表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/94

歌舞伎町戦争

 ドリームステージのテレビの画面にとんでもない数の警察車両と機動隊が展開していた。「おや、まあ外は大変な事になってるわね。シン、店から出られないわね」と夏生がシンに言うと、

「これは簡単に解決しませんよ」とシンが他人ごとのように言う。が、夏生もそう思う。靖国通り、明治通り、職安通りを黒のヘルメットと黒の防弾服、銀の盾が鈍く光る。もちろん銃を構えている。

 

 歌舞伎町はほぼ警官隊がコの字に展開していた。唯一開いている部分は西武新宿線新宿駅方面だ。だが警官隊が対峙しているのは装甲装輪車の砲門である。ライフルや拳銃でなんとかなるのか。多分機関銃も持っているだろう、ただ自衛隊が出てくるというのは、これが内乱とみなすということだ。多分かなりややこしい手続きがかかるだろう。



「皆さん、これは映画ではありません」とエキサイティングな女子アナウンサーが黄色い声を発した。ああ、もう煽ってるよ。でも本当に戦闘が開始されたら、マスコミは逃げるかな、まあ逃げるだろうと夏生は思う。

 シンは黙って画面を見ていた。


 ここは職安通りが近いから、ドンパチが始まったら、地上はやばいかな。ただ自衛隊が来るとしても、とても歌舞伎町には戦車は展開できない。結局ヘリと装甲装輪車だろうが、歌舞伎町は、あまりに入りくんでいる。まさしく地理をようく知っているに違いないゴールドヘアーが有利か。

「ここは地下だから、多少はましだろうね。しばらく籠城ね」と夏生。

 シンがうんと頷いた。

「ただ、政府が自衛隊出動を決めたら、これは只ですまないでしょう。ここも安全かどうか」

「そういう意味では、私たちもゴールドヘアーの人質ね」

「はい」

「いちおうシャッター閉めて、閉店札出しとこうか」 その時、シンが怪訝な顔をしてテレビ画面を見た。

「何か変だな」

「そう?」

「なにか、起きる」

「え?」


 夏生がテレビ画面を見返すと、機動隊の隊列の一部にボッと火がともった、と、信じられないことに、ボッ!ボッ!ボッ!ボッと空間上に炎が発せられたのだ。何だこれは、空間に突如として炎が出現したとしか思えない。場所は靖国通り。炎は空間を炎上して行くとしか言いようがない現象だ。炎の連鎖は機動隊を大混乱に陥れた。と、同時に、ちょうど紀伊国屋書店の裏通りでド、ドーン! と、明らかに爆発が起こった。なるほど、この前の爆発は予行演習か。多分ゴールドヘアーは機動隊展開をよんでいた。そして機動隊配置と同時に爆弾攻撃をしかけたのだろうが、とすると他にも、と思ったら、旧三光町の交差点の一角が吹っ飛んだらしい。次々と起こる変事にマスコミが振り回されている。ということで、スマホを覗くとネットは狂喜乱舞だ。


 見ると確かに紀伊国屋裏と三光町の一角から煙が上がっている

 それにしても怪しいのはあの炎だ。まったく火の気の無いところから突如出現した、あれは何?

「パイロキネシス」とシンがつぶやいた。

「何、それ?」

「何も燃料物が無い空間に火を点ける能力」

「へえええ、超能力みたい」

「超能力です」

「じゃ、新宿のどこかにそいつはいる?」

「ええ、あの炎の中に、人影が見えませんか?」

「え! 見えないけど」

「いや、よく見て、夏生さんなら見えると思うけど」


 夏生はテレビ画像の炎を凝視した。

「あれ?」

 何だ、背の低い人影が見えた。何だろう子供? そしてその傍に立っている人物も。

「あれ、子供?」

「いえ、よく見てください」

 シンの言葉に夏生はじいいと見た。すると髪の長い、そして椅子のようなものに座っている多分少女が浮かんできた。

「あれ、車いす?」

「ええ、多分」

 夏生が再び画面に目をやると、車いすらしきものに座った少女の瞳が画面いっぱいに輝いた。

 するとなんと、ドリームステージの空間に小さな火球が出現した。


「何! 何これ!」

「夏生さんどいて!」

 シンがバケツを持って、火球に向かって水をぶっかけた。

 怪異な、なんと怪異な、テレビの電波に乗る超能力、あり得ない。

「いったい、どうなってんの?」

「僕も分からない、いまのところ、少女が何者で、もう一人が誰か」

 シンはめずらしく、困惑している。夏生はそう思った。

 すると画面に空が写された。夏空の真っ青な空間があったが、徐々に見えつつあった物体がある。姿と同時に音も大きくなる。

 それは三機のヘリコプターだった。ヘリコプター特有の轟音が鳴り響く。

 三機のヘリコプターは靖国通りの空に近づいた。

 三機並んだヘリコプターの真ん中の機から人が乗り出し、と思ったら、瞬時に空に飛んだ。何だ! こいつ!

 だが、シンが唸った。

「リョウ」

 夏生は目を見張った。

「何!」


 宙に舞ったその人間―リョウはロープを片手で握り、ヘリにぶら下がり、新宿の空を舞っていた。するとヘリコプターが靖国通りの上に来たとき、どこからか、大音響が響いた。言葉にすればゴーとかドドドというべきか、そして大音響と同時に靖国通りが突如沈み始めたのだ。

 これは! アスファルト道路がひび割れ、道が沈んでゆく。

「リョウが道を破壊しているんです」とシンが落ち着き払い、凄いことを言った。

 まさに靖国通りが沈んでゆく。道が消滅する。たまたま駐車していた自動車は大変不運としか言いようがない、人間がいなかったのは幸いだった、まあゴールドヘアー軍団と機動隊が対峙している最前線にのこのこ歩く馬鹿もいまい。その轟音は確実に歌舞伎町を孤立させる。

「リョウの仕業というの?」夏生は唸るように言った。

 シンは頷いた。

「つまり壕です」

 壕!

「まさか! じゃこれだけでは」

「すまないでしょうね」


 シンの言う通りヘリはロープにぶら下がったシンを靖国通りから明治通り上空に運び、当たり前のように道路が沈んだ。そして最後は職安通りが破壊された

 これにより、新宿歌舞伎町にいたるには、ほぼ西武新宿線沿線の道路だけになった。

 まさに歌舞伎城である。

 夏生がきっと画面を見ながら言った。

「とにかく、夜まで待つわ、雅が来るまで待つ。この戦争は格闘技で何とかなるもんじゃない、マサは必要ない。勝負は夜よ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ