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戦闘開始

 自衛隊は静かに動き始めた。絢爛の極みのネオンサインもゴジラの光線も何より人種の博覧会かという人波も途絶えた歌舞伎町は漆黒の闇が広がっていた。


 雅は夏生と自衛隊部隊の後方にいた。初戦は銃撃戦になるだろうから自衛隊の邪魔にならないようにである。夏生は鬼切丸を肩に背負っていた。なるほど、これなら動きやすい。


「撃ち方始め!」と声が静寂を破った。

 暗闇に火花が弾ける。ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!風林城の一階部分に弾丸が集中する。だが、反撃は無かった。多分、奥に潜んで、こっちが中に入ってくるのを待つ、そういうことか。


「閃光弾!」

 閃光弾が投げ入れられて、一階は瞬時に光が満ちた。

「突入!!」

 自衛隊員が一階部分に殺到する。すると中からダ!ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!と反撃音が響いた。思わず伏せる自衛隊員。その時、暗闇に光線が放たれた。 

「何?」と景子が言うと、

「パラシュート部隊です」と雅は答えた。

「なるほど、上から下から攻めるってことね」

「はい」と雅は頷いた。だが、敵は上からの攻撃にどう対処するだろうか、上からのパラシュート部隊は何処に降りるのだろうか、下手なところに降りると狙い撃ちになると雅は思った。


 黒色と星の煌めきの天に白いパラシュートが次々と現れる。それに向かってパン、パンと銃の発射音が響く。ライフル銃だろうか。自衛隊もそのライフルに向けてマシンガンを打ち鳴らす。


 空から陸から、銃の音が鳴り響く。そこに何の意味も無い。なんの創造も無い。これが人間の戦争だ。人間以外の動物はテリトリーを犯されない限り闘わない。餌も自給自足の範囲で獲る。圧倒的に意味のない闘いを行うのは人間だけだ。


「雅、行くわよ」と夏生。

「どこに?」と雅

「あのパラシュートを撃ってるやつらを始末する」

「でも四階あたりから撃ってますよ」

「あのくらい飛べる。もっと高いところは、雅に任せる。良い?」

「承知」


 夏生は宙に飛んだ。飛びながら背中の鬼切丸を引き抜く。

 四階の窓から突き出ているライフル銃が二本。夏生は引き抜いた鬼切丸の刀身を銃めがけ振り下ろし一本を切り飛ばす、返す刀で二本目を切り裂き、バン!と鈍い音がして切り裂かれた鉄の棒が宙に舞う。

「グエッ」と金髪が唸る。銃が半分になって、火薬が爆発したら銃を持っている者は只ではすまない。大怪我なのはマシな方だろう。五指が砕けるかもしれない。

夏生は窓枠に立って、中を見ている。敵はいないようだ


 雅はひとっ飛び、屋上に飛んだ。

 突然、宙から現れた雅に、ライフルをパラシュート部隊に向けていた四人の金髪は大変驚いた(まあ、無理はない)ようで、口をOに形に開けていた。だが、時間は素早く過ぎる。顔を雅に向けた金髪たちは、雅の右蹴り、左蹴り、右拳、左拳で地に這った。


「雅!」と声が掛かった。屋上から下を見ると、夏生が窓から顔を出している。

「飛ぶよ。キャッチして!」

「はい!」

 すると、大きな複数の靴音が聞こえてきた。ヤバい! 敵だ。

雅は屋上から飛んだ。それを見た夏生も飛ぶ。

 宙に二人が舞った。雅は夏生に急速に近づき、夏生の足の間に入った。肩車である。と、暗闇の区役所通りにずずずずずずずと低速音が響いてきた。雅は目を凝らし、その音の正体に驚いた。装甲装輪車である。その真正面に二人の肩車は降りたのだ。雅の足が地に着いた瞬間、夏生は前方にくるり宙がえり、地に降り立った。同時に鞘から鬼切丸を引き抜いた。


「雅、こいつら敵だよね」と夏生。

「はい、自衛隊は装甲装輪車は持っていません」と雅。

 すると、夏生は「雅は二台目をどうにかして」と言うと、宙に舞い上がった。


 区役所通りを縦に一両を先頭にして迫る装甲装輪車の行手に、まさに夏生は立ちはだかった。


 夏生はジャンプ一閃、車の上に飛び乗ると、鬼切丸を振りぬいて、なんと、装甲装輪車の大砲を切り飛ばした。

 瞬時に機関砲が向けられる。

「雅!」

 夏生が叫んだ瞬間、機関砲の射手は道路に転がった。雅が真空飛び膝蹴りで、顎を撃ちぬいたのだ。だが、二台目が二人に迫る。

「雅、立って!」と夏生が叫ぶと、雅はズッと両足を踏ん張った。夏生は雅の肩に右足を掛け、次の瞬間空高く舞った。夏生の目に口をOの字に開け、見上げる金髪が見えた。あわてて、マシンガンを向けるが、その砲身を切り飛ばす夏生。続けて雅が車のフロントに飛び乗ると、砲身をぐにゃり直角に曲げる。


 二台の装甲装輪車が立ち往生し、続く装甲装輪車が立ち往生する。よし、帰るぞ。すると、夏生が「雅! 自衛隊を何人か連れてきて」なるほど、ここに兵隊が移置すれば、この方面の防御となる。

「承知!」と雅は頷くとすばやく動いた。


「そうか装甲装輪車を止めたか」と佐伯は頷いた。

「二台の装甲装輪車を止めて、道をふさいでます。何人か自衛官を配置すれば、そっちからの攻撃は防げます」

 佐伯はうんと頷いた。

「そうだな、何人か行かせよう」

 そう言った佐伯は、

「どうやって、装甲装輪車を止めたんだ?」と雅に聞いた。

「言っても信じてもらえませんね」と雅。

「あ、あ、そうか。あんたたちは常識の外だからな」

「では、ママのところに帰ります」

「お、おう、悪いな。ありがとう」


 雅は、来た道を取って返した。区役所通りにぶつかった時、異様な風景に出くわした。

 簡単に言えば人が、まるで灯油を掛けられて火を点けられたように燃えていたのである。アスファルトに朽ちた廃ビルの狭間に火の気はない。

 すると、燃える顔を雅に向けて人であったろうその燃える存在の口らしきモノが動いた。雅にはそれが「たすけて」と聞こえた。そして、その声は耳ではなく、胸の奥に響いた気がした。そして雅は一瞬固まった。これはまさか……


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