反撃、水槍アクアリウム!
へカテリーナとフーシャ、二人の闘いは依然として続いている。フーシャは自分の魔力を高め、槍のペンダントをギュッと握りしめた。
「行くフミャ!展開、[水槍アクアリウム]!」
フーシャの掛け声と共に、ペンダントがその形を変える。それは青く、先には鋭い三叉が備わった槍へと変化した。
「さ、始めるフミャよ!」
「また瞬間移動!すばしっこいわね……行きなさい、伝導玉!」
槍を持ったフーシャは高速でコロシアムを駆け回る。伝導玉は彼女を追尾するが、彼女の姿が消えるたびに一瞬動きを止めてしまう。
「伝導玉が捕捉出来てないわね。そこまで早く動けるとは……!」
「そこフミャ!」
「甘いわ!」
槍を突き立てるフーシャ。その攻撃を魔力を込めて防ぐへカテリーナ。しかし突き立てた水槍はトロッと溶け出し、大量の水となって彼女を包み込んだ。
「っ!?」
「捉えたフミャ!そーれ、私が抱いてあげるフミャー!」
水の塊を思いっ切り抱くフーシャ。水による拘束でへカテリーナは動けない。そこに迫って来るのは、フーシャを狙う伝導玉である。
「もがっ、もっ、も!?」
「どうフミャ!指示は届かないフミャよ!」
「んー!」
伝導玉は雷光の力を使い、フーシャを攻撃する。しかし彼女は瞬間移動でそれを回避。雷光はへカテリーナを包む水へ吸い込まれ、それが発光する。
「んーーーー!?」
「さっすがご自慢の強い魔法フミャ!自分にも効くんだから!」
コロシアムの端であくびをしているフーシャ。すると標的を察知した伝導玉は彼女の下に再び向かう。そのうちの一つが劫火の柱を振り回しながら、彼女へ突進した。
「おっと危ない!熱いのは苦手フミャ。」
フーシャは手元に魔力を集めると、槍が再び現れた。それを伝導玉に向け、狙いを定めた。
「包め!水包み!」
フーシャが技を叫ぶと同時に槍の先端から水の玉が作られ、伝導玉に飛んでゆく。すると玉を包み込み、それは地面にコトンと落ちてしまった。
「後の二つもフミャ!」
すかさず水の玉を作り、残りの伝導玉も包み込む。この二つも地面に落ちて、動かなくなった。
「伝導玉は封じたフミャ!これで私の勝ちフミャー!」
◇◇◇
「凄いぞ!やるじゃねえかマネージャー!」
「オイオイあんなに強かったのかよ!?それならそう言ってくれれば良いのによ!」
「何よアイツら、さっきまでマネージャーを馬鹿にしてたのに……。それにしても、一気に逆転したわね!」
「当たり前よ!これでこそマネージャー!」
レイとモルモーは興奮した様子で闘いを見守っている。そして他の観客も、思わぬマネージャーの奮戦を見て、声援を送る者が現れている。
「後は……マスターの動き次第ね。まさかこれで終わりって事も無いでしょう。」
モルモーはびしょ濡れになったへカテリーナを見ながら、これからの動きを警戒するのだった。
◇◇◇
「やってくれたじゃない……!流石はマネージャーって事ね……!」
「やーい!相手を馬鹿にしてたから足元すくわれてるフミャ!」
さっきまでとは逆に、フーシャがへカテリーナを挑発する。するとへカテリーナは伝導玉を浮遊させ、手元のカプセルに戻した。
「どうフミャか!βクラスのアーティファクト、水槍アクアリウムの力!魔力に反応して形や硬度を変えられる、私に相応しい槍フミャー!これでマスターも倒してやるフミャ!」
「そう……。ならここからは手加減は無しよ!恐れ慄きなさい!」
へカテリーナはそう言って、一本の杖を取り出す。それは自分の身長と同じ長さの、黄金の杖。協会に乱入した時に持っていた杖その物である。
「アーティファクトにはα、β、γの3クラスがあるのは知ってるわよね?今から出すのはその最上級!γクラスのアーティファクトよ!」
「遂に来たフミャね……!最強の冒険者の持つ、最強のアーティファクト!」
フーシャは水槍を構えて攻撃に備える。一方へカテリーナは杖を彼女へ向け、そっと魔法を詠唱した。
「フレイム。」
「フミャ?」
杖から飛び出したのはただの炎。それはフーシャに向かってゆっくりと飛んでゆく。
「カティ!?何してるんですか!そんな炎じゃフーシャさんには」
「いや、よく見ろスノウ!アレはただの炎じゃ無いぞ!」
「セインさん!いやいや、どう見たって普通の攻撃でしょう!?」
「見た目で威力を判断するな!アレは……!」
押されているへカテリーナを心配するスノウ。セインは落ち着いてこの状況を眺めていた。
「……この感じ!危険フミャ!回れ水槍!」
フーシャも何かを感じ取ったのか、槍をくるくると回転させる。すると槍は円形に溶け出し、水の盾へと姿を変え始める。
「展開、流水壁!」
「いい盾ね。でもそれで防げるかしら?さあ、行きなさい!」
完全に盾の形になった槍に丁度炎がぶつかる。するとジュワーと音をたてながら、熱湯になった水があちこちに飛び散りだした。
「何この威力!?負けられないフミャー!」
炎によって盾の大きさはどんどん小さくなる。その後ろではフーシャはそれを自身の魔力で補い、ひたすら防御に徹している。
「ふ、フミャー!?」
「あ、危ない……死ぬかと思ったフミャ……。」
「やるじゃない。今の攻撃を受け止めるなんてね!」
辺りを蒸気が包み込む中、お互いはそれぞれ武器を構えて相手の出方を伺っている。するとへカテリーナが口を開いた。
「γクラスアーティファクト、[月の杖]。効果は単純よ。持ち主の魔力を何倍にも増幅して使用できる。並の使い手だと戻った魔力に耐えられず破裂するけど、私なら問題無く使えるわ。」
「と、とんでもないパワー!これが最強のアーティファクト……!」
「さて、一つ提案があるのだけれど、いいかしら?」
「フミャ?」
杖の先端をフーシャに向けつつ、彼女は話を続ける。
「観客もだいぶ貴方の事を見直したみたいね。……この勝負、降りてもいいのよ?」
「……どういう事フミャ?」
「貴方の威厳も取り戻して、私もマスターとしての実力を見せつけられたわ。お互いの目的は達成したし、もう良いんじゃないかしら?このままやっても私が勝つだけよ?」
そして彼女はフフッと笑いながらフーシャを見る。だが、フーシャは首をブンブンと横に振った。
「お断りフミャ!ここまで来たならマスターに勝つ!それで私の力を皆に見せつけてやるフミャ!」
「……忠告は確かにした。これが貴方の選んだ運命よ?」
「構わんフミャ!かかって来るフミャ!」
堂々とした構えでへカテリーナに対抗するフーシャ。二人の闘いは、いよいよ終わりに近づいていた。
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