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一か八か

 エレベーターが止まり、ドアが静かに開いた。客用よりは狭い空間が開いてゆく。中は空だった。

 マックスがエレベーターに入ろうとすると「待って」と景子が言った

「何故?」

「念のためもう一回空のエレベーターを動かす。それに考えがある、ちょっと待ってて」と景子が言って、場を離れた。

 景子は一番速く目についた部屋に入った。やはり鍵がかかっていないな。そして景子は部屋にあった椅子を二つ、両手に持つと、従業員用エレベーターの前で、ぼうっと立ってるーこの状況でのんびり立っているのも鈍いのやら、肝の据わっているのやらーマックスに声をかけた。「エレベーターを動かして」マックスはエレベータースイッチを押した。空のエレベーターは下に降りて行った。


「そいつをどうするんだ?」椅子を突っつきながらマックスは景子に聞いた。

「盾よ」

「そんなもん、吹っ飛ばされるぜ」

「ええ、だから、これはダミー、扉が開いて、真っ先に椅子が並んでいたら、反射的に人間はそれを撃つ。鍛えられた兵士には通用しないけど。金髪たちは急造された兵士だろうから、多分そうなるはず。そしてマシンガンがいったん止むと同時に左右の壁に張り付いた私たちが撃つ」

 マックスはぼりぼり頭を掻いた。

「相手が鍛えられた兵士なら、傭兵とか」

 景子は笑みを浮かべた。

「その時は、まあ外の太陽は見られない」

「それって出たとこ勝負というか、運だよね」

「そう、多かれ少なかれ、生き残る人間は運が良いのよ」

 マックスは納得したようだ。

「まあ、いいか」


 景子はマックスはやっぱり戦士だと思った。つまりリアリストだ。理想主義者は早死にすることを知っている。

「来るわよ」と景子が指さしたエレベーターの階数の番号地階B2が点滅し、そしてエレベーターが上がってくる。さて、鬼が出るか蛇が出るか。

ブーンと鳴るはずの無い音が聞こえるような気がして、景子はエレベーターを見た。

 来た!

 スーと開くエレベータードア、鬼がでるか蛇がでるか?

 エレベーターはすうと止まりゆっくりドアが空く。弾丸が雨あられ、とはなかった。


 そして、ぬっと金髪でない、フツーの中年おじさんが顔を出した。武装はしていない、が油断は死である。

 景子とマックスは椅子を蹴飛ばして、

「手を上げて」

 が、そこにいたのは中年の親子、ニ人の作業服を着た男、そして女二人だった。

 エレベーターに入った男が「あ、あんたたち、金髪の仲間か」

 マックスがマシンガンの銃口をあげて、

「まあ、あいつらはもはや、あたしたちを八つ裂きにしたいだろうね、その…何だ」

マックスは中学生くらいの少女を見て、口もごった。

「つまり退散していただいたわけよ」と景子がフォローした。


 男はほっとした顔になった。

「我々は金髪たちから逃げてきたんです。私らは清掃員だから、このエレベーターを知っていたんです。だから逃げたんですが、逃げたときは十人以上いたんですが……」

 こいつはお荷物ではない。清掃員ということは、このホテルの裏側を知っているということだ。こいつはついているかも。だが、


「お嬢ちゃん、中学生?」と景子が聞くと。

めずらしく髪のけっこう短いスレンダーな少女は答えた。

「はい」

「クラブは運動部?」

「はい、バレーボールです」

 マックスが聞いた。

「へーポジションは」

「アタッカー、ライトです」

 マックスは表向き企業のバレーボールの選手だ。

「じゃアタック、デイフェンス何でもできるわね」

 少女がうんと頷いた。


 少女は戦力になるか。

「私は清原と言うのですが、只の無力な男ですが、彼は塚田というのですが、ボクシングの日本ランカーです」と若い男を指した。ふーん使えるな。問題は清掃の女性二人と少女の母親だ。この際男は戦闘に参加してもらおう。

「清原さん、運動は?」と景子。

「ジョキングぐらいです、しかしマラソンは毎年出ておりますが」

「どのくらいで走るんですか?」

「四、五時間です」

 すると清掃の若い女性が手を上げた。

「あたし、MMAの選手です、若林といいます」

 おやまあ、ここは女の方が戦力か。


「清原さん、私たちは地下一階に行く予定なのですが、これは正解ですか?」

 清原さんは顔をしかめた。

「それは勧めませんね、地下一階の食堂には金髪がうようよしていて、食材を食い荒らしていますから」

 オーマイゴッド、こいつは危なかった。

「では、地下二階は?」

「基本的にゴミ収集場です。入口はちょうど西武線の位置にあります。ただ出口はその一か所です」

「ということは、出入口には」

「金髪がいるかどうか分かりません」

「ほかに逃げ道はありませんか」

 景子がそう言ったとき、マックスが、

「おい、作戦会議なら部屋に入ろうぜ、どうやら、ここには金髪はいなさそうだぜ」と廊下の方を見ながら言った。


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