景子
高原景子は、その日の夜、遅くまで、自分の研究室に居た。何故なら、とある財団が公募する科学研究費を申請するための書類を作成していたのである。研究そのものではない。いかに自分の研究が世の中のために役立つかを猛烈にアピールする書類である。ノーベル賞の発表されるごとに、飽きもせずに科学者が口にするのは、日本の科学研究者に対する著しく偏向した研究助成のあり方である。即、物の役に立つ研究を最優先にして、基礎研究を著しくないがしろにする、国の研究助成の在り方に対する疑問が科学者から上がる。ノーベル賞の対象の研究さえ、そのざまだ。いわんや心理学など、企業の都合の良い論理を組み立てない限りは冷遇される現実がある。景子は美奈月優馬のバックアップがあるから、今はかなり恵まれているとは言えるが、あの老人が亡くなった時、今の地位を維持し、かつ飛躍するのは簡単ではない。故に、国、財団、企業に、研究助成を申請するために、山のような書類を作成するのだ。しかし、とにかく疲れる。時計を見ると、限りなく日付の変わる時間になりつつある。
景子は、外の空気を吸おうと、深夜のキャンパスに出た。キャンパスをぐるり見ると、かなりの窓の光が見えた。皆、同舟か、景子は苦笑いをして、ショートホープと携帯灰皿をポケットから取り出した。今どき、喫煙者とは、我ながら反省もするが、反省するだけなら猿でも出来る。酒と煙草、これが景子の悪癖である。
一本を箱の中から取り上げ、口に咥えて、カチリとライターに火をともす。最初の一息で、深く吸うと、次に「ふー」と煙を吐き出す。煙が暗夜に上ってゆく、その先に時計台が聳えている。
キャンパスにあって、威容を誇る、その時計台は、この大学のシンボル、それは日本のエリートたちのシンボルでもある。
仕事に疲れた、やや茫洋とした頭で、その零時に近くなる秒針を見ていた。そして、
時計の針が、カチッと鳴ったような気がする。聞こえるはずのない、その音を景子は聞いた。そして秒針が、ゆっくり逆転する様も見た。ゆっくり針が左に逆回転してゆく。景子は頭の中が茫洋としてくるのを感じた。目の前のキャンパスの風景がまるでカーテンのように揺らめき、そして消えてゆく。
景子は、ゆっくり、地に伏していった。
ハッと景子は気が付くと、景子の眼前に、不思議な光景があらわれた。何故なら、それは十二年前の私が、そこに居たからだ。一番近い感覚は、それが映画のワンシーンを見ている様だったと言えば良いか。目の前に二十歳の、勉強は出来るが、性格がきつい、恐いものなしの小娘が映っている。但し、本来の景子は自分のいる位置が分からない。景子は、自分の存在が眼と脳だけになった。そういうしかなかった。
そこに流れるのは、十二年前の景子だった。
そのころ、景子は、薬学部で論文作成のために、連夜東大の研究室に詰めっきりだった。そして、その日、ネット上に、そのサイトを見つけたのだ。景子はシアン化カリウムを扱っている業者を東京でいくつあるのか調べていたのだ。シアン化カリウムとは俗称青酸カリと呼ぶ。毒物としては有名だが、実は産業薬物である。簡単に言うと、廃材から金銀を抽出する場合などに使う。毒物としての管理は法によって定められている。一般の人には簡単に手に入るものではないが、大学の研究室では、手に入れることが出来る。あくまで研究用であり、毒物であるため厳重に管理しているが、大学の工学部、薬学部、理学部の研究室は様々な薬物の宝庫であることは、見過ごされがちだ、そして大学の研究室の下働きは院生や学部生である。毒物の入手は、一般の人より、若き研究者の方がはるかに容易である。
景子は薬剤の毒性についての研究を行っていた。薬は様々な用途に使われる、良い方にも、悪い方にも。ちなみに青酸カリで人間は簡単に死ねない、基本的に窒息死だから、かなりの確率で死ぬまでに地獄の苦しみを味わうはずだ。だが、あまりそのことは知られていない。テレビドラマの死の表現が人々の頭に刷り込まれているからだ。テレビのような大手メディアで、死の実相を伝えることはハードルが高い、マスコミで死の実相が本気で語られることは稀である。人間の死がメディアでは軽い、景子はそう思う、だから薬物の毒性を考える研究を行おうと思ったのだ。
その日、景子はパソコンでシアン化カリウムを扱う業者を検索したところ、妙なサイトを見つけたのだ。それはシアン化カリウムを扱う会社の、リンク先の片隅にひっそり登録されていた。かなり下位のリンク先だから、見つけたのはかなりの偶然だ。それは「ドクターシアンのクリニック」というふざけた名前のサイトだった。まじめに取り合うネーミングではない。そして景子は面白半分にクリックした。
ここまでの過去を見ている景子は過去の自分の想念が鮮やかに蘇っているのを感じていた。そして、この時、運命と言うものが動いたのだと、はっきり理解した。
サイトの内容は、サイトの趣旨、毒物についての一般的な記述、よくある質問、ヘルプで構成されていた。まず一つの問題は毒物についての記述だった。様々な毒物の説明が記載されていたが、その説明が薬学部の学生の眼でも正確なものだった。薬品以外の毒物も記載されていたから、そのすべてが正しいとは言い切れないが、少なくとも景子の知識の範囲内では、それは正しい。このサイトの運営主は素人ではない。想定される質問に的確に記述している。しかし、最大の問題はヘルプの最後の項目、ちいさく書かれた項目、すなわちシアン化カリウム、すなわち青酸カリを入手可能とあることだ。これは! と景子は驚いた、さんざんサイト内で毒物の危険性を正確に記述しているにも関わらずに、シアン化カリウム―青酸カリは手に入ると言っている。これはどういう意味か、サイトの運営者が青酸カリを入手可能と言っていることは間違いない。だが、わざわざそれを宣言するということは暗に自分にはシアン化カリウムを配布可能だと言っているのではないか。さらに、それは自殺に使うことが出来ると示しているともいえる。このサイトの運営者が専門家で自殺の助けをしているとしたら大問題だが、一方、このサイトには青酸カリの効果を細かく記述している、青酸カリが簡単に安楽死できるような毒物ではないことを説明している、だとしたら、青酸カリを他人に渡すということは矛盾している。景子は考え込んでしまった。とにかく薬学を志す者としては、見過ごすことはできない。景子は「ドクターシアンのクリニック」というサイトの全てをプリントアウトした。
急ぎ研究室のパソコンを閉じて、その資料を手にアパートに帰った景子は、プリントアウトした「ドクターシアンのクリッニック」を再び読み始めた。
この時、景子は考えた。問題は「シアン化カリウムを入手可能」をどう読み解くかだ。考え方は二つ、ひとつめは単に自分は青酸カリを入手できる業者か研究者であると言っているだけ。二つめはサイトを読んでいる人に自分は青酸カリを渡すことができると言っている。
ひとつめの可能性は、かなり悪質な意思が読み取れる、さんざん青酸カリを自殺に使うと苦しむと言っておきながら、入手可能とは悪意そのものだ。もっと言えば、そんなに苦しんでも自殺するのかと挑発しているとも思える。だが、逆にその挑発によって自殺は困難だと警告しているとも取れる。いずれにせよ青酸カリは他者には渡らない。
二つめは、青酸カリを他者に渡すということである。その目的は限りなく自殺に使うという可能性が高い。これもさんざん青酸カリでの危険性を述べるということと矛盾はしているが。やはり二つめが重要だ。この場合、どうやって青酸カリを渡すのかということになる。一見して、その方法は見当たらない。だが、景子が青酸カリを他者に渡すとしたらどうだろう。その場合、絶対に間接的な方法は取らない。かならず直接渡す。ではその方法は? 連絡手段は? 多分、このサイトに鍵があるのは自明だ。不特定多数に取得可能と言っているわけだから、何かある、このサイトのどこかに連絡手段が、このサイトの運営者が誰か分かる情報があるはずだ。
シアン化カリウム―青酸カリの記述を改めて見るが、薬学上はごく当たり前の記述であり、自殺をする人には、いわば窒息死で、死ぬまで地獄の苦しみを味わうとある。いわく、「自殺志願者にはお勧めしません」と皮肉とも取れる言葉を表している。だが、追加項目があった。すなわち「シアンは色の三原色である」という記述だ。確かに色の三原色とはシアン・マゼンタ・イエローである。色の原色とは、その色の混合であらゆる種類の色を作ることが出来る色のことだ。但し白と黒は色彩が無いので、これを除く。またこの原色の一つは、他の二つを混合しても作り出せない。これを指しているのだが、わざわざこれを書く必要性はサイトの趣旨からは無いと言える。色の話と薬の話はまったく別のものだ。
「うーん」と唸って景子は寝っ転がった。このサイトのプロパイダに連絡して、注意を喚起するか、いやもともとのサイトの業者に連絡するか。だが、何を注意すればいいのだろう。それが分からない。結局、このドクターシアンに連絡を取らなければ何も分からない。では、どうやって連絡を取る? 連絡手段が問題だ。ドクターシアンのクリニックに秘密の入り口があるとすれば、それ自体が怪しいことになる。やっぱりそこから始めよう。多分ヒントは「シアンは色の三原色のひとつである」だろう。この記述だけが、シアン化カリウムとは関係ない記述だ。もっと言うと、薬品に関係ない記述はこれだけだ。色の三原色とは何を指す?
改めて、パソコンを立ち上げて「ドクターシアンのクリニック」を表示する。この中に連絡先があるとすれば、多分メールアドレスの可能性が高い、電話はさすがに無いだろう。 とすれば●●@○○.comとなる可能性がある。この●●はユーザー名、○○・COMはドメイン。この二つが何かだ。
景子は、サイトの端々と、テキストを照らし合わせる。色の三原色とはシアン、マセンタ、イエローである。ここから、ふたつの色を選んでユーザー名とドメインに当てはめるというのはどうだろう。シアン、マセンタあるいはシアン、イエローンというふうに、順番に当てはめてゆくのだ。だが、ユーザー名とドメインはまず英数字だから英数変換しなければならない。それも英語なのかローマ字なのかで変わる。これは単純労働だが根気がいる。その作業をして、無駄だった場合には大抵の人間はやる気をなくすだろう。それに、そんな単純な仕掛けだろうか、これ以外のメールアドレスに繋がる情報はあるのか、とにかく一つの情報だけで動くのは間違いだと思う。では何がある?
景子はすうと息を整える。そしてテレビをつけた。あまりテレビは見ないから、チャンネルが何か、番組が何かは分からない。画面にあまり意味のない言葉と笑顔だが、決して笑っていない顔が複数映っている。どうやらクイズ番組のようだが景子の大学の学生が出ているらしい、まあ日本最難関大学だから、クイズ番組なんかには重宝されるんだろうな。それに女子で顔がまあまあだったら、番組プロヂューサーは嬉しいんだろうなとは思う。基本的にこの大学の女子が動物番組の珍獣なんかと同じ位置にあることは理解できる。
ぼうと見ていたら、クイズが出題された。他愛もない、カタカナを漢字で読み、その漢字を同じ音読みの漢字に変えればいいだけの問題だ、ナンカイを難解→何回とすればOKだ。と思ったら、ハッとした。急いで、パソコンを操作して「ドクターシアンのクリニック」のサイトをリンクしている元のサイトを見る。それは「レインボー興産」だった。
しばらく考えていた景子は、やがて「そういうことか」と呟いた。
そして景子はその日のうちに、ドクターシアンのメールアドレスを探り出して連絡を取った。連絡用にフリーメールを作ったが、果たして返信はあるかどうか確信はもてなかった。自分が薬学部の学生だと名乗り、薬学のウンチクと疑問を送ったから、景子が素人ではないことは分かるはず。できれば彼もしくは彼女の狙いは何か、それを聞きだしたい。そして、その人の答えは、PDFで送ってきた、ふーん珍しいな。だが、そのPDFの片隅に記されたロゴを見て、景子は仰天した。これは! 慎重にしなければならないなと景子は思った、このロゴは景子の属する大学の研究室のものだからだ。論文は基本的にこのロゴの入った用紙を使うことになっている。既出の論文の盗用に心理的な歯止めを掛けているのだ。あくまで心理的なものだが、明らかに既出の論文とは異なるロゴ付きの紙面はハードルとしては役に立つ。景子たちは、日常的にオリジナルに向き合うのだ。だから、これを使っているのは景子の大学の人間だ。だが、簡単に素性は分からないだろう。まずは相手の年齢を、性別を聞きだそう、相手が男だったら、自分は二十歳の女子学生と名乗ったら、まず返答が帰ってくる。女の場合は難しい、つまりは警戒心の問題だ。
そして、結論を言えば景子はこのサイトの運営者の田村健二を突き止めたのだ。田村健二は景子と同じT大の大学院生、そして同じ研究室の先輩だった。それだけなら良かったが、景子は健二と親しかった、つまり恋愛関係だったと言う訳だ。ものすごい偶然だが、健二の生真面目な性格の奥に潜む社会に対する屈折した思いを知る景子にとって、健二がこのサイトを立ち上げた意味は深刻だと思ったのだ。社会に対する屈折した思い、ありふれた言葉だ。そんなもの皆抱えている、しかし健治は根本的に病んでいると景子は、彼と付き合うなかで分かって来たのだ。彼は正義感や使命感が強すぎるのだ、正義も過ぎれば毒なのだ。健二には他者より自分に正義をより要求する。強い使命感と言ってもいい。これは彼の正義感や使命感が達せられなければ自己否定に通ずる、その延長線上に自殺がある。それほど強い正義感を有するから病的と景子は思っていた。そして、それは、たいていの場合は狭量だ。
一転、健二を責める景子に風景が移った。健二は長髪の、男としては痩せ方、長身で、額に縦一文字の皺が深く、悪く言えば神経質そうな、いい意味でいえば繊細な目をしばたかせている。
「だから! このサイトは何よ? あなたの目的は何?」
景子がパソコン画面を指して、青年を難詰している。いかにも、気が強く、正義感の強い女の声だ。本当に大事なことは、静かに、落ち着いて言うべきだということを、この時、景子が知ることが出来たのは、全部が手遅れになった時だった。
草薙は答えない。
「まさか、シアン化カリウムを他人に渡した、なんてことはないよね」
「ない」と答える草薙に容赦の無い言葉を景子は投げつける。
「本当に? じゃ、何のためにサイトを作ったの、何のためにシアン化カリウムを入手可能なんて書いたの?」
「それは、その…」
「何よ。分かるように説明して、私に嘘つかないで」
「これは、その…自殺の防止だ」
これは景子も驚いた。
「自殺の防止に、なんでシアン化カリウムなの!」
「……」
健二は答えずに逆に景子に聞いた。
「それにしても、よく僕のメールアドレスが分かったな」
景子は健二を見据えて答えた。
「レインボー興産のレインボーは虹という意味。虹は二字。つまり虹色の七色から二字取れば、色
の三原色を漢字にしたものとなる。すなわち赤・橙・黄・緑・青・藍・紫から橙、藍をとれば青、緑、赤 紫、黄が残る、これは青緑、赤紫、黄の色の三原色になる。レイインボーから色の三原色になるには二字をとる。つまり藍と橙を取ればいい。それが二字の正体。それを英語変換か、ローマ字変換すればいい。多分それがユーザー名とドメインの正体」
パチパチ、健二が苦笑いをして拍手した。
「正解、景子、テレビのクイズ番組に出れば、結構人気者になるぞ、東大、女子、それに美人だ」
景子は本気で怒った。
「くだらないことで、ごまかすな!」
健二は黙った。
「それで、私と同じにメールアドレス見破ったのは何人?」
「景子を含めてちょうど十人」
「シアン化カリウムを渡したのは何人?」
健二は首を横に振った。
「それは言えない」
「何故?」
「約束だから」
「どんな約束?」
「死ぬまで言わないという約束」
景子は、いっかい冷静になろうとした。それ自体が冷静ではないのだが若いと、それに気が付かない。
「じゃあ、聞くけど、あなたはシアン化カリウムを誰かに渡したことは認めるのね」
健二は「ああ」と頷いた。
「あなたに想像力は無いの」
「何の想像力?」
「何って! 青酸カリを渡したら、どんな事故があるか分からないじゃない!」
「事故は無い」
「何で、そんなことが言い切れるの」
「彼らは自殺用にシアン化カリウムを手に入れたから」
これには驚いた。
「あなた、自分が、何を言っているのか分かっているの、自殺用に渡したなんて、それほとんど殺人に近いじゃない!」
健二はフッと笑った。景子はカッとなった。
「何がおかしいの!」
「だって、自殺するはずがない、人間は簡単に自殺できない、特に自殺手段を持っている時には余計そうだ」
「どういう意味?」
「いつでも死ねると分かると、かえって人間は自殺をしないんだ。僕のシアン化カリウムはお守りなんだ。いつだってそうさ、現に誰も死んでない」と、あくまで草薙は落ち着いて言った。景子は草薙がこういう態度をとる時、彼が本当に言葉通りのことを信じているのだと知っていた。だが、
「それは、むしろ、精神科の問題よね。薬学部の学生の問題じゃない」
「精神科では、何も解決しない」
「万が一、誰かが死んだら、どうするの!」
「その時は、僕も死ぬよ」
景子は天を仰いだ。これだ、これが、彼の病んだところだ。自分自身の正義を信じて疑わない、そして万が一の時は自殺して責任をとると本気で思っている。行き過ぎた正義感と、間違った思い込み、そして彼が自身の命を軽んじているには明白だった。
「私、警察に行くわよ」
「…………」
「何とか言って!」
「君は君の思う事をすればいい」
「それが。仮にも彼女に言う事!」
「この際、それは関係ない」
「何! どうして、じゃ私はあなたにとって何? こんな、とんでもない事隠しているなんて」
「僕は、君といる時は死を考えずにいることが出来る、だから君といる」
景子は拳をぐっと握り締めた。
「何、生きることも死ぬことも含めて愛じゃないの、私だって死ぬ。それは怖い、こんな気持ちは誰だってあることよ」
健二はうつむいてボソッと言った。
「君には分からない」
「何! それ、じゃ私はあなたにとって何なの!」
若い。若い、二人とも。未熟な思考と、論理がぶつかっている。最悪の事態に対するリアルで、利口な論理が無い。健二は確かに歪んだ使命感を主張しているが景子もまた未熟な正義感を相手にぶつけているだけ。どちらも相手を説得できる方法を考えず、自分の論理を主張するだけ、これでは何の解決にもならない。ここまでの過去を見ながら景子は思う。健二を狭量と責める過去の自分に言いたかった。あなたもまた心が狭いと。健二と過去の景子に共通するもの、それは器量の小さいことだ。だが、二十歳で器量の大きい人間はめったにいない、それは経験を積んで大きくなるのだ。人間の器量とはそういうものだ。それを後で景子は思い知る。
そして、世界は暗転した。




