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決着

 相手の手の内が分かった、が、マサはプロレスをやろうと思った。何故か、面白いからである。また過激な観衆がいる。彼らの期待に応えよう。


 両者はガッシと組み合った。蛇頭が素早く、左腕でヘッドロックを極めてマサの頭を締め上げる。ヘッドロックは実はかなり相手を痛めつける技だ。急所である後頭部を締め上げるのだから、当たり前だが、急にマサの額にゴツンと、あり得ない衝撃が、ゴツン、ゴツン、マサの額に叩きつけられる。こいつ、まさか。


 蛇頭がウオーと吠え、左手を大きく宙に掲げた。観衆がおおおおおおおと応える。こいつ凶器を持っていた。いかれた野郎と思っていたが、立派なプロレスラーだ。つまりプロレスにつきものは凶器攻撃だ。


 マサは全力で蛇頭の背中を押し、頭を引っこ抜いた。ぬるい血が額から出ている。血を舐めながら、

「汚いな」

 蛇頭は栓抜きを右手で握りながら、言った。

「プロレスがしたいんだろ」

 マサは血を舐めながら、

「そりゃ、そうだ」

 血を見て観衆はいっそう滾った。

「うおおおおおおおおおおおおお」「やっちまえ」「殺せ」まあ他人事だから仕方が無いが、酷くないか。


「あんた、いかれてる」とマサ。

「お前もだ」と蛇頭。


 蛇頭が一歩前に出た、今度は何だ。左回し蹴りと同時に、右延髄蹴り、こいつも実際の格闘技には無い。なんなく、かわすと、今度はこっちだ、と思った瞬間、口に何かを含んだは見えたが、次の瞬間、視界がぼやけた、こいつ毒霧まで用意してやがった。

さすがはプロと、言いたいところだが、そんな場合じゃない。蛇頭はパンチの雨あられ、最後は水平チョップまで放った。大きくあおむけに大の字になるマサ。


 蛇頭はマサの両足を両の手に抱えると、マサの体をひっくり返して、逆エビ固めにした。反り返るマサの胴。マサは両の掌を地面につけると「ぬおおおおおお」と腕立て伏せの要領で、体を地面から離し、思いっきり胴を押し上げた。蛇頭は前につんのめり金網に額をぶつけた。ガシャーンと派手な音を起てて蛇頭の額が金網にぶつかる。

「ふふ」と蛇頭は額から血を垂らし、笑う。まったくプロレスラーってのはいかれてる。まあ、それにつきあって流血するんだから五十歩百歩だ。

 マサと蛇頭は再び相対した。両者の顔は血に塗れていた。マサに至っては緑の毒霧と血が混ざって、まあ悲惨。 


 再び、がっぷり組み合う両者。すると蛇頭はマサの股に右手を入れ、肩にマサを持ち上げると、地面に叩きつけた。と同時に、その場でニードロップをマサの腹に落とす。地面に倒れたマサ、蛇頭は金網を上り始めた。その高さ約五メートル。その一番高いところから蛇頭は宙に飛んだ。ムーンサルト・プレス。まったくいかれているが、これがプロレス。もろに食らったマサ。蛇頭は倒れているマサを引き起こすと、入場口からマサを金網の外に放り出す。場外乱闘、ザ、プロレスである。

 

 マサの髪を掴み、客席に放り投げる。ガッシャ―ンと派手な音がして、人が笑いながら逃げる。


 蛇頭はパイプ椅子を持つと、マサの頭にバッシン、叩きつける。

 この流れるような攻撃は見事だ。プロレスの相手はプロレスラーでは無い。観客である。だが、こっちも、やられぱなしは気入らない。マサも椅子を振り上げた。が、プロレスでは相手が一枚上、蛇頭は自分からパイプ椅子の最も柔らかいところに頭を当てた。恐るべし、プロレスラー。


 蛇頭は体をマサにぶつけて言った。

「おい、そろそろ帰るぞ」

 帰るとは金網の中であろう。ハハ、やっぱりプロはすごいな。

 どうと入場口から飛び込むマサに続いて蛇頭が転がり込んだ。


 再び向かい合う両者。

 今度は俺だとばかりにマサはドロップキックをかます。分厚い蛇頭の胸にヒットする。するとマサは金網を上った。二番煎じだが、マサはニードロップをかました。さすがプロレスラー、マサのニードロップを蛇頭は堂々と受けた。

 フォールはできないので、ある意味、このプロレスはなかなか難しい。だが、観衆はすっかりプロレスを見ている顔だ。畏るべしプロレス。


 闘いは一転硬直した。互いに睨み合い、次の手を考えながら睨み合う。

「どうした!」「やれやれ」「やっちまえ!!」

 すると蛇頭が後方に飛んだ、金網にぶつかり反動で、マサの前に飛んだ、と同時に右腕を真横にして、マサの胸に叩き込んできた。ロープが無い限り、ラリアットは無いと決めつけた判断がミスだ。ラリアットは油断していたマサをものの見事に吹っ飛ばした。蛇頭はすかさずドロップキックでマサをあおむけに倒す。そしてマサの胸にフライングニーをぶち込む。こいつはけっこう効くな。


 だが、そろそろ俺の時間だ。マサは胸板に膝がぶつかる瞬間に右足を振り上げ、蛇頭の後頭部にぶち当てた。前のめりの蛇頭。その顔にパンチをぶち当てた。ゴツン、やっぱり異常体質だ。顔が堅いなんてものじゃない。こいつを打撃で仕留めるのは難しそうだ。


 では、どうする。プロレス技は見た目派手だが、ノックアウトできる技はほとんどない、と思ったとき、ピンときた。あの技があったか、プロレスでは珍しく効く技。そこに持っていくには、どうするか。次の瞬間、マサは金網に向かって体をぶつけていく。

 なるほど、多少の反動はある。そして宙を飛んだ。そのままドロップキック。倒れない蛇頭、足を踏ん張ってこらえる。マサは素早く起き上がると蛇頭の後頭部に空手チョップ。上半身が前に倒れる蛇頭、今だ。マサは右足を蛇頭の左足の内側に回し、左足をロックする。と、同時に左足を上げ、つんのめった蛇頭の後頭部に回し、蛇頭の右腕の内側に両手を回し蛇頭の頭をロックする。卍固め、もとはルーテーズが発明したオクトパスホールド。これはプロレス技としては珍しく効くらしい。その証拠に蛇頭は「うううううう」と苦しそうである。


「おおおおおおおおお!!」「卍固めだ」

 わき腹を、背中をぐいぐい締め上げる。やはり蛇頭もダメージはあったのだろう。マサも慣れないプロレスで、スタミナが切れかかっている。もう最後だと全力で締め上げる。


 すると、ついに、蛇頭の体が力を失った。締めた腕の先で、蛇頭の体温がすぅっと抜けていく。見ると失神している。やっぱり効くんだな卍固め。


 すると、担架を持った二人の男が、蛇頭を担架に乗せ、運んでいく。

「おい、待て、どうするんだ」

 すると声が掛かった」

「言ったでしょ、外に放り出すって」

 女豹が笑って立っていた。


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