姫と忠僕
「ねぇ、そこのあなた」
「は、はい! 私でしょうか姫様」
「今そこにはあなたしかいないでしょう? ホント馬鹿ね」
「は、はい……それで何の御用でしょうか?」
「この城ってホント退屈だわ。そう思わない?
出ていきたい! ……と言っても私はこの城の顔ですもの
すぐ連れ戻されちゃうのはもうわかっているから私、考えたの」
「は、はあ。なんでございましょう」
「あなた、ちょっと、よその人をここに連れてきてよ!」
「ええ! 私がですか!? でも……」
「何よ、私の命令が聞けないの?」
「い、いえとんでもございません。でも、連れてきてどうするんです?」
「そんなの決まっているでしょ! 色々と外の話を聞いてみたいの!」
「ええ……でもその後は? 一緒に暮らすのならやはりいい人が」
「はぁ? そんな訳ないでしょ? どういう頭してんの? 飽きたら帰らせるわよ」
「で、でもここに招くとなると色々と国の機密情報なども
知られてしまうことにはなりませんかね……」
「口封じはちゃんとするわよ。私はあんたと違って考えているの!
何よ、まだ何か言いたげな顔ね!」
「つ、連れて来るにしても、ど、どうすればいいか……私、口下手ですし……」
「はぁ……それでもやるの! 咬みついてでも連れてきなさい!
いいわね! ほら! 行って!」
「はぁ……姫様には困ったものだ。まあ子供くらいなら私でも連れて来れるかな。
地上に出たらそうだな……言われた通り、咬みついて
海に引きずり込んでみるか……」