......。


 「座敷童だと思います」

 「理由を聞いても」

 「畑の荒らされた所を見た時、確かにぬめりはありましたが、よくみたら濡れてるだけのコケでしたし、河童ってお皿が濡れてないと元気が出ないっていうじゃないですか。 なのに日光が防げないぼろぼろの傘を持っているのも変だし、背負っているリュックみたいなものが石みたいな音だけするならまだしも、金属音もするなら、甲羅じゃないと思ったからです」

 「わかったその線で行こう。 決行は七時半だ。 準備しとけ」

 「わかりました」


  ◇


 決行の時間帯になり、桐彦さんが特定した妖怪の居所までやって来た。

 周りは鈴虫なり蚊なりで最悪の状況だ。 これじゃ、せっかくかけてきた虫よけスプレーの意味がない。


 「ほ、ほんとにこの辺何ですか?」

 「お前な、こっから妖怪相手に戦おうってのに、虫にビビッてどうする」

 「そ、そんなこと言われましても......。 うわっ」


 嫌いな虫はいっぱいいるし、桐彦さんは刀なんか腰に構えて物騒だし、もう、ほんとに早く終わらせたい。


 「見えたぞ」


 桐彦さんは持っている懐中電灯の明かりを消して、この先に見える、滝の近くの穴倉を指さした。

 あそこが、犯人である妖怪の居所なのであろう。 月明かりのおかげで穴倉周辺がよく見える。

 人影も確認でき、明らかに人間ではない形だ。

 

 

 「誰かいますね」

 「ここで待ってろ。 いざってなったら、これで俺を援護してくれ」

 

 桐彦さんはそう言って私にリュックを預けてから、茂みをかき分けつつ、静かに歩きながら向かった。

 私も口を押えながら桐彦さんを見守っていたが、ふと木を見上げてしまい、大量の虫を目に焼き付けてしまった。 


 恐怖のあまり後ろに一歩下がってしまうと、「パキッ」っと音がなってしまった。


 「はっ......!」

 「まじか......」

 「誰だ!」

 「ちっ、お前が畑荒らしの犯人か?」

 

 穴倉から妖怪が出てきた。 その妖怪は、巨大な傘を棍棒代わりに武器にしており、口からよだれが垂れてては、おなか部分に紫色の蜘蛛の糸らしきものがついていて、巨大な木箱みたいなものを背負っている。

 

 そして、身長は二メートルはある。 


 ていうか、本当に妖怪っていたんだ。


 「おいおい何だよこれ。 目撃情報と全然違うじゃねぇか」

 「桐彦さん! 大丈夫なんですか」

 「安心しろ。 この仕事にはもう慣れている」


 桐彦さんは持っていた刀を鞘から取り出して構えた。 だけど取り出した刀には刀身がない。


 「そんな刀でどうする気だ、人間? あははは」

 「まあ見てろよ。 妖怪」


 そういうと桐彦の周りに炎が発生し、桐彦さんを包んだ。


 「桐彦さん!!」

 「ふふふ、無様だな」

 「何言ってんだ?」

 

 炎の中から声がする。 


 「これは俺を焼き殺す炎じゃねぇ。 お前を焼き殺す炎だ!」


 炎が少しの間、周辺の木を超える高さまで燃え上がり、桐彦さんは炎を切り払うかのようにして炎の名から出てきた。 


 炎の中から出てきた桐彦さんは、全身に炎をまとった侍の甲冑のような姿をしており、

 持っていた刀も刀身の金属部分が熱を帯びているかのように真っ赤になっている。


 「その力、妖力。 貴様どこでその力を!?」

 「さあな」


 桐彦さんはあおり口調と、挑発しているかのような目線で妖怪の質問に答えた。 まるで、今日一緒にいた桐彦さんではない感じだ。

 

 「くっ! 舐めるなよ! 人間如きがっ!」


 妖怪は自身のよだれを持っている巨大な傘にべったりつけ、桐彦さんに攻撃してきた。


 「あっ! 桐彦さん!」

 「無駄だ」


 桐彦さんは、妖怪の攻撃を刀だけで受け止め、受け止められた棍棒のよだれは、一瞬にして蒸発した。


 「さあ、こっちの番だぜ。 うらっ!」


 受け止めていた傘を振り払い、刀の峰を野球のバットのように使い、穴倉全体にひびができる勢いで吹っ飛ばした。


 「巫花。 その中にある小さい瓶をこっちに投げてくれ」

 「あっ、はい」


 瓶を投げ渡すと、桐彦さんは即座に瓶を刀の上で割り、瓶の中に入っていた液体を刀にかけた。

 液体がかかった刀は、激しく燃え盛り、さっきまで伝わなかった刀の熱がここまで伝わって来た。


 「さあ、終いだ」

 「うぅ、くそー」


 妖怪も負けまいと立ち上がろうとしているが、膝で支えているのがやっとの状態だ。

 

 「へへっ。 てりゃー!」

 

 桐彦さんの激しく燃え盛る刀は敵を一刀両断し、穴倉が崩れるほどの爆発を起こした。

 

 「す、すごい」

 

 爆発した所を見てみると、小さな子供がいる。 まさか、さっきの巨大な妖怪?


 「う、うぅー」


 よかった。 幸いにも生きている。


 「さて、質問に答えてもらうぜ妖怪。 まず、お前は誰だ」


 桐彦さんは、侍の甲冑のような姿を解除し、刀の刃先を小さな子供に向けながら質問を始めた。


 「お、おいらは、唐傘小僧」

 「あなたが、美栄さんと芯堂の畑を?」


 私も安全を確認して隠れていた茂みから出て質問した。


 「そのことだけど、おいらはあんまり覚えてない。 そういう事をしたって感じはあるけどな」

 「質問を変えよう、唐傘小僧。 お前、「土蜘蛛」と会ったことは?」


 土蜘蛛って、あの昔の武将が倒したで有名なあの土蜘蛛?


 「土蜘蛛? あいつは遠い昔に死んでるはずだろ」

 「そうか。 最後の質問だ。 お前が罪を認め、何らかの形で被害者に謝るか、黙ってこの村から出ていくかだ」


 え、いくら何でも村から出ていくって......。


 「へっ! 聞いてあきれるぜ。 そう言って人間は、すぐさまおいら達のことを殺すんだろ」

 「え?」

 「その言葉を信じて死んだ奴らが、どんだけいると思ってるんだ!!」

 「つまり、「さっさと殺せ」と、受け取っていいんだな」

 「覚悟はできてんだ。 さっさとやれ」


 桐彦さんは何も言わずに炎の刀身を発生させ、唐傘小僧を切る体制に入った。


 「ちょっと、待ってください!」

 「ん、なんだ?」

 「いくら、殺すなんてひどいですよ。 それに、謝るって選択肢があるんだったら......」

 「人間......」

 「別に殺す気はねぇぞ


 「「え!!」」


 「この妖怪自体が自分の力で暴走しているわけじゃねぇしな。 それに、よくわかんねぇ奴を殺すなんて趣味悪いことはしねぇよ」

 「よ、よかったー......」


 思わず膝の力が抜けてしまった。


 「人間。 本当に、本当においらを殺さないのか?」

 「ああ。 だけど、あの夫婦にはちゃんと謝ってもらうぜ。 それをやってもらえりゃ、恨みも何もねぇーよ」

 「あ、ありがとう......」

 「あーあー、泣くなよ、面倒くせぇな」

 「ほら、ハンカチ」

 「ありがとう」


 私たちは唐傘小僧を連れて事務所へと向かった。


  

   ◇



 「やっと、帰って来たー」

 「なんでお前が一番喜ぶんだよ......」

 「いやー、正直なところ、あんな虫だらけなところ早く去りたかったんですよー」

 「ここが、人間の家」


 唐傘小僧は、まるで初めて何かを見たかのように、事務所を見渡している。


 「まあ、今日は面倒見てやる。 感謝しろよ」


 二回からドタドタとだれかが走ってくる音がする。


 「え、誰?」

 「パパー!」


 やって来たのは、身長が唐小僧より少し身長が大きい女の子だ。 

 女の子は下に来てすぐさま桐彦さんの胸に飛び掛かった。 よく見ると頭から狐みたいな耳が生えている。


 「おー、ただいま。 凛狐(リコ)

 「え、パパって.......。 え?」

 「あー、俺な、こう見えて妻子もちなんだ」

 「え、でもその耳......」

 「まあ、色々の説明は明日にして。 お前、車の免許持ってるか?」

 「はい、マニュアル......」

 「ちょうどいい。 軽トラ貸すから、バス停近くにコンビニがあっただろ。 あそこまで行って晩飯買ってきてくれ」

 「はい。 わかりました」


 私は車のカギとお金を桐彦さんからもらってコンビニまで向かい、夜ご飯を買いに向かった。 

 それにしてもおばあちゃん。 なんていう人と友達になってるんだ。 もう情報力が多くて頭が疲れてくる。


 どうなるんだ、私の新せいかつーーーー!!!



前書きにも書きましたが、RPGに使うストーリーを意識して作ってみました。 全体的な内容としては、行方不明となった桐彦さんの奥様を妖怪の事件を通して探していくお話です。 良ければガンガン共有してください。

 あと、巫花が冒頭で語っている高校生の時の出来事は、没になった小説の設定ですので、裏設定として保管しといてください。 この物語を最後まで書くってなったら、その没小説のキャラを出すつもりです。

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