数日後 周りの変化?
ここから第六章になります。タイトルの言葉に少し触れる予定です。よろしくお願いします。
「クスクス。ねえ見た?あの二人の闘い。」
「はい。流石というべきでしょう。あれだけの実力を見せてくるとは。」
「しかも、あれでも全然本気を出してなかったんじゃない?」
「はい。私の見立てでは……おそらく三割も出していないと思います。」
ここは王都ヒューマニア。御子と召使いが模擬戦の感想を話し合っていた。御子は楽しそうに、召使いは深刻そうな顔で感想を述べ合っている。
「クスクス。とんでもないパワーだよね。でも、それよりも気になる事があったんじゃない?」
「そうですね。貴方も気になりませんでしたか?ジェイ。」
「ひ、ヒィィィ!」
床に縛られ転がされているのは、ケモリアへの侵攻を失敗した騎士、ジェイである。彼の顔を見下しながら、召使いが何か確認を求める。
「貴方を撤退させたのは……この魔族に間違いありませんね。」
「は、はい!このガキが俺の部隊を……!」
「やはりそうでしたか。……衛兵、この男を連れて行きなさい。」
「い、嫌だ!俺を牢屋から出してくれよ!嫌だァァァァァァ!」
ジェイが騎士に連れられ姿を消す。その様子をクスクスと笑いながら御子は見ていた。
「まさかへカテリーナと繋がりがあるなんてねー!驚きだよー!」
「下手を打てばすぐに奴が出てくるでしょう。そうなると迂闊に手は出せません。」
召使いの忠告を受ける御子だが、彼女はすぐに手をポンと叩く。その様子は何かを思いついたようだった。
「でもさ、この子が見たのはさっきのジェイとその部下くらいだよね?これって上手く使えば利用できるんじゃない?」
「確かに……ケモリアの件は[暴走した騎士の凶行]です。ヒューマニアへの[誤解]を解いてもらえれば、へカテリーナの力も利用できるかもしれませんね。」
「今はあちこちで忙しいからねー。協会は当分落とせなそうだし、ここはうまくやり過ごそうか!まずは魔の国、デーモニアかなー?」
クスクスと笑う御子。召使いはその様子を無表情で見ていた。
◇◇◇
「おはようございます!オルガさん!」
「ああ!おはようスノウ!」
協会の模擬戦から数日後。二人は宿屋でいつも通りに食事を取りながら、今後の事を話し合っていた。
「オルガさんはこれからどうします?大きい依頼も終わっているから、自由な時間が出来ましたよ!」
「俺は続けてクエストを受けていくつもりだ。これからランクを上げるなら、まずは実績と経験が必要だろう。」
「私はしばらく特訓ですかね。前回の事が相当響きましたし、もっともっと強くなります!」
「慌てるなよ。急いては事を仕損じる、だぞ?」
「フフッ。分かってますよ!」
二人は外に出て協会へ向かう。その最中、他の冒険者とすれ違うと、ひそひそ話が聞こえてきた。
(あの子でしょ?マスターと知り合いの子は?)
(街の防衛も成功させたそうじゃないか。凄いやつだな。)
(今のうちに仲良くなった方がいいんじゃないか?きっと甘い汁を吸えるぞ!)
(ちょっと、声掛けて来いよ!)
「…………。」
聞こえた声に思わず足を止めるスノウ。それを見たオルガは無理やり腕を引っ張って協会へ足を進める。
「ほら!行くぞ!」
「あっ!ちょっと急に!?」
「周りの事は気にするな!お前はやりたいようにやればいい!」
「……ありがとうございます!」
そう言って腕を引っ張るオルガの背中を見て、スノウは安心するのだった。
◇◇◇
「あちゃー。やっぱりか……。」
「クリス?どういう事だ?」
「いやー!先日スノウちゃんとマスターの関係が分かってから、問い合わせが結構来るのよ。パーティーへの勧誘や、合同で依頼に行きたいとかね。」
クリスは手元の書類を見ながらオルガへ話している。スノウは掲示板から適当な依頼を探している最中であった。
「マスターと繋がりがある子だからね。そういう繋がり欲しさに集まる人も結構いるのよ。その点……オルガ君は心配無さそうね。」
「そうか?俺もあいつの繋がり目当てかもしれないぞ?」
「フフッ。二人はそういう冗談を言える関係だから問題無いわ。それに長い付き合いだしね。そんなの無くても一緒にいるでしょ?」
「もちろんだ!」
腕を上に挙げてアピールするオルガ。クリスは手元の書類を端に置き、オルガへと向き直った。
「では……今回はどんなクエストに」
「あら~♡かわいい子ね~。」
「……は?」
オルガがクエストを探そうとした時、後ろには一人の冒険者が立っていた。
「ウルフ討伐依頼!前回やった時は不完全だったから、今なら行けるかな……?よし!行ってみよう!」
「ちょっとまったー!」
「えっ!?」
掲示板から紙を剥がして受付へ歩くスノウ。すると後ろからこっそり冒険者がついてきていた。その人物はスノウの肩に手を掛け、話しかけるのだった。
「ちょっとそこのお姉さん!もしよければ、拙者と一緒にクエスト、どうでござるか?」




