増える攻撃、伝導玉!
「あちゃー。もう始まってたみたいよ!」
「ウム!ここからは我々も応援に入るとしよう!」
協会の職員であるクリスとガルスがコロシアムに着いたときには、既にへカテリーナとフーシャが闘いを始めていた。二人はあらかじめ予約していた席に座り、戦況を観察する。
「お?良いんじゃないかな!今の所はマネージャーが押してるわよ!」
「見事なものだ!だが、相手は最強の冒険者。ここまでは遊びの可能性もあるな!」
「確かにね……。油断なんてしないと思うけど、気をつけてもらいたいわね。」
二人は話しながら、コロシアムの闘いの続きを見るのだった。
◇◇◇
「行くわよフーシャ、これが私のアーティファクトよ!」
へカテリーナがポケットから出したのは小さなカプセル。指でつまみ、それを地面に落とすと煙が立ち込め、中から手のひらサイズの玉が現れた。
「フミャ?さっきの魔力の玉に似てる?でも通じないフミャよ!」
「さあ、どうかしらね?」
するとへカテリーナは再びポケットに手を入れ、次はカプセルを二つ取り出す。それも地面に落とし、合計三つの玉が彼女の側に集まった。
「行くわよ!伝導玉!」
へカテリーナの指示と同時に、三つの玉は一斉にフーシャの下へ飛んでゆく。フーシャは蹴り落とそうとするが、的が小さく当てる事が出来ない。
「すばしっこいフミャ!当たらないフミャよ!?」
「喰らいなさい!ライトニング!」
「か、雷フミャ!」
へカテリーナから撃たれたのは巨大な雷。それを見たフーシャは即座に地面を蹴って横方向に転がり避ける。その様子を見たへカテリーナは何故か笑みを浮かべている。
「かかったわね!さっきのお返しよ!」
「フミャ!?」
雷光が狙ったのはフーシャではなく……伝導玉の方であった。攻撃を受けた伝導玉は一斉に輝き出し、猛烈なスピードでフーシャへと迫る。
「速い!逃げるフミャ!」
「逃さないわよ!撃ちなさい、伝導玉!」
三つの伝導玉が光り、フーシャに向けて雷光を放つ。それはへカテリーナが撃った物と全く同じ物だった。
「フミャ!?コピーフミャか!?」
「便利でしょ!βクラスのアーティファクト、伝導玉。私の攻撃と同じものを再現して、それで攻撃するの。」
「つ、つまり……本体含めて攻撃の数が四つになるフミャか!?早く撃ち落とすフミャ!……ウインドストーム!」
再び魔法を放つフーシャ。しかしそれは伝導玉を僅かに揺らしただけで、ダメージにはなっていない。
「次はこれよ!ヘルフレイム!」
フーシャの足元が急に赤くなり、彼女はそれを避ける。そこから吹き上がるのは炎の柱。するとその柱に伝導玉が突っ込んでゆく。
「ま……またフミャか!?」
「魔力の節約って良いわよねー。どんどん強力な魔法を使えるんですもの。」
涼しい顔をしているへカテリーナと反対に、フーシャは地面を転がりながら必死に攻撃を回避し続ける。そんな彼女に炎の柱を吹き出す伝導玉が迫っていた。
「ふ、フミャー!?そんなの避けきれないフミャァァァ!?危ないフミャー!」
◇◇◇
「凄い!これがカティの戦い方ですか!頑張ってくださーい!」
「物量で押す戦法だね。それも一個一個がとっても強いよ!」
「私には真似出来ません……。これが、マスターの実力……。」
スノウは喜び、気絶から復活したナッツとリゼは驚愕の表情を浮かべている。圧倒的なへカテリーナの攻め方、それを見て他の観客席でも歓声があがっている。
「流石は協会のトップ!マネージャーなんて目じゃないぜ!」
「しかし、さっきから避けてばっかだな。やはりマネージャーは雑魚だったんだな!」
「アイツら……マネージャーの事を馬鹿にしてるわ。一発殴ってこようかしら?」
「その必要は無いわ。貴方も見れば分かるんじゃない?」
「……アンタ、戻ってきたの?」
「ええ。マネージャーを推す者同士、一緒に応援しない?」
レイの席の隣にモルモーが座り、二人はポップコーンをつまみながらフーシャを応援をしている。
「今はマネージャーは押されてるわよね?さっきと違って防戦一方よ?」
「確かにそう見えるわよね。でも、実際はマネージャーがマスターを手玉にとってるのよ。」
「……え?」
「慌てて避けてる様に見えて、マネージャーには全部分かってるの。どこに逃げれば安全か、自分の負担にならない場所はどこか、ってね。」
モルモーの指摘を受け、レイはフーシャの顔に注目する。彼女は一見慌てており、ギリギリで攻撃を避けている。しかし……
「笑ってる……?」
「ええ。彼女には見えてるのよ。」
一瞬、慌てている顔から笑顔が見えた。そしてまた慌てた顔になり、攻撃を避ける。それも一見ギリギリのようで、「それが分かる」冒険者の目から見れば「最適な場所」へ。
「もしかして、マネージャーは!?」
「魔力が底無しでも……そしてどんな強者にも……必ず隙は出来る!彼女はそれを待ってるのよ!だから心配はいらないわ!」
◇◇◇
雷に炎、二つの攻撃に襲われるフーシャ。彼女は必死に攻撃を避けているが、遂にバランスを崩し、その場に尻餅をついてしまった。
「あっ!?立てないフミャ!?」
「ここで終わりかしら?始めに言った通り、それなりには楽しめたわよ!」
へカテリーナは伝導玉を飛ばし、フーシャへ接近させる。二つは雷光、一つは劫火の魔力を宿し、彼女を取り囲んだ。
「さあここまでよ!勝利は頂くわ!」
へカテリーナは伝導玉に指示を出し、三つの玉は一斉にフーシャへ攻撃を放つ。コロシアム一帯に雷撃と炎が巻き起こり、辺りを爆風が包み込んだ。
「お疲れ様。まあ、マネージャーの威厳は保てるんじゃない?私相手に戦えたんだから。」
「そうフミャね。私相手にここまで戦えるとは、流石マスターフミャね。」
「……!?」
ハッとしたへカテリーナが後ろを振り向くと、そこには今仕留めたはずのフーシャが立っていた。その足元には伝導玉が三つ、転がっている。
「今の攻撃を!?どうやって!?」
「さぁ、どうやったフミャかねー?でもマスター、それと私をちょっと馬鹿にしている他の人達!これだけは言わせてもらうフミャよ!」
何故かへカテリーナだけでなく、観客席へも大声でアピールしながら喋るフーシャ。そして、その直後。
「あまり私を舐めない事フミャね。」
「っ!?」
コロシアムに広がっていたへカテリーナの魔力。それを上書きする程の凄まじい魔力を放つフーシャ。彼女はポケットから槍の形をしたペンダントを取り出し、首にかけた。
「戦いはここからフミャ!マネージャーの本気をお見せするフミャァァァ!」
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