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知り合いのいじめ問題についての無責任な雑談

作者: 浅賀ソルト

 会社の昼休みに四人で雑談していた。

「自分のところの話じゃないんだけど、知り合いの中学生がいじめにあっているらしくて、先生に相談したんだけどなかなか対応してくれないらしい」

「あー」

「とりあえず気のせいとかそういうんじゃなくて、もう繰り返されてていじめなのは確定しているんだけど、解決する気配がないらしくて」

「めんどくさい親だな。先生も転校しろとか思ってるんじゃないのか?」

「……」

 遠い知り合いのいじめ問題の相談をしたのが横江、その横江の知り合いをモンスターペアレンツ扱いした空気の読めないのが兵藤である。私は聞き役。兵藤の発言はいちいち勘に障るので会社の中だけの付き合いである。

 私は、「それで、何か次の手はあるの?」と続きを促す。社交辞令ではなく、普通に聞きたい。

「知り合いは娘にスマホで録音録画をさせているところなんだけど、そもそもスマホでいじめられているらしくて、いじめている方は『ふざけていただけです』って言ってるんだよ」

「まあ、いじめてましたとは言うわけないからな。それを鵜呑みにしたら教師失格だ」

 横江は感心したように私の方を見た。「そうだよな。そうだ。自分もなにか勘違いしていた。鋭いな」

「まあ。ただ、話の展開から言って、その教師は、教師失格のタイプなんだ?」

「自分の聞いたところでは、副校長から校長に至るまで、中学生にはよくあること、騒ぎすぎ、そんなことでいじめっこを処罰はできないという感じで、あの、よくある、いじめっこよりいじめられる方に問題がある的な感じ。もう味方になる教師はいないらしい」

「うーん」

「本当にいじめられる方に問題があるんじゃねえの、そういうのって」と例によって兵藤。

「兵藤の場合、どうするのがいいと思うの?」初めての発言の坪倉が兵藤の側について発言する。「いじめられている方に問題があるとして、じゃあ、どこをどう直せばいじめはなくなるって話なのかが分からない。教師も、具体的な解決策を提示してないから仕事はしてないよな」

「その訴えを無視したり潰したりして、報告を上に上げないのが仕事だろ」兵藤は言う。「教頭と校長まで上がっているから、次は教育委員会だな。先にうちの学校に騒ぎすぎのモンペがいるんですって手を打っておくのがいい」

 私はそこで兵藤にちょっと感心した。問題がこの四人にとって他人事だからというのもこの場合のメリットだ。「なるほど。兵藤の先生側に立っての弁護も参考になるね。敵の打ってくる手が分かる」

「いやいやいや。敵って」兵藤は笑った。「俺はどちらかというとモンペに苦労したことがあるからさ。どうすればいいのか大体分かるんだよ」

「……まあ、そうだな。教師はもうこの話では敵になっているんだよな」

「よくある展開だと、あとは教育委員会か警察かって話になるよね」

「そうなるよな」

「警察も面倒事は避けるからな。証拠はないです。未成年ですって話をいう感じに、事件性は微妙って空気を出すのがいいぞ」兵藤はどっちの味方か分からない。

 坪倉は言った。「何もしなかったっていう証拠が必要になるからな。いつまでにこれをしてくだい、と具体的な指示を出すのがいいぞ。で、それをしなかったという証拠を固める」

 私は言った。「難しそうだね」

「難しいなら諦めた方がいい。いじめっこの方が正しくて、泣き寝入りが正しい選択ということもある」

「そう。その通り。いやなら転校すりゃいい」

「いじめられっこの親が、復讐相手を勘違いして、まったく無関係の家に放火してそこを焼き殺したことがあって……」

「はい、解散、解散、闇が深い」

「冗談だよ」

「闇の冗談だ」


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