再会、そして吹き荒れる風!
扉を開けると、目の前に広がるのは大広間。そこには大量のテーブル、置かれた食べ物、そして大勢の冒険者達が集まっていた。
「な、何でしょう。これは一体?」
「フフッ、私が用意したんですよ!」
「この声は、モルモーさん!?」
スノウが声のした方向に顔を向けると、モルモーが立っていた。いつものメイド服では無く、パーティーの仮装に身を包んでいる。よく見ると、周りの冒険者達もそれぞれ仮装をしているのが目に入った。
「聞いたぜ!お前達がケモリアの件を解決したんだって!?大した奴じゃないか!」
「お見事ですー。ランクは低いですが、侮れませんねー。」
「ライバルが増えるのは良いことだな!もっと精進せねば!」
「えっ……えっ?」
「な、何だこりゃ?」
次から次に冒険者達に話しかけられるスノウ達。戸惑っていると、またモルモーが側にやって来た。
「今回の事、皆喜んでるんですよ!スノウさん達が無事に帰って来て、ケモリアの街との友好関係の発展にも繋がりました。何より協会の層の厚さを、他のギルドにも伝えられますし!」
「そ、そうなんですか?」
「はい!なので今日は皆でお祭り騒ぎ!楽しんで下さいね!」
そう言ってモルモーは、別の冒険者の所へと駆け足で向かって行った。
「お、おう。どうする?ケモリアでもやったばかりだぜ……?」
「僕はどんどん食べるよ!いただきまーす!」
「ちょっ、待てよナッツ!食い過ぎだぞ!」
ナッツは大きなサラダの載った皿目掛けて走り出し、それを追ってセインも行ってしまった。
「オルガさん、どうします?」
「久しぶりの二人行動だな。一緒に食べるか?」
「ですね!あっちで食べましょう!」
スノウが指差したのは果物のケーキ。オルガはケーキを切り分け、彼女に手渡す。
「「では、頂きま」」
「待ちなさい!」
「「えっ?」」
「私達も混ぜてもらおうかしら?」
「この声……!お前は!」
聞こえてきたのは、懐かしい声。二人が後ろを振り向くと、そこには友人の顔があった。
「お二人とも……お久しぶりです……!」
「フォッフォッフォッ。元気にしてたかの?」
「元気だからここに居るんでしょうが!ほら、行くわよ!」
「皆さん!お久しぶりです!」
「お前達も元気そうだな!」
そこに居たのは、協会のダンジョン研修で一緒に冒険した仲間。リゼ、ジン、そしてレイである。三人はそれぞれケーキを切り分け、二人の元に集まった。
「あの……。Dランク昇格、おめでとうございます……!」
「ありがとうございます!もうすぐ一人前です!」
「リゼとジンはどうだ?前はまだ、昇格試験は受けないって言ってただろ?」
「気になるかの?ワシ達はのう……。こうじゃ!」
そしてリゼとジンは、スノウ達と同じ様に、Dランクになった冒険者証を見せつけた。
「お二人も!おめでとうございます!」
「二人も昇格か!俺達ももっと頑張らないとな!」
「ちょっとアンタ達!私の話題が出てないけど!?」
四人で盛り上がる中、レイが口を挟む。
「勿論忘れるわけ無いだろう?レイはどうだ?」
「フン!私はアンタ達より一歩先を行くのよ!これを見なさい!」
そして彼女が出した冒険者証は……Cランクの文字が刻まれていた。
「Cランク。一人前の冒険者よ!同期の仲間達よりも早く昇格したわ!どう?凄いでしょ!」
「おめでとうございます!流石レイさん!」
「ええ!やっぱりスノウは分かってるわね!もっと褒めてもいいのよ?」
レイはスノウの前で自慢気に話している。それを見て、他の三人は微笑んでいた。
「良いものだな、こうやって話すのも。」
「そうじゃのう。どうじゃオルガ君?良ければ一緒に飲まないかの?」
「悪い。俺は酒は苦手でな。」
「それでは、こちらはどうですか……?」
リゼが持って来たのは五人分の果物ジュース。ちょうど話し終わったレイ達もこの場に戻ってきた、いいタイミングである。
「それなら頂こう。一つくれないか?」
「は、はい……!」
「ワシもワシも!」
「ハァ!?ちょっと、私が先よ!」
「私は最後でも構いませんよ。」
そしてリゼがジュースを配り終え、五人で一斉にグラスをぶつけるのだった。
「「「「「かんぱーい!」」」」」
「あっ、このケーキおいしい!凄くおいしいです!」
「そうフミャか!嬉しいフミャ!」
「……フーシャさん!?」
スノウが仲間達と話していると、マネージャーのフーシャもこの場に入って来た。口にはたくさんのパンを頬張り、ドリンク片手にやって来たのだった。
「私の自信作フミャ!皆無事に帰って来たから、お祝いでフンパツしたフミャ!」
「ありがとうございます!……ん?でもこのケーキ……。」
「どうしたフミャ?苦手な物入ってたフミャか?」
「いえ……何かこのケーキ、以前食べた事があるような……。」
「フミャ?」
……そしてスノウが首を傾け何かを思い出そうとした時、急に身体中がビクッと震え出した。
「な、何です今の気配!?」
周りを見渡すと、他の冒険者達も一斉に震えていた。スノウはオルガの側に近寄るが、彼もまた震えている。
「お、オルガさん、今のは……。」
「お、俺にも分からない……。側に居てくれ。凄く不安だ……。」
「は、はい!」
スノウはオルガと手を繋ぎ、周りの様子を伺っている。同じ様にリゼ、ジン、レイも手を合わせて、周りを探っていた。
「あ……ああ……!」
「ど、どうしたんですかフーシャさん?」
「来るフミャ……。[彼女]が来るフミャァァァ!?」
そう言ってフーシャは大広間の端にあるトイレに駆け込む。同じタイミングで他の冒険者達も一斉にトイレに駆け込むが、フーシャが先に辿り着き、鍵をかけてしまった。
「あ!おいマネージャー!?開けろよ!皆入れないだろうが!」
「開かないフミャ!」
「ちょっと!開けてよ!このままじゃ[彼女]が来ちゃうじゃない!」
「開けないフミャ!」
「クソっ!力ずくで開けるぞ!……っておい!バリア貼ってんじゃねえか!そこまでするか普通!?」
「知らないフミャ!」
「それでもマネージャーか!?」
「な、一体何が……!」
「スノウさん!大丈夫ですか!?」
「セイン!ビックリしたよー!?何があったの!?」
「俺が知る訳無いだろ!?とにかく警戒しろ!」
モルモー、ナッツ、セインもスノウ達に合流し、周りを見渡している。やがて皆が感じた気配がどんどん強くなり、この大広間の前までやって来た。
「ど、どうしよう……。体が、動かない……!」
「スノウさん……!私が守ります!」
モルモーが震えながらスノウの前に出る。するとその瞬間、扉が吹き飛び、一人の人物が姿を現した。
それは黒い服に身を包んだ、金髪の少女。自身と同じ長さの杖を持ち、堂々とした佇まいで入り口に陣取っている。そして彼女はそっと口を開けた。
「こんな楽しそうな事やってるなら、教えてくれれば良いのに。……いい機会だから、顔を出しに来たわよ!皆!しっかりやってるかしら?」




