決着!戦車(チャリオット)!
「落ち着いて、慎重に。うん、私なら出来る!絶対に!」
戦車が激しく動き回る中、スノウは離れた場所からじっとチャンスを窺っていた。
「あの騎士は二人に夢中になっていて、私の事は頭に無いはず。攻めるチャンスを見極めないと!」
◇◇◇
「セイン、セイン!?大丈夫!?」
「何とかな。でも身体が動かない。こんなに痛い一撃とはね……。」
「待ってて!今安全な所へ避難するから!」
モルモーはセインを背負って森へと逃げ込もうとするが、それを遮るように戦車が立ち塞がった。
「よーし!後はお前だけだ!よくも戦車の砲身を壊してくれたな!」
「……早く逃げないと!彼には絶対に手を出させないわ!」
「その強がり、いつまでも続くかな?オラァ!」
「悪い。俺のせいで……。」
「気にしないで。でも今は避けるので精一杯ね。早く安全な所へ!」
モルモーに突っ込む戦車。彼女は間一髪で回避するが、背負ったセインは苦しそうにしていた。
「急がないと!早く森の中へ!」
「ハハハ!ホラホラ逃げろ!早くしないと潰れちまうぞ?」
ジェイは二人を楽しそうに追い回す。モルモーも避けながら森に向かっていくが、確実に体力は奪われている。
「そろそろ飽きたな。ここらで決着をつけてやるよ!」
戦車のスピードを上げて、再びモルモーに突っ込むジェイ。遂にモルモーも避け切れず、足が戦車にぶつかってしまう。
「くっ……。これで逃げ道無しね。でもこの子は守ってみせる!」
倒れた二人に向けて、戦車は再び突撃する態勢を取る。モルモーはセインの前に立ち塞がり、彼をガードしている。
「さあ、これで終わりだ!」
「今だァァァ!」
「な、何!?」
ジェイがレバーを動かす直前、空中からスノウが現れる。モルモーが森に向かっていた為、木から飛び移れる距離まで戦車は近づいていたのだ。
スノウは戦車の頭上に着地。丸い蓋の隙間を見つけ、すぐに雷鳴剣を突き立てる。
「この隙間なら行ける!プラズマカッター!」
「ギャァァァァァァ!?」
スノウは魔力を流すと、剣の先から電撃の刃が放たれる。装甲は壊せないが、戦車の隙間から中に伝わり、ジェイを攻撃することに成功する。
「クソっ、痺れる!?やめろ!やめろォォォ!」
「やめるもんか!ここで決めてやる!」
身体中が痺れたジェイは、戦車をデタラメに動かしスノウを振り落とそうとするが、彼女は頭上にしがみつき離さない。
「し、死ぬ!もう駄目だ!外に出るしかねぇ!」
「出て来た!ここで引っ張り出す!うりゃぁぁぁ!」
電撃を流し続け、遂に我慢出来なくなったジェイが外に出る。だが蓋を開けた瞬間、スノウが彼を掴み、外に放り出した。
「ま、まだだ!捕まるわけにはいかない!早く逃げなければ……。」
「させないわよ!私がここで止める!」
「ヒッ……貴様、何故!?動けないはずじゃ……。」
「応急処置は済ませたわ!今度こそ終わりよ!」
尚も抵抗するジェイに、いつの間にか近づいたモルモーが扇を突きつける。攻撃された彼女の足は、動きに支障が出ない程に回復していた。
「ま、参った……。降参だ!命だけは助けてくれ!」
「最初からそのつもりよ。その代わり、そっちの事を色々聞かせて貰うから、覚悟しておきなさい。」
モルモーはジェイを縛り上げた後、倒れているセインの体にそっと手を触れ、魔力を送り込んだ。
「勝ったわよセイン!貴方の大手柄よ!」
「そうか……皆無事で良かった!……痛っ。」
「今手当てするからじっとしてて!少し時間がかかるから。」
そしてモルモーは、戦車から降りてきたスノウの方にも目をやる。
「やるじゃない、電撃を使うなんて!貴方のお陰でアイツを倒す事が出来たわ!」
「あ、ありがとうございます。」
スノウはモルモーに軽くお辞儀をし、セインの怪我が治るのを待っていた。
◇◇◇
「あ、ちょっと待ってくれ!」
やがてセインの応急処置も終わり、三人はジェイを連れてケモリアの街へ向かう。だがその前に、セインにはやりたい事があるようだった。
「急ぎでお願いね。街へ戻らないといけないんだから。」
「ああ、アレを何とかしたくてね。」
セインはそう言って、ボロボロになった戦車を指差す。砲身は曲がり、あちこちから煙も出ている。そんな戦車に彼が近づくと、魔力切れの為かそれは小さくなり、元のアクセサリーへと戻っていった。
「この場に置いておくのもちょっとな……。とりあえず持って帰って、後で直せるか試してみるよ。」
「結構ボロボロだけど、上手くいくといいわね。」
「ああ!それじゃ行こうか!」
何とか戦車に勝利した三人。モルモーとスノウはジェイを引きずりながら、セインは戦車のアクセサリーを持ち、ケモリアの街へ帰還するのだった。




